GINZA CUVO

日本で美容外科が普及し始めてからすでに長い年月が経過し、この医療もそれなりの歴史と実績が積み重ねられてきたが、僕がこの医療の門を叩いた2,000年初頭、従来まで存在した老舗的美容外科で技術を習得した外科医たちが独立し、当時美容外科医療施設が皆無だった地方都市にチェーン展開していた頃でもあった。

 

ただチェーン店型美容外科の展開は、ビジネス(利潤)追求がその主目的と思われ、この時期、美容外科医療がアカデミックな意味で順調に成長した時期とは言えないが、こういったチェーン店が美容外科の存在価値を世に知らしめたことでは十分に貢献した時期であっただろう。

 

さて、僕が美容医療に入門する決意を固めた際、短期間に多くの症例経験を積める当時勢いのあったチェーン店型美容外科に入職するか、それとも今から80年以上前から、東京新橋で日本初の美容外科老舗、十仁病院を選択するかで僕は頭を悩めた。

 

というのもチェーン店型美容外科に入職すれば、直ぐに外科手術を習得出来たであろうが、美容外科医療において治療技術の習得は診療の一部に過ぎず、この医療で真の実力を得るにはこの医療ならではの診察方法、治療適応の見極め、患者さんのみならず病院スタッフとの円滑なコミュニケーション技術等を習得せねばならない。

 

そういった治療技術以外のことは歴史と実績のある施設のほうが、より充実して学ぶことが出来るはずで、十仁病院が良いのだが、当時の十仁病院は、上述の如くそこから独立した多くの医師たちがそれぞれの独自のクリニックを立ち上げ、患者さん達が分散していった時期でもあり、

かつての老舗の勢いを失っていたため、正直症例数はさほど多くなく僕は十仁病院で十分に美容医療を学べるのか正直不安ではあった。

 

だが敢えて真っ先に美容外科手術を習得したいというはやる気持ちを抑え込んで、敢えて症例数が少なくとも美容外科医療を基礎から学ぼうと十仁病院を入職先に選んだが、それは”オセロゲーム”例に挙げて説明すると、オセロゲームの目的はいかに多く自分の石を獲得するかで、このゲームで出来るだけ多く自分の石を得るには、ゲーム盤の四つ角をいかに確実に取得出来るかが鍵となる。

 

というのもゲーム序盤、どんなに沢山自分の石を獲得していたとしても、ゲーム終盤に相手に四つ角を押さえられると、それまで獲得していた自分の石はすべて相手に捕られてしまうのと同様、自分の石を治療技術だとすれば、どんなにゲーム序盤(研修初期)に多くの石(手術技量)を獲得しても、ゲーム後半(研修後期)に四つ角(手術技量のみならず、コミュニケーション能力、この医療への情熱、そして愛情・思いやり)が獲得出来ていなければ、ゲームに勝利(この医療で成功)出来ないからだ。

 

これは古くからの諺で”急がば回れ”とあるように、物事の習得には決して性急になるべきではなく、じっくり腰を据え、最初はどんなに時間がかかってもしっかりと基礎を積んだほうが、最終的には揺るぎない実力が得られる事を示す良い例といえる。

 

そして十仁病院を研修先として選択したが故に、案の定、当時の十仁病院・梅澤院長は僕にいきなり美容外科手術を教えるのではなく、まずは患者さんとのコミュニケーション、特に美容外科医療を求める裕福な方々への接遇から教え込まれた。

 

驚くべきことにその研修内容は、梅澤院長のお母様が大森のご自宅で病床に伏していた際、当時慶応大学医学部付属病院内科医長が定期往診にいらしていたが、なんと僕は梅澤院長とともに院長邸を十仁病院診療時間中に訪れ、その医長の往診風景の見学からスタートした。

昨日は平成の最後の日、そして今日が令和初日となったが、令和が激動の時代になる気がしてならない。と言うのも、以前は情報入手まで時間がかかったり、情報自体を得るのが困難だったが、現代はネット進歩の恩恵により、ありとあらゆる情報が瞬時に得られるようになったからだ。そして以前はテレビ中心のマスコミ情報が、それを受け取る我々大衆に一方向性に発信されており、その報道内容は広告制作費を支払うスポンサーの影響を受けるため、必ずしも公正とは言えなかったはずだ。

 

ところが今や、これまで情報受容者に過ぎなかった我々一般大衆が、YouTubeなどの動画ソフト・SNS等を介して情報発信を開始し、スポンサーからの悪影響を受けづらい、偏りの少ない正しい情報が得られるようになった。そして、これまでTVなどから当然と信じきっていた常識が覆される時がやって来るかもしれず、そういった意味で令和は大きな転換期になるのではと僕は予想している。

 

この新たな情報社会では正しいものが残り、そうでないものは遅かれ早かれ消滅する取捨選択の時代が到来したとも言え、例えば僕が通勤途中に時折立ち寄る六本木ヒルズ商用施設では、店舗の入れ替わりがとても早い。それはこの商用施設内に一時期活況を呈していた店舗があっても、人々のニーズも変化とともに需要や人気を失えば容赦なく、しかもあっという間に消え去さってゆく運命にあるのだ。

 

こういった現象は店舗のみならず医療分野でも同様で、かつて情報量が少なかった時代、治療を受ける患者側は医療側が提供する知識・技術を鵜呑みにするしかなく、すなわち医療側が主導権を握っていた。ところが近年、患者側がSNSなどに受けた医療の評価・口コミ等を積極的に投稿するので、患者側は事前に十分な情報が得られるようになった。その結果、以前医療側に存在した主導権が患者側に移りつつあり、数多くのある医療施設・医師たちはかつてとは逆に、患者側から選ばれる立場に様変わりしたのである。

 

従って患者側に選択されるには、彼女・彼らにアピールする何か特別な要素を有さねばならないが、それが真に価値ある何かでなければ、この情報社会では患者側は簡単に見透かされ、あっという間に化けの皮が剥がされてしまうだろう。

 

さてこの話を僕が従事する美容医療に絞ると、時代が進むにつれ人々はより侵襲が低く、ダウンタイム(回復時間)が短い治療を求めるようになり、医療側はそのニーズに答えるべく新たな技術・手法の開発に追われている。ここ数年、美容外科で特に人気を集めているのがメスを用いずに行う顔のリフトアップで、その治療は超音波器機による顔面リフトアップや、顔に糸を埋め込むスレッドリフトと呼ばれる方法だ。

 

また、美容外科以外の“若返えり”では幹細胞を用いた治療法が人気を博しているらしく、この治療を求めて日本ばかりでなく、中国など諸外国からも顧客が殺到しているらしい。だがこういった新治療の効果は今後5~10年の長期予後を見極める必要があり、現段階でその治療効果について真偽のほどを語るには時期尚早である。

 

というのも我々には治療効果の真偽の定かに関わらず、期待値があまりにも高いが故に斬新なものに飛びつく傾向があるからで、治療効果が得られなかっただけならまだしも、後々後遺症が出現する危険性も捨て切れないので、こういった新たらしい治療法にはより慎重な姿勢で臨まねばならない。そしてこれまでも多くの新しい治療が世に現れ、一時的に人気博士たかのように見えても、気づいてみるといつの間にかその姿形を消す例が後を絶たない。。

 

一方、当クリニックで行う治療は、一貫して変わらないシンプル外科コンセプトを15年前の開業当初から継続しており、今後ももこのスタイルを継続するつもりである。何故ならこのシンプルコンセプトに基づいた治療法すでに完成形であり、それを求めて常に一定のニーズが在り続けているからだ。

 

最後にまとめとなるが令和は変遷の時代、もしくはより一層取捨選択が成される厳しい競争時代の幕開ともいえるが、それは良いものはより高く評価される、“ホンモノ”こそが主役となり得る新たなチャンスの到来でもあるだろう。

 

水彩画のようにデリケートな美容医療

美容医療の一般的イメージには”拝金(儲け)主義”がいつまでたっても蔓延っていて、僕がこの医療に従事する使命として、この美容医療のネガティブイメージを払拭することであると、本ブログでこれまで何度も述べてきた。

 

美容医療はご存じの通り自費診療下にて、治療方針・料金も全て各院が独自判断行っていて、国民皆保険下で行う一般医療よりも自由度が高いのは恵まれているともいえるが、その自由度を利用してお金儲けに邁進する施設が後を絶たないのは、この医療の最大の問題でもある。

 

本来医療は、患者さんの健康や幸せを最優先にする、献身・ボランティア的要素が高い職種であるにもかかわらず、美容医療が美に計り知れない価値を感じ、それを得ようと時として衝動的になりかねない女性につけ込んで、この医療を金儲けの手段とするレベルの低い連中が少なからずこの医療に紛れ込んでいることがこの問題の原因である。

 

こういった望ましくない輩たちが、美容医療を金儲けの隠れ蓑にして暗躍する限り、この医療の社会的評価はいっこうに上がらず、それはまるでパステルカラーで書かれた水彩画にたった一滴の黒インクが落ちただけで、瞬時に灰色に豹変してしまうのと同様なのだ。。僕が美容医療をパステルカラーに例えたのは、美容医療自体、他医療に負けずとも劣らない大変価値の高い医療であることをこの医療に20年近く従事した今、改めて実感しているからである。

 

決して侮れない外見的コンプレックス

そもそも美容医療は外見的コンプレックス、さらには加齢に伴うしみ・しわ・たるみなどの老化現象の改善・解消目的に行うが、こういった外見的コンプレックスを背負って生きることは、美意識の高いデリケートな人々とっては、まるで呪縛を背負わされているような憂鬱な状況であろう。

 

こういった外見的コンプレックスによる呪縛は、それに悩む人々の自信を奪い、時として物事に消極的・否定的になったり、もしくはこの状態が長年継続すると、引きこもりや鬱状態などのメンタルヘルスに悪影響を与え、最悪の場合、重篤疾患を引き起こしかねず、我々が想像する以上に心身に多大な悪影響を及ぼす恐れがある。

 

僕がこの医療を始めた当初、外見的コンプレックスがそれほど人々に悪影響を与えるとは想像すらしなかったが、長年この医療に従事している間、様々な患者さんたちと遭遇しているうちに、それが現実問題であることを確信した。

 

外見的コンプレックスに苛まれた典型的症例

例えば母親に連れられた僕のクリニックにやってきて女子高生は、毎朝メイクアップに何時間も費やすので、母親がその様子をよく観察すると、上瞼に針金のようなものを当てて二重の位置を決め、そこに”アイプチ”と呼ばれる人工糊をくっつけて、にわか仕立ての二重を作るのに時間と労力を費やしていたとのこと。

 

この行為は女子高生の毎朝の貴重な数時間を奪うのみならず、彼女の上瞼は糊によるか慢性的炎症により赤く痛々しくただれており、こういった状態を長く放置すると慢性的アレルギー皮膚炎により、上瞼皮膚の著しい老化(たるみ)の原因にもなりかねない危険な行為である。

 

そこで僕は、彼女と彼女の母親と相談し、出来るだけ控えめで自然な二重を外科的に形成することを勧めたところ、治療を受けることを承諾し、治療を行ったところ、彼女は目元のコンプレックスから解放され、毎朝、にわか二重を作るために時間を浪費することもなくなったと母親から感謝の報告があった。

 

またあるとき、婚約を済ませたカップルがクリニックを訪れ、女性のほうから婚約者男性が眼鏡を片時もはずすことがなく、最近は自宅に引きこもりがちで仕事にも行かないので、その理由を彼に尋ねたところ、”目元のクマがコンプレックスで眼鏡も外したくないし、仕事にも行きたくない”と答えたとのこと。

 

それを聞いた彼女は内心、”仕事に行きたくないのを目元のクマを口実にしているのでは?”と疑い、彼に「それでは目元のクマを治療したら?」と勧めると、彼は真剣に「是非治療したい」と申し出たため、二人で当院にやって来たのだという。

 

彼の顔をよく観察すると、まるで俳優さんのように整ったハンサムな顔立ちに、これこそ”玉に瑕”という諺に相応しい目元に著しいクマを認めたと同時に、彼はとてもハンサムな顔立ちをしているだけに、目元のクマは、彼にとって許し難いコンプレックスとして立ちはだかっているのだろうと容易に想像出来た。

 

またこの時期二人は結婚を控え、よりナーバスになった彼はその悩みが一段と強くなり、眼鏡が外せなくなったり、この悩みが解決不能と絶望的になって引きこもり状態となったのだろうが、機転の利く彼女のほうは、ネット検索で当クリニックを見つけ出し、すぐに彼を僕の元へ連れてきたのである。

 

僕が治療内容とその効果について治療症例を用いて具体的に示すと、彼は”是非治療を受けたい”と申し出、後日治療を行ったが、その甲斐あって彼の目元のクマはほぼ解消され、それ以来彼は眼鏡も外し、すすんで仕事に行くようになったと、彼女から喜びの報告を受けた。すなわち、彼の引きこもりは決してサボり癖などではなく、彼は本当に目元のクマがコンプレックスで、人前に出たくなかったのだろう。

 

 

この医療に従事する医師に伝えたいこと

僕は日々の診療で、こういった外見的コンプレックスに思い悩む症例に少なからず遭遇しているし、謙虚で大人しい日本人の患者さんたちがその悩みを言葉で表すことが少ないにしても、外科手術を決意しまでその悩みを解決しようとする姿を鑑みると、多かれ少なかれ上述例のようなそれなりの悩みを抱えているのではないか予想している。

 

こういった一見、客観的には些細に見える外見上コンプレックスも、それに悩む人々にとっては、人生に深刻なダメージを与える由々しき問題となるだけに、その問題を大幅に解消出来る美容医療は、辛い痛みや放置しておけば命を奪いかねない、病を解決する一般医療と同等の価値があることをおわかり頂けるかと思う。

 

だからこそ、美容医療がその価値にに見合うだけの社会的評価が得られるよう、この医療に携わる1人1人の医師が一般医療と同等の、本来あるべき患者優先の正しい医療のあり方を再確認し、決して儲け主義を優先することなく、まっとうな医療の実践に努めて頂きたい。

 

早いもので僕のクリニックは来年度開業以来15年目を迎えるが、以前は毎年その年の抱負につを語ったものだが、これくらい年時を重ねると新たな抱負は思いつかず、敢えて述べるとすれば、来年度も良好かつ安定した治療結果を維持することしかないと思っている。

 

そもそも医療の社会的意義は、社会へ安定した医療を提供することであり、医療は一般企業のように営利目的優先に決して行ってはならない。そういった意味で最近僕のクリニックは、この医療のあるべき方向性を遵守出来ており、来年もこの医療の正しい方向性を維持するつもりである。

さて僕は今年初頭、NHKラジオの経済展望特集に耳を傾けてみたが、その番組では今年の世界経済の展望を一流の経済学者が語っていた。その話によると、2017年後半から世界経済はとても安定しており、その結果として株価は右肩上がりとなったが、このトレンドは2018年も継続するだろうとのことだった。

 

この話を頭から信じた僕は、2018年は経済的に恵まれる明るい年になることを期待したが、蓋を開けてみると2018年は経済発展どころか経済縮小の1年に転じ、2018年度の最終株価は2万円台をなんとか維持したものの、7年ぶりに前年より株価が下回る予想外の経済低迷の年となった。

 

その原因は、なんと言っても米国・トランプ大統領の強権政治により中国と貿易戦争が勃発し、それぞれの国が関税引き上げを行った結果、二大経済大国間のこの確執が世界経済に伝播して、それを按じた投資家たちが株投資から資金を引き上げ始めたからである。

 

このような不測の事態が起こることを、今年初頭には誰も予想しておらず、昨年に続いて明るい経済循環に期待して株投資に昂じた多くの人々が、少なからぬ経済的損失を被ったはずである。にも関わらず、僕のクリニックは有り難いことに、今年も例年以上に多くのお客様にお越し頂き、充実した1年となったことは、何よりの喜びである。

 

さて来年はどのような年になるのか、たとえ予想しても今年のように予想とは正反対に向かうこともあるので、将来予想は殆ど意味を成さない波瀾万丈な時代へ進んでいるのではなかろうか。これまで人類は時代を重ねるにつれ、より良い方向へ向かうと楽観的に考えられていたが、ここ数年はむしろ、平和が脅かされる不穏な時代に舞い戻りつつあると世界中で警戒されているらしい。

 

それは米国・トランプ大統領が掲げる自国第一主義に煽動され、まるで第二次世界大戦前の如く、ヨーロッパ先進国までナショナリズムが勃発し始めているからであろう。その悪影響は我が国においても決して他人ごとではなく、韓国との関係はこのところ急速に悪化しているし、米国寄りの日本は、米国が中国と対立すればするほど、日本と中国の関係悪化も懸念される。

 

このような不測・不穏な時代に、我々はどのような心構えで新年を迎えるべきかについてだが、どんなに不測の時代がやってこようと決して悲観的になるべきでなく、あくまで冷静に自分の成すべきことを、着実に行う決意が何よりも肝心だと僕は考えている。

 

例えば今年の株価低迷も、米国発の不安を招く政治が投資家の気持ちにブレーキをかけたためであり、決して実体経済自体が悪化した訳ではないからだ。すなわち、我々1人1人が実のある仕事を堅実に行い、今回米国主導で巻き起こっている、あくまで一時的な不安定要素に振り回されなければ、世界は一歩一歩より発展する方向に向かうはずである。

 

最後になるが、僕のクリニックは冒頭でも述べたように、来年度も顔面老化予防・改善のための良好かつ堅実な美容外科医療を展開するつもりである。もしそれが来年度も確実に遂行出来たとすれば、近い将来、僕の究極目標である美容外科医療の社会的評価の改善や、認知度アップに一歩前進すると僕は強く信じている。

 

今回僕が述べることの結論を真っ先に申し上げるとすれば、美容外科は他医療に劣らない大変価値ある医療にも関わらず、残念ながらその社会的イメージがお世辞にも高いとは言えないことである。美容外科医療の社会的イメージが低い原因は、なんと言ってもこの医療を医療以外の一般ビジネスに見られる拝金主義が蔓延し、患者さんをお金儲けの手段にしている医療施設が後を絶たないからだと思われる。

 

その証拠に、例えば集客ツールとして最も効率の良いホームページでは、いわゆる”ビフォー・アフター”と呼ばれる症例写真で、治療結果を良く見せるような画像処理・細工をしてまで集客を図り、売り上げを伸ばそうとする施設まで存在するとのこと。。

 

そもそも医学は患者さんの幸福を目指して行われるべきものであり、すなわち常に患者さんを最優先にすべきであって、この医療の大原則はたとえ美容外科医療であっても遵守すべきである。にも関わらず、患者さんを金儲けの手段とするのはもっての他であり、もしそういった行為に加担する医師がいたとすれば、それは医師の片隅にもおけないと言わざるを得ない。

 

すなわち、この分野の医療関係者の中にそういった拝金主義が横行してることや、医療とは似つかわしくない拝金主義のギラギラとした雰囲気・イメージが美容外科医療に流れていることが、その社会的評価を著しく下げる最大要因だと僕は確信している。

 

冒頭で申し上げたように、外見上コンプレックスを抱えた人たちを、卓越した技術でそこから解放する美容外科は、他医療に決して引けを取らない大変価値の高いものだけに、拝金主義を優先させる連中が、まるで淡い原色の絵に黒インクを垂らすかの如く、この素晴らしい医療をダーク(灰色)に豹変させているのは残念でならない。。

 

実際我が国において、美容外科は僕を含めてそこに従事している人間にとって決して自慢出来る職種とは言えず、正直に申し上げると一般医療からの評価も極めて低く、もっと言えば、一般医療界の医師達からは美容外科は同業者とは見なされず、ある意味”差別”に近い低評価を受けているといっても過言ではない。

 

いつも不思議でならないのは、我々はいかなる業種に従事していても、自分が生涯情熱をかけて行う仕事にはプライドが存在するはずだし、そのプライドは自分の仕事について、自信を持って他人に伝えたい思いを喚起させるはずである。

 

ところが美容外科に携わる医師はそういったプライドが欠失しているのか、それともそのプライドを上回る金銭欲があるのか、もしくは自分たちが医師として極めて低い社会的評価を受けていることを認知していないかのいずれかと言わざるを得ない。

 

僕は以前、北海道大学院で博士号取得した後、整形外科研修を専攻したが、そこまでは北大の先輩医師達も認めてくれたが、その後美容外科医療に進んだ時点で、この先輩達からは無視されるようになり、今は北大の出身研究室から破門されたも同然だと感じている。

 

では僕が美容外科を専攻した途端、何故先輩達から冷遇されるようになったかと言うと、それは僕の人間性が変わったからではなく、社会的に低評価を受けている、もしくは医療界ではさらに低評価の美容外科を僕が専攻したからに他ならない。こういった美容外科の社会的評価は、現在多少改善されつつあるものの、依然この医療への根強い差別が蔓延していることにあまり変わりない。

 

では僕がこの医療に飛び込んでからすでに15年以上の歳月が経過したが、ではこの医療を選択したことに後悔しているかと言えば決してそうではない。何故なら周囲の社会的評価・医師からの評価がどんなに低くても、この医療の価値を認めて治療を受けたお客様がすでに1万人を越えていること、そして現在も継続的に来院されていることはこの医療が他医療と変わらず、一定の需要(ニーズ)があり、この仕事が必要とされている紛れもない証拠だからである。

 

僕自身今後も他医療と同じ目線で、すなわち患者さん最優先の姿勢を維持しつつ、良好な結果が得られるよう努力することを肝に銘じているし、特に今後この医療を目指す若い医師たちには、今一度上述の”医療の大原則”をきちんと理解した上で、謙虚な気持ちで従事して頂きたいと強く願っている。

 

繰り返しになるが、この医療の優れた価値を社会的に認知させるには、この医療に携わる関係者1人1人が患者さんを最優先とし、決して儲け主義に走らないよう肝に銘じる必要がある。そしていつか美容外科医療に従事していることを、我々その関係者たちが堂々と誇れる日が訪れることを僕は願って止まない。

ハワイ・オアフ島の形成外科クリニック

国・地域により治療のニーズは異なるので、普段自分のクリニックで行っていない治療に触れるため、僕は定期的に様々な場所に出かけるようにしていて、今年2月には前回ブログで記載した如く韓国・ソウルに鼻形成手術見学に出かけた。

 

鼻以外の顔面形成外科治療は当クリニックで頻繁に行っているものの、体幹部位治療は少ないので今回は米国・ハワイの知人形成外科医のクリニックを訪れた。というのも美容外科治療を見学するにあたって、いきなり見ず知らずのクリニックを訪れる訳にはゆかず、やはり知人クリニックを訪れるのが見学承諾を得やすいからだ。

 

ハワイ・オアフ島市街地で長年開業するベテラン形成外科医・パスクワレ医師のクリニックでは乳房形成、腹部下半身脂肪吸引、そして下腹腹部が垂れ下がり、脂肪吸引のみでは解決出来ない症状を解決する腹部除脂術を専門に行っており、こういった日本では稀な症例を見学しに行った。

 

今回3日間のオアフ島滞在で見学したのは腹部除脂術、男性に生じた女性化乳房修正術、そして鼻側に生じた皮膚がん(基底細胞癌)手術だったが、どれも日本で遭遇する機会が希な症例だったため、大変興味深く見学させてもらった。

 

腹部除脂術(Tummy Tuck)

最初の症例となった腹部除脂術は、下写真の如く余った皮膚と皮下脂肪が下腹部に覆い被さるほど弛んでいる場合で、皮下脂肪を脂肪吸引で吸引するだけでは治療効果が乏しいため、皮膚・皮下組織を一塊にして切除する方法で、欧米人の肥満症例ではこの治療が必要になる場合が少なくない。一方日本人の場合はたとえ肥満に陥っても皮膚・皮下組織に弾力性がありため、欧米人に認められるような皮膚が下腹部で覆い被さることは少なく、脂肪吸引のみで事足りる場合が殆どである。

 

この手術のポイントは弛んだ皮膚・皮下組織を腹部筋肉の上で腹部上部レベルまで剥離し、余った皮膚を切除するが、その際当然お臍の位置が上方移動するので、新たなお臍が収まる箇所を上腹部皮膚に形成するところである。決して難しい手術ではないが、剥離範囲が広範囲に及ぶため全身麻酔で行う必要があるのと、術後も感染症等を起こさないよう、適切なケアをすることも肝心である。

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男性の女性化乳房修正術

次に行ったのが男性の女性化乳房修正術だが、下写真症例は30歳の米国人男性で、ご覧の通り体幹部は良く鍛えられているものの、乳房がやや女性のように膨らんでいる。その原因はこの男性がボディビルディング・トレーニングを行うにあたり、ステロイドホルモン用を多用し、そのホルモンの一部が女性ホルモンへと変化したため、女性化乳房が生じたというのがパスクワレ医師の見解だった。

 

治療は腋窩部から脂肪吸引を行った後乳輪部切開を行い、そこから脂肪吸引で除去しきれなかった余剰軟部組織を一塊にして切除したが、この男性の女性下乳房症例は意外にも多く、米国男性たちはこの症状を忌み嫌うため、男性の体幹部治療として症例数が最近特に増えているらしい。

 

日本にも肥満男性などに女性化乳房が発症しているケースは少なからずあるが、日本人男性の場合、体幹部への美意識が低かったり、そもそも自分の乳房が女性化していことに気づいていない、もしくは対処法があるとは知らず、そのまま放置している場合が少なくないようである。

 

だが女性化乳房は1度気にすると、何とかしたいと思うのが人情であったり、特に体を鍛えて男性らしくありたいと願う男性には耐えがたい症状なので、外科的手段を用いてでも解決したいと考える男性たちが近い将来日本でも増える可能性が高い。

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左鼻横に生じた皮膚がん(基底細胞癌)

最後に観察したのが49歳白人男性の左鼻横に生じた皮膚がん(基底細胞癌)だったが、その診察に僕も参加して驚いたのが皮膚がん所見がなかったこと、すなわち皮膚がんを示す皮膚病変が全く存在しなかったことだった。

 

この男性の鼻横の皮膚の色調や性状に全く変化なく、どのようにその癌を発見したのかが今ひとつ釈然としなかったが、最終診断はバイオプシーと呼ばれる同部位皮膚細胞採取とその細胞の顕微鏡診断による悪性度の有無で、その結果この男性のケースは皮膚がんと証明されたのだ。

 

手術は鼻翼横にある皮膚を直径5ミリ程度、すなわち直径30ミリ程度の皮膚がんより直径20ミリほど大幅な余裕をもって円形切除した。このような拡張皮膚切除を行うのは、皮膚がんが周囲組織への浸潤・転移するのを確実に回避するためであった。

 

そして左鼻翼横で大きく欠損した皮膚領域は、下図の私がこの手術見学中にメモしたスケッチの如く、ほうれい線下にV字切開を加え、腫瘍切除で欠損した部位にその皮弁を移動させた後、Y字型に縫い合わせる形成外科の代表的処置を行った。

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このV-Y advancementは形成外科領域で、皮膚欠損部を被覆する有茎皮弁移植法としては最も有名な方法だが、悪性皮膚腫瘍の少ない日本では遭遇する機会が少なく、こういった症例を見学出来るのがわざわざ米国まで足を運んだ理由である。

 

本見学のまとめ

今回の米国手術見学では

1腹部除脂術

2男性に生じた女性化乳房改善術

3鼻翼横に生じた基底細胞癌根治術

の3件の治療に立ち会った。

 

日本での日常診療では同様の治療に対処することが多く、ともすると形成外科・開業医としての仕事がマンネリ化しやすいと言われるが、今回の見学で普段遭遇することのない症例を経験し、大変良い刺激となったが、この貴重な経験を今後の診療に役立ててゆこうと思う。

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極寒のソウル

ソウルは空路3時間弱と日本から一番近い隣国なので、僕は一泊二日の旅でこの地を訪れた。2月中旬のこの時期、翌週からは韓国・ピョンチャンで冬期オリンピックが初開催されるのせいか、ソウルはいつも以上の賑わいを見せていた。

 

だが同時にこの時期朝鮮半島は極寒が訪れる時期でもあり、気温-10℃の極寒風が大陸から東に向かって吹き付け、ほんの10分程度外出するだけでも、生命の危険を感じるほどの寒さに、大陸で暮らす人々の生活厳しさを思った。

 

午前9時に僕は患者さんとシミアン・クリニックにろびーで待ち合わせたが、まだ早朝だったせいか付けたて暖房が効いておらず、クリニック内も冷え切っていたものの、次第にクリニック・スタッフや患者が集まり始め、いよいよ診療・手術が始まる雰囲気が漂い始めた。

 

このクリニックは手術室が3室並列で並んでおり、なんと僕の患者さんが手術室に呼ばれた頃にはすでに他2室で別手術が同時進行していた。院長のドン・ジョンハク医師はその患者の一人を執刀中で、僕は早速その手術を見学させてもらった。

 

鼻専門クリニックでの手術

韓国で一二を競う鼻形成を専門クリニックともなると手術症例がとても多く、手術効率を重視するようで、手術も医師がローテーション形式で行っている。具体的にいうと手術の初期段階、すなわち鼻を展開(開ける)までを担当する医師、次に鼻形成を実際に行う医師、そして閉創(開けた鼻を閉じる)医師の三人が一人の患者を担当している。

 

つまり、第1手術室で鼻を展開したA医師は次に第2手術室へ移動、次の患者さんの鼻をすぐに展開し始める。その頃第1手術室ではB医師が鼻形成を開始、そして第2手術室の鼻展開を終了したA医師は第3手術室でで次の鼻展開を行う。その頃第2手術室でB医師が鼻形成を行い、第1手術室で鼻形成を終えた患者さんは新米のC医師が閉創するといった具合である。

 

日本では一人の医師が鼻展開・形成・閉創までの全工程を行うのが一般的だが、ソウルのこの鼻専門クリニックの如く、三人の医師が同時に三人の患者さんをローテーション形式で手術を行うと、1人で全行程を行う形式より一日にこなせる手術件数が2~3倍増えるはずである。

 

経営面からするとローテーション形式にすることで、収益性が高くなるメリットがあるだろうが、一人一人の医師作業がまるでチャップリンの映画”モダンタイムス”で比喩された自動車生産ライン・オートメーション作業の一旦を担うような単純化されたものとなる。したがって、この効率重視の手術形式が全面的に賞賛される訳ではないが、その効率性を見れば大変優れたシステムと言わざるを得ない。

 

出来映えの良い手術結果

僕が同行した患者さんに行われた手術は、鼻形成手術の定石を踏まえた確実なもので、さすが毎日数多くの症例をこなしているだけあって、安定した良好な結果が得られるであろうことはその手技を見学しているだけで容易に判断出来た。

 

そしてこの鼻形成手術自体、さほど困難なものではなかったが、何事もそうだが毎日同様な治療を数多くこなしているほうが、そうではないよりも間違いなく良好な成績が得られることは言うまでもない。

 

それは執刀医のみならず、麻酔を含めた手術準備、手術助手などコメディカルの流れも、良好な手術結果を得るには極めて重要で、そういう流れが淀みのない綺麗な川の如く循環していれば、手術前からその成功は目に見ていると言っても過言ではないだろう。そのような円滑な流れがこのクリニックに存在しているのを僕は本手術見学を通してすぐに察知した。

 

僕が同行した患者さんの鼻形成は当然院長のドン・ジョンハク医師が担当し、手術中彼は僕に患者さんの鼻高・形への意見を求めたが、カウンセリング時からやや控え目な形にすると合意していたので、特に問題なく手術は一気に終了した。

 

患者さんとの僕のクリニックでの再会

ドン・ジョンハク医師は手術の終了間際、にこにこしながら僕に「久保先生はこのあとピョンチャンオリンピックを見に行くのですか?」と尋ねたので「いいえ、他の患者さんたちが待っているので明日日本に戻ります」と答えると「まあ、せっかくの機会なのに!」と驚きながら答えた。

 

手術後患者さんは休憩室に運び込まれ、そこまでで僕の任務も終了となり、僕は患者さんに手術はすべて滞りなく成功に終わったことを説明し、帰国のためソウル金浦空港へ向かった。

 

それから1ヶ月半近くが経過した3月初旬、この患者さんが僕のクリニックを訪れたが、案の定、鼻形は以前と比べて違和感のない自然で美しい形へと改善され、患者さんはその結果に大変満足していた。

 

これにて今回の鼻修正手術は一件落着したが、この症例を通して僕は美容外科医療を扱う医師として改めてさまざなことを学んだ。それは医師は僕もそうだが、良くも悪くも医師として患者さんから常に尊敬される立場にあるせいか大変プライドが高く、自分が限りなく有能だと勘違いしている場合が少なくない。

 

美容医療に携わる医師の戒め

今回最初にこの鼻形成を行った日本のとある医師は、決して多くの症例経験がないにも関わらず治療を強行したため、満足のいく結果に至らなかったのであろう。

 

我々医師はあくまで限られた能力を有した一介の人間であることを自覚し、どんな状況でも必ず良い方向に導ける治療のみをこの医師が引き受けていれば、今回のようなケースに陥ることはなかったはずである。

 

したがって医師たちは、自信のない症例や明らかに経験不足の症例の治療強行を思いとどまる勇気を持ち、そういった症例は今回の僕のようにその道の専門医にお伺いを立てるといった、慎重な姿勢が肝心である。

 

最後に医療は人々を幸福に導くために行っており、決して医師のプライドや儲けの犠牲として患者さんを不幸に導いてはいけないことを我々医師は今一度戒めるべきである。そして診療にあたっては、常に初心に返るくらいの謙虚で慎重な姿勢望むべきと僕は今回の経験を通して改めて考えさせられた。

 

 

過去にソウルで学んだ美容外科手術

 

今から15年近く前十仁病院勤務していた頃、僕はしょっちゅう韓国・ソウルの美容外科学会を訪れ、そこで知り合った著名な美容外科クリニックを訪れ、手術見学をさせてもらった。

 

そういったクリニックで見学し、学ばせて頂いた知識や手術は大変価値があり、僕が美容外科医として現在生業を立てられるようになったのも、あの時ソウルで得た貴重な経験のお陰と言っても過言ではない。

 

このようにソウルで多大な恩恵を得た僕だが、開業医としての実務が忙しくなるにつれ、以前のようにソウルを頻繁に訪れることは出来なくなった。

 

特に僕は眼周囲のアンチエイジング外科治療を前面に打ち出して開業したので、治療内容も目元中心となり、かつてのように鼻をはじめ、全身の美容外科医療に触れる機会から次第に遠ざかってしまった。

 

そもそも医師の学会参加は医師の本分として、医学発展・進歩に貢献すべく最新知見を習得するためである。ところが僕のように極めて専門性の高い治療のみに専念すると、学会から得られる知見は限られ、学会参加よりむしろ、同じ分野でしのぎを削る専門医の論文を読むことのほうが遥かに有意義であることにも最近気づいた。

 

それ以来僕は、学会参加の代わりに論文・専門教科書執筆に時間を費やすようになったが、これだけ長い間美容医療に従事しても、この医療全体への関心・興味はいまだに尽きず、機会があれば自分の専門以外の勉強を続けたいと思っている。

 

鼻形成を受けたナイーブな若い女性

 

そんな矢先、僕のクリニックに他院で行った鼻形成術後の相談患者が訪れた。この患者さんは23歳の今時の若い女性だったが、大変美意識が高いもにも関わらず、美容外科情報はあまり持ち得ない純粋無垢なタイプであった。

 

彼女の話しを聞くと、やや低めの鼻をコンプレックスに感じ、ネット検索で知ったある美容外科クリニックを訪れたとのこと。純粋な彼女は、そのクリニックで言われた治療内容を全く疑わず、言われるがままに鼻形成術を受けたらしい。

 

だが残念ながら治療結果は不満足なものとなり、その修正・改善の余地を求めて僕のクリニックをはじめ、さまざまなクリニックを廻り、セカンド・オピニオンを求めている最中だと言う。

 

”後悔先に立たず”という諺があるように、この患者さんは治療前、もっと慎重に鼻形成専門の優良医院を選択すべきだったが、現実はそうとはゆかず、手術を受けた結果誰が見ても不自然か鼻形となってしまった。

 

だが意外にも楽観的な彼女はそんな苦境にもめげず、得られた結果を健気にも受け入れようと努力したが、手術後、友人や職場の知人から不自然な鼻形を指摘されるようになり、修正する気持ちを次第に固めたのだと言う。

 

不適切な鼻形成手術

 

さて彼女の鼻を診察した僕の評価だが、鼻上部(鼻根部)が高過ぎで不自然、また鼻先(鼻尖部)部延術がなされていたが、不適切な操作のため、鼻先が上向き過ぎていかにも整形したことがわかるような形であった。

 

僕はこの患者さんに、治療を行った担当医に現状の問題点・不満を伝えたのか尋ねたところ、彼女は経過受診し担当医の見解を得ており、この担当医はこの患者さんの不満を認めたとのこと。

 

だがこの担当医師の見解はこの医師の修正は技術的に不可能なの自ら修正治療を行うのを拒否し、患者さがもし今後修正を望むのであれば他院で行うようにと指示したらしい。

 

つまりこの担当医は治療結果の不具合を認めはしたものの、修正治療・治療費返金を拒否し、極めて温厚で純粋な性格のこの患者さんはそれを鵜呑みにして、あらたに修正治療を行える医師を捜しているのだ。

 

本症例の如く、医療知識の乏しさや、純粋(ナイーブ)な性格のために、疑わず事を知らずに不適切な医療行為の犠牲者となる医療弱者(患者さん)が予想以上に多くいたり、このような不適切な治療をしても意に介さない悪徳医師が現実に存在している。

 

このような無責任な治療行為は、美容医療業界全体の評判を著しく貶めるので、利益優先でそのような不適切な治療行為を行っている医師・施設も、結局は巡り巡って自分の首を絞めることになるが、そのような簡単な事実にすら気づかない連中が意外に多いのかもしれない。

 

僕はこの患者さんを何とか救いたいと考え、上述した韓国ソウルの鼻専門医師に彼女を紹介することとし、この機会に彼女の手術見学を兼ねて久しぶりにソウルを訪れることにした。

 

クリニックで日々診療していると、クリニックを訪れるお客様をはじめ、クリニック従業員、医療材料・器機、ネット関連、クリニック清掃、書籍出版、また最近では中国人顧客を紹介してくれる紹介業・通訳者など多くの人々と関わります。それ以外にも社会保険労務士、顧問弁護士、顧問税理士たちとも密に連絡を取り合っている。

 

今から13年前、僕は自分の意志でこのクリニックを立ち上たが、その際も建築業者、医療業者さん達のお陰でなんとか開業に漕ぎ着けた。当時を振り返ってもあの時彼らの助けがなければ今の僕はなかったと思うと、彼らの好意に対して言葉に表せないほど感謝している。

 

先日、大学新卒でクリニックに入社した1人の従業員から「先生はあと何年くらい診療を続けるつもりですか?」と尋ねられたので、僕は即座に「僕はこの仕事が好きだしこれしか取り柄がないので出来るだけ長く、そうだね~、あと20年くらいはやるんじゃないかなぁ~」答えた。

 

するとこの従業員、続けて「そうですか。私もこのクリニックに長く勤められるのでそれを聞いて安心しました」と笑顔で返答した。僕はその時、もはやクリニック営業は自己都合ではなく、患者・従業員を筆頭に上述したクリニックに関わる多くの人々への責任が生じている事実に”はっ”と気づかされた。

 

開業して間もない時期であれば、自己都合でクリニックを閉院してもさほど責任問題は生じないが、僕のクリニックには今や1万人近くの顧客がいて、その方々たちから美容医療相談があれば、いつ何時も真っ先に応じる義務が生じているだ。そういった多くの人たちからの期待の中、もし自己都合でクリニックを閉じるとすれば、それはあまりにも身勝手、もしくは無責任ということになる。

 

長くビジネスを継続するにつれ、上述の如く重大な責任が発生するが、一方この責任はその見返りとして社会的信用力となって返ってくる。すなわち、その社会的信用力によりクリニックはより安定経営に繋がるので、むしろこの重大責任は歓迎すべきものであり、またビジネス成功者には必ずつきまとうものと考えるべきであろう。

 

特にクリニック診療は生きた人間を対象とするだけに、素晴らしい方にお会いして感動に胸震える経験をすることもあれば、逆に少々気むずかしい方を相手に不合理な思いをさせられ、それなりに辛い思いをすることもある。だがそういった苦い経験もポジティブに考えればそれは人生の糧になるわけだからそれも良しとし、また明日から頑張ろうと気分転換して翌日の診療を迎えれば良い。

 

銀座では最近、30代中半から後半の新進気鋭の美容外科たちが、かつての僕がそうだったが、成功を夢見て開業ラッシュが続いているとのこと。だが少子高齢化や美容外科を目指す医師の急増に伴い、銀座では既に美容医療が供給過多で、新規開業を目指している医師には前途多難な状況であるのに間違いない。

 

特に来年6月以降、厚生労働省が原則的にいわゆる”ビフォー・アフター”と呼ばれる症例写真のホームページ掲載の禁止を発表したため、開業成功は今後さらに厳しくなることが予想される。”ビフォー・アフター”写真の掲載禁止理由は、これらの写真を故意に加工・修飾して結果を良く見せて集客を図ろうとするクリニックが後を絶たず、それが原因で消費者庁に患者さん側からクレームが殺到したのが原因らしい。

 

このように美容医療提供側のビジネス運営に過酷な条件が突きつけられる中、この業界に新規参入する医師達は余程の信念と決意を持ち日々努力しなければ、明るい未来はやってこないであろう。だがこのような厳しい環境の中生き残った者こそ本物であり、そういった本物たちがこの医療を受けて良かったと思う顧客(ファン)を増やし、その結果美容医療の社会的認知・信用力が向上してゆく姿を、すでにベテランの域に達した僕は願って止まないのである。

 

つい最近まで美容外科では”美容整形”と呼ばれる、シリコン・プロテーゼを用いた隆鼻・隆顎手術、シリコン製バッグを用いた豊胸手術が主体に行われていた。僕が美容医療に飛び込んだのは2001年初頭だったが、それから早くも15年以上の歳月が過ぎ去り、その間日本の少子高齢化が急速に進んだせいか、美容医療ニーズも随分変化したように思える。

 

特にここ最近、老化現象を予防・解消する、いわゆる”アンチエイジング”美容外科がこの医療の主軸として台頭し始めた。この”アンチエイジング”美容外科の治療対象は、いわゆる”しみ”・”しわ”・”たるみ”であり、もはや以前頻繁に使われたシリコン・プロテーゼ、豊胸バッグの出番は激減している。

 

その代わりに台頭したのは、しみ”など色素性病変に有効なレーザー器機、しわ・たるみ改善に有効な集束超音波治療法(HIFU:High Intensity Focused Ultrasound)と呼ばれる超音波、もしくはラジオ波(RF:Radio Frequency)エネルギーを使用した最先端機器である。

 

また最近の手術手技では、顔面をはじめ、その詳細な解剖を把握した上で、美容・形成外科で用いる切除・除去・剥離手技をより高いレベルで習得し、そういった手技を治療ニーズに合わせて適切に応用する能力が不可欠である。また時代が進歩するにつれ、ナチュラルでより質の高い治療結果を求められるので、この医療に従事する医師達はそのニーズに答えるべく切磋琢磨に技術向上を図らねばならない。

 

この15年間、僕は自らこの医療に携わりつつ客観的に観察してきたが、上述の如く医療器機等は日進月歩にもかかわらず、この医療に従事する医師達の価値観・考え方はさほど進歩していないと感じる。医療は情熱を持った医師達がその知識を高め、技術を研鑽しつつ、その成果を学会・勉強会でフィードバックしコンセンサス(総意)を得ることでのみ、進歩してゆくのである。

 

ところが、この医療に従事する医師達の中にはそういった努力を怠り、その代わりにこの医療を利益追求ビジネス(商売)として利用するケースが後を絶たない。またそれぞれの医師達は唯我独尊的な医療を独自に展開する以外になく、各施設によって治療手技・主張が大きく異なってしまう。

 

その結果、この医療を求める患者たちは何が正しいかわからず路頭に迷うという、起こるべきではないことが現実に横行している。この医療に携わる多くの医師達がそういった態度を改めない限りこの医療の進歩は閉ざされ、いつまでたっても社会的評価も上がらず、巡り巡って自分たちの首を絞めることになるだろう。

 

我々美容医療に従事する医師たちは、お金儲けを最優先とする代わりに、医師の本分である勉学・研究にもっともっと力を注ぐべきである。そういった努力を行う医師が増え、この医療における筋の通ったコンセンサスが構築されれば、この医療の社会的信用が高まるであろう。その結果、多くの人々が美容医療の恩恵を享受するようになり、良好な医療を提供した見返りとして医師達も潤うという、良循環が得られ皆が幸せになれるはずであろう。

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