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技術者ブログ

2022年9月19日
1.4 医療としての「美」、美意識としての「美」ー3

●「美しさ」と「可愛らしさ」

コンラッド・ローレンツは,行動科学の進化決定についての業績により,1973 年の「ノーベル医学 ・ 生理学賞」を受賞した科学者である.彼の発言はわれわれに「美」についてのさまざまな見識・ヒントを与えてくれる. ローレンツは,『動物と人間の行動』という著書の中で,人間と動物の母性本能の存在を示している.

■図1.5:幼児が引き出す保護本能についての図解左列の頭は可愛らしい印象を与える(子供,子うさぎ,子犬,小鳥) .右列は小さい物をいたわる感情をもたらさない(大人,うさぎ,猟犬,野烏) .

これらの左列には子供と幼い動物,すなわち子うさぎ,子犬,そして小鳥が示され,右列には大人の人間と動物が描かれている.ローレンツが,これらの図のどちら側が好ましいかについてテストをしたところ,全ての回答者が子供の図の方が好ましいと判断したこのテストからローレンツは,「美は感情そのものであり,この感情は弱者を守るというわれわれに備わった本能に起因するもの」だという興味深い見解を示している.子供に特有の大きな頭,大きい額,その下にある大きな且ふっくらとした頬,短い手足,柔軟性, ぎこちない動きなどは,全て「可愛らしさ」の象徴である.それらの細部の一々はお人形さんや動物のぬいぐるみにも特徴づけられているものだろう.

左列が「可愛らしさ」を象徴するのに対して,右列の大人のイラストは保護本能を喚起しない.結論は明らかで,子供の顔が基礎となって大人の顔が形成されているが,子供らしい特徴のある顔ほど「魅力的」なのである.全ての人が,本能的に子供の顔に魅力を感じる.こういった幼い特徴を見ると,われわれは「保護したり,守ってあげたい」という気持ちが自然に喚起される.そうした傾向は人間にのみ限ったことではなく,動物にも認められると言う.

コンラッド・ローレンツは大人の動物が子供を守るのは,子供が発する外見的特徴音,臭いなどにより保護本能をくすぐられるからだと言っている.それは人間にもあてはまり,これらの条件は保護同情,優しさを誘発させる動機となっている.

■ 図 1.6:コンラッド ・ ローレンツは読書の心に触れるためこのような漫画を書いた.その漫画には 幼児や動物の特徴が強調されている.具体的にそれは頭が標準より大きく,額も丸みを帯びている. 頬は膨らみ,手足は短い.

繰り返し述べるが,幼い子供の場合は丸みと膨らみという可愛らしさの特徴がある.具体的には丸みを帯びた額,ふっくらとした頬,小さくてやや上向きかげんの鼻などで,これらは全て幼児の特徴で保護本能を呼び起こすものである.また童顔は「純真誠実,正直弱さ」を感じさせる.

一方,右列の大人の顔はこういった保護本能を呼び起こさない.幼児から成人になると頭は平坦化し,額は後退,鼻は長くなり,頬はこけて,幼児が持っていた全ての特徴は失われる.そういった顔を見てもわれわれの保護本能は全く喚起されない.成長した動物でも同様で,図1.5 に示された2列の比較は驚愕的である.デザイナーや画家そして漫画家たちはこうした顔の特性を熟知しており,見る者の心を動かすためにはそうした傾向をあえて誇張して描くことが多い.たとえば可愛らしさを強調するときは故意に頭を大きく,額を丸く,そして頬をふっくらと,そして手足を短く描いたりする(図1.6).

ところで,成人男性の場合はこうした幼児特有の輪郭を失ってしまうが,女性の場合はそれを保持することが出来るのである(図1.7).それ故に有能な美容外科医は,美しさに必要な幼児的な外見特性を最適化するよう治療する.それは人々の目を引く“子供っぽさ”であり,“愛らしさ”であり,具体的な形象について述べると,「柔らかさ,丸さ,優しさ」などである.

●「美」へのあこがれを掻きたてるもの

これまで述べたように成人の顔で「可愛らしさ」の印象を与える基盤は,幼児の有する特性に伺えるがそうした幼さの外見的特徴ばかりでなく,動きのある表情も美しさには重要な要件である.そうした表清を作り,他人の関心を引くことも出来る.他人を喜ばせたり感動させたりするのに,動きのある表情がいかに有用かを知って意識化した成功者もいる.たとえば歴代の映画スター,ブリジッド・バルドー マリリン・モンロ ,オードリー・ヘップバーンなどは,子供の「可愛らしさ」をうまく活かしたので,幅広い人気を獲得することが出来たが,特にマリリン・モンローは,まるでお化粧の方法を知らない小さな少女の印象を与えるため,故意に失敗したような化粧を施していたとも言われている.また,遊んだばかりの少女を想起させるような乱れた髪型を故意に作り出すため,長時間美容院で費やしたとも言われている.

秩序のアンバランスや調和の破綻としてある「可愛らしさ」は,それゆえに,男性が女性に感じる「美」へのあこがれを掻きたてるもの,「美しさ」の代役であり化身なのである.もし女性が子供っぽさを失い,逆に男性を支配しようとすれば,男性は女性に対する保護本能を感じず,妻や恋人よりも母親を思い出すだろう.女性は美しさに対する関心が男性より高いので,彼女たちは意識的,無意識的にも子供っぼさを態度に表すのである.

それは「弱さ,もろさ,無垢,ナイーブさ,無知,感情的,不機嫌さ,感嘆,好奇心」であり,〈可愛らしさ〉〈愛らしさ〉の変奏曲である.女性はその“か弱さ”を最大の武器として活用し,保護本能を喚起させようとするのである.女性にとって最大の強みは〈弱く見せかけること〉に他ならない.女性たちの「作られた弱み」は,男性の心に直接的に訴えかける常套手段であるといってもよい.

■図1.7:年齢・性別による輪郭の違い上:男性は幼少時代の曲線から角を帯びた顔になる 中:子供の輪郭は曲線的で丸みを帯びている . 下:女性は幼少時代の曲線的輪郭を維持する.

かのナポレオンは,女性の最大の二つの武器は,「化粧と涙である」と言った.化粧の価値については後述することとして,涙とは先ほど述べた女性の「か弱さの象徴」に他ならない.それ故に,いかに子供っぽさが注目を引くかがわかるだろう.それを掻きたてるアクセントとは,たとえば「そばかす,紅色の頬,紅潮した顔色,長い睫毛金髪の巻き髪膨らんだ頬形が良くふっくらとした唇など」である.

男性の場合は,女性のように幼さを最大限に活用する必要はないが,それでも女性たちの人気の的となったクラーク・ゲーブル,ゲーリー・クーパーなどの色男,レオナルド・デカプリオのような優男たちは毎日ヒゲを剃り,子供っぼさを醸し出そうとする.

男性にもこういった幼さを感じさせる要素があった方が,女性の関心を引くのだ.もちろん,男性の場合,子供っぽさの全ての要素が必要なわけではなく,一つでもあればよいわけである.

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