GINZA CUVO

2011年5月アーカイブ

再生医療の応用

現在脚光を浴びている新しい医学に表-6の如く再生医療がある。再生治療とは疾患による機能不全や、老化で衰えた体内組織を何らかの手段で再生し、失った体内組織機能を取り戻す医療である。当クリニックで行う目の下のクマ(くま)、たるみ解消の経結膜的下眼瞼形成術も再生医療原理を用いた治療である。この治療では低出力レーザーを用いて皮下組織に侵入し皮下剥離を行う。この操作により皮下部では、いわゆる"創傷治癒機構"が迅速に作動する。

すなわち、治癒に関与するマクロファージなどの炎症細胞が皮下部位に集結し、グロースファクター(成長因子)を放出する。グロースファクター(成長因子)は剥離された皮下を修復しようと結合組織を再生させる。この結語組織は健常組織よりも強固に皮膚-皮下結合組織を固着させる。この グロースファクター(成長因子)の皮下組織修復作用により、目の下のクマ(くま)、たるみは改善された状態でほぼ永久的に維持される。つまりこの治療では皮下へのレーザー照射刺激で グロースファクター(成長因子) 放出を促し、その作用により永続的な改善効果が得られるため、原理的には再生医療の一つと言える。

数年前から美容外科領域で頻繁に使用されている再生医療の一つがPRP(Platelet Rich Plasma、多血小板血漿)療法である。血液内血小板には グロースファクター( 成長因子)が多く存在する。この血小板内 グロースファクター( 成長因子)を抽出し、老化によって生じたしわ等に注入することで、症状の改善を図ろうとするのがPRP療法である。

幹細胞には皮膚線維組織や脂肪組織に存在する体性幹細胞や、受精卵から作られる胚性幹細胞(ES細胞)がある。最近、美容外科領域で応用され始めたのが体性幹細胞を用いた治療である。 体性幹細胞はすべての体細胞に分化する能力を保持している。この体性幹細胞を脂肪組織等から培養してその数を大幅(約5,000万個)に増やし、体内に戻すと、これらの幹細胞は病気で機能不全に陥ったり、老化で衰えた組織を再生する可能性がある。この治療はごく最近応用されたばかりの最新治療であるが、すでに治験レベルで腎不全や免疫力低下症などに有効な結果が出始めている。美容領域では体性幹細胞を老化で弾力性を失った皮膚に注入して皮膚の若返りを図ったり、治療後の回復を早めるため、フェイスリフトなどの治療部位にあらかじめ注入しておくなどの臨床応用が期待される。

表-6

再生医療の種類

作用機序

下眼瞼形成術

レーザー照射によるグロースファクター(成長因子) 放出

PRP(多血小板血漿)治療

血漿内成長因子の抽出とその注入

体性幹細胞治療

脂肪や線維組織内の体性幹細胞を採取、培養とその注入

まとめ

一般外科領域では疼痛緩和、救命のための手術治療を行う。その際、大きな皮膚切開痕を残す手術であっても致し方ないとされていた。だが皮膚切開アプローチによる治療では傷跡のみならず、回復過程が遷延され、社会生活に多大な支障を来す。そのため今日の外科医療では、低侵襲、早期回復へ向けてた新たな治療法が日々開発され、発展している。

このように一般外科領域でも可能な限り皮膚切開をせずに、内視鏡や腹腔鏡を用いた治療が優先的に行われる。ましてや救命や疼痛除去などと違って緊急性を要しない美容外科手術の場合、皮膚切開を用いる手術が第一選択として選択されるべきではない。顔面領域で優先的に用いられるべきなのは眼瞼結膜、鼻粘膜、口腔粘膜からの進入アプローチである。上眼瞼やフェイスリフトなど皮膚切開を伴うアプローチでも、重瞼ラインや耳横の皮膚線条を用いることで、可能な限り傷跡を目立たせない配慮が必要である。多忙な現代人が美容外科手術を望む場合、ダウンタイムが短く自然な仕上がりが得られる治療であることが必須条件になりつつある。

また美容外科手術の了解事項として、本格的手術を行う場合、一部位一度の手術であれば妥当とされる。つまり同じ箇所に何度もメスを入れるべきではなく、このコンセンサスを遵守した治療であれば、この医療が一般社会に広く浸透する可能性が高い。

どれほど確立された美容外科手術であっても治療結果の個体差や、満足度の差異が存在する限り、すべての患者さんが常に満足するとは限らない。まず最初に医師ー患者間の信頼関係をしっかりと築くべきである。いかに熟練した外科医が行ったとしても、まるで"魔法使いが魔法を使って治療する"のとは異なること、すべての症例で得られる結果が常に完璧とはならない医療行為の現実的限界を認識した上で治療を行うべきである。

確実な信頼関係が構築されていると、たとえ初回治療で不満足な点があったとしても、追加治療等でさらに良好な結果を得ることが可能であり、最終的には満足のゆく治療を行うことが可能となる。逆に信頼関係を持たずに治療を行ったとすれば、治療上の些細な問題点も大問題と誇張されかねない。したがって患者との信頼関係が築かれない場合は、勇気を持って治療を断ることもトラブルのない診療を行う上で非常に重要である。

自由診療として高額治療費が必要な美容外科領域では、治療に伴ういわゆる"クレーム"を可能な限り最小限に食い止めることがクリニックの安定維持、しいてはこの業界全体の社会的認知度、及び信用度を確保する上で大変重要である。 この医療に携わる医師全員が私利私欲を優先にするのではなく、 美容外科医療が成長、発展してくよう切磋琢磨に努力せねばならない。


目の下のたるみ治療について

目の下のくま治療について