診察
目の下のたるみとしみを認めます。 眼領域を含めた身体所見上、特に異常なし。
血圧99/71mm Hg、脈拍70
既往歴:とくになし。
喫煙:10本/日。
飲酒:なし。
脂肪量:右 >左で、量は比較的多い。
色素沈着:両目下にしみを認める。左右、直径11ミリの色素斑
しわ:両目の下の眼輪筋と脂肪の間に生じている。
蒙古ひだ:ほとんどなし。
眼球突出:なし。
経過
3年前から目の下のたるみが気になり始めました。両目の下のしみはそれ以前から存在し、次第に濃くなってきたそうです。これまで主な美容医療の経験はありません。
治療方針
写真1、2のように比較的大量の過剰脂肪が目の下に蓄積しています。それが原因で、目の下のたるみが目立っています。適切量(全体量の60~70%)の脂肪除去を含めた目の下のたるみ治療が有効です。
しみは両目下に黒い影状に見えますが、老化性色素沈着症と診断されます。このタイプのしみはQスイッチレーザー(532nm)治療が有効です。
治療後の評価
治療直後の写真3、4を見ると、麻酔の影響で目の周りが黄色く見えます。しかし、この黄色みは治療後1~2時間で消失します。
治療翌日の写真5、6を見ると、治療直後より、むしろむくんでいるため一時的に治療前に戻ったかのような状態となります。レーザー照射を行った目の下のしみは一時的に色素が濃く見えます。
しかし、治療7日後の写真7、8を見ると、目の下のたるみとしみは、どちらも満足のゆく程度まで改善します。
この症例のように50歳代以降の女性は、脂肪摘出量を通常よりやや少なめに摘出するようにすると、症状回復は20・30代の若年層とほぼ変わらずに良好です。
この女性は“3年前より急激に目の下のたるみが目立ってきた。”と訴えています。
目を支える靭帯等の組織は加齢とともにゆるみ、ある時破綻をきたして目の下の奥から脂肪が皮膚近くまで飛び出してくる(脱臼)ことがあります。このような場合、患者様は目の下のクマ(くま)、たるみが一気に現れたと感じることが多いようです。
治療は皮膚の近くまで出てきた過剰脂肪を平らになるまで均一に摘出すると、症状は一週間後(写真7、8)にすでに改善しています。
治療前後の写真を比較すると、治療後に目の下のたるみが改善したのみでなく、余分な脂肪が除去されたため、目の上下の開きが良くなります。そのため、元来ある奥二重がよりはっきしりして、“目がぱっちりした”ような印象になります。
治療後一ヶ月後の写真-9、10では眼輪筋(いわゆる”涙袋”)のむくみもとれ、落ち着いてきたと言えます。
しかし、右目の目の下の皮膚の窪みがまだ残っています。このような症状は中高年以降の方に認められることがあります。
しかし、このような症状は治療後3~4ヶ月で自然に改善します。
早期改善を望む場合、目の下の皮膚深部にヒアルロン酸注入を行うことも良い方法です。注入したヒアルロン酸は一年程度で次第に吸収されます。この間に目の下の窪みは自然に改善するので、たいていの場合一度のヒアルロン酸注入で済みます。
今回の症例ではご本人が現状に満足しているので、そのような治療は行いませんでした。
治療後2ヶ月目の写真-11,12を見ると、両目とも腫れが完全に落ち着きました。また、目の開きが良くなり、その影響は目の下ばかりではなく目の上にも認められます。今後目の下のしみを中心にスキンケア治療を行う予定です。