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美容外科ブログ

2022年9月20日
名医の条件―3(美容外科医の場合)

有能な外科医になるための条件はいくつもあることを前回までに述べてきた。では美容外科医の場合はどうだろう?美容外科医が一般外科医と異なるのは、美容領域ではいわゆる患者さんを治療するのではなく、健常人を対象とすること。したがって、有能な美容外科医は一般外科医に必要とされる条件を満たすだけではなく、それ以外にも必要とされる資質がある。では、以下にその代表的条件を列挙してみようと思う。 1) 美容外科医は手術が上手いだけでなく、コミュニケーション能力が優れている。 昔、勤務した一般外科系病院にはたくさんの医師が所属していた。こういった病院では診察、検査、手術が同時進行で進む。外来診察を受けた患者さんで手術治療が必要となったとする。しかし、この病院では手術はこの患者さんの外来診察をした医師と別の手術専門医師が行っていた。つまり、外来診察医と手術専門医が別々に存在することになる。こういった場合、外来診察医は患者さんとのコミュニケーション能力に優れているが、手術をする能力に欠ける。逆に手術専門医は、外来診察医が次々と手術患者を廻してくれるのでコミュニケーション能力がなくても外科医としてやっていける。こういった手術専門医は黙々と作業を行う職人のように手術を行う。したがって、手術専門医は患者とのコミュニケーション能力面を伸ばすことができない。 これらの外来診察医と手術専門医は二人一組で、外科診療の初めから終わりまで完結するので、このような医師がどちらか一人では開業医としては大成功できない。この両方の能力を兼ね備えることは一見容易そうで実は大変難しい。人はコミュニケーション(会話)能力と手先を使う脳部位は異なるためか、両方を同時に発達させるのは困難なのだ。美容外科医は開業医として診療を行うことがほとんどである。つまり、美容外科医はコミュニケーションと手術の両方の能力を備えていなければならない。この一点からだけでも、美容外科医として成功するのはかなり難しいことがわかる。 2) チャレンジ精神旺盛である。 一般診療の場合、治療は医師がチームを作って行う。その際、若手研修医は経験豊富な指導医に指導されながら実力をつけてゆく。美容外科診療は比較的新しく大病院や大学病院で行っている場所がいまだ数少なく、しっかりとした研修を受けることが難しい。美容外科医として実力をつけてゆくには、少ないチャンスを見逃さないようなガッツと学会などに積極的に参加する姿勢が肝心である。美容外科医は一人で診療することがほとんどなので、実力をつけた後、すべての診療行為に対して、自分一人の医師で全責任を持つ覚悟が必要である。 3) 人気があって、運気が良い。 人気や運気はどのような仕事でも成功するために必要な要素である。美容外科の場合、どちらかというとサービス業的な要素が強い。したがって、美容外科医が良い雰囲気を醸し出しながら良い仕事を続けていると、お客さんが自然と集まり繁盛する。逆にどんなに最先端の技術を習得していたとしても、その医師の持つ運気が悪いと思ったように物事が進まないことがある。かつて勤務していた地方病院に都会の大病院から中堅の外科医が転勤してきた。僕はそのとき“おやっ、どうして都会から地方の病院にやってきたのだろう?”と、ふと思った。就任して間もなくこの医師は、腰痛を訴える70歳の男性を担当した。患者さんの腰痛の原因は腰椎椎間板ヘルニア、手術治療が必要と診断された。早速手術が行われ、手術は何一つ問題なく終わったかのように見えた。しかし、この患者さんは手術終了後、症状が改善しないばかりか、手術を受けたほうの足が動かないと言う。この外科医は手術に誤りはなく、適切に終わったと主張した。腰椎椎間板ヘルニアの手術は、僕も整形外科医の時にちょくちょく行ったが、慎重に行えば決して足が麻痺するなどの副作用が出たりはしない。この中堅外科医は“しばらく様子を見るしかない。”と患者に説明したが、患者さんの表情はどことなく不安そうだった。 時間が経過しても患者の症状は一向に改善しないため、ほかに原因がないか全身検査を行った。すると手術が行われた部位とは異なる脊髄部位に腫瘍らしき影が映っていた。さらに検査を進めると、その影はなんと前立腺がんの転移巣であることが判明した。結局、その外科医の治療は何ら問題がなかったのだが、患者さんの家族は“手術前に動いていた足が手術後に麻痺したのは手術のせいだ。”と決めつけ、手術を行ったその医師に強い不信感を抱いていた。風の噂によると、この医師の手術には過去にも同様な事故が起こっていたらしい。この例のように、偶然と思えない不慮の出来事が重なるのは、その人間の運気の良し悪しとしか言いようがない。美容外科医として無難に手術をこなしてゆくには、すぐれた治療技術とともに良い運気を身につけるこがとても大切である。 4) “医療は患者さんのためのもの。”という大原則を忘れない。 一般的外科医の究極目標は、いかにレベルの高い最新の手術を行えるか、もしくは新手法を開発できるかであろう。しかし、美容外科医の場合はそれ以上に大切なものがあることを忘れてはいけない。どんなに高いレベルの手術を行えても、それが患者さんに役立たなければ全く意味がない。ここでわかりやすい例をあげてみよう。美容外科領域において、同様の結果を求めた二つの治療方法が仮にあったとする。得られる結果はほとんど変わらないとして、一方は簡単かつ短時間で終了する。もう一方は複雑かつ長時間かかる。どちらが良い治療であろうか?もちろん、前者であることは言うまでもない。何故なら簡単かつ短時間で終了する方が、腫れが少なく回復が断然早い。しかし、高い技術を習得することを目標とする外科医にとってはどうだろう?それは、患者さんにとっては驚くべき事実であろうが、後者を選択する外科医も少なくない。美容外科領域において本当に大切なことは何であろうか?繰り返しになるが、医療が患者さん中心のものである大前提に立つと、簡単で短時間で終了する手術の方が優れていることに他ならない。 5)“本当の美しさ”を知る。 美容外科医にとって技術より大切なことがある。それは“本当の美しさを知る”こと。“美しさ”とは何かを常に知る努力を惜しんではいけない。女性を主たる治療対象にする美容外科医は、彼女たちが望む“あくなき美への欲求”を満たし続けなければならない。そんな彼女たちにとって、手術技術がどうであるかは二の次、結果さえ良くて早く回復すれば文句はない。そこに手術技術を誇る外科医のプライドの出る幕はない。では“本当の美しさを知る”にはどうしたらよいのだろう?これはフランス美容外科医の大御所から聴いた話だがそれは美しさに感動する以外にない。可憐な女性が目の前を偶然に通り過ぎた時に感じた“はっ”する思い、喜び溢れた少女の笑顔の可愛いらしさ、対象は人間だけではない。野に咲くバラの花から落ちる朝露や、真っ赤に染まった夕日でもいい。美しさに感動したとき、その感動の原因を心に留めるようにしていると、“本当の美しさ。”が何か分かるようになる。つまり、美容外科医にとって“美しさの感受性”を有する方が、最新技術を習得するより、むしろ大切と言っても過言ではない。 これまで述べてきたように、美容外科医として成功するのは並大抵のことではない。最新外科手術の習得に精進してもまだ足りない。“魅力ある人間として成長し続ける”、これこそが美容外科医として成功する最大の秘訣であろう。

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