GINZA CUVO

2014年4月アーカイブ

過去にある哲学者が"人間の幸福を損なうのは痛みと退屈"との格言を残したように、痛みは誰にとっても不快であり、いかなる時も痛みとは無縁でいたいと願うだろう。だが美容外科を始め、すべての医療は治療に痛みを伴うことがほとんどである。


特に美容医療では、救命目的や痛みを伴う病の治療ではなく、"Elective Surgery"と呼ばれるあくまで本人の随意によって決められた治療行為を行う。すなわち美容医療の如く、患者のQOL(生活の質)の向上目的に行う医療は、出来るだけ不快感や苦痛を伴わないよう配慮することが極めて肝心である。


またこの医療では、顔をはじめ大変デリケートな領域を扱うことが多いので、治療行為は可能な限り繊細かつ正確でなければいけない。そのため、治療に携わる医師の技術が揺るぎないものであることは当然として、患者の確実な沈静化を図ることが同様に重要である。


例えば美容外科手術に緻密な作業中に、患者が痛みや不快から予想外の動きしたとすれば、たとえどんなに有能な外科医であろうと、正確な治療を行うのは不可能となる。したがって美容外科医療では、適切な鎮静・麻酔剤を用いることで、患者の確実な沈静化と無痛状態を獲得した上で治療を行うことが必要不可欠となる。


外科医療の際の疼痛コントロールは麻酔剤を用いて行う。麻酔は全身麻酔と局所麻酔に大きく大別される。全身麻酔とは吸入麻酔剤等を用いて深い麻酔作用をもたらし、完全な無意識下状態とするものである。したがって全身麻酔時には人工呼吸管理が必要となり、事前の呼吸器・心電図検査や、麻酔覚醒後の管理のため一泊入院が必要となる場合が多い。


だがほとんどの美容外科治療は外来クリニックで行う日帰り手術なので、いわゆる全身麻酔を用いることは希である。そこで外来手術で用いられるのが局所麻酔である。局所麻酔は治療患部に麻酔剤を直接注射し、同部位の末梢神経を一時的に麻痺させるものである。


麻酔効果は数分以内に発揮され、麻酔効果の持続する数時間は完全無痛で治療可能のとなる。だが知覚神経が繊細な顔面への局所麻酔注射を行う際、針刺入痛自体が苦痛となりかねず、この局所麻酔剤・針刺入痛への配慮も必要となる。局所麻酔剤・針刺入痛は30G以下の極細針を用いることで大幅に緩和される。また皮膚表面麻酔剤を局所麻酔剤注入の前に塗布したり、患部冷却を行いながら注射を行うと、針刺入痛はさらに緩和される。

すでに社会的に認知されたヒアルロン酸・ボトックス注入などの一般的治療では、さほど不安を抱くことはないため、上記の如く痛みに対する配慮を行うと、治療は支障なく行えるだろう。だが本格的な手術治療の場合、痛みはさることながら治療結果の予想がつきづらいこと、さらに馴染みのない経験であるため、治療自体に強い不安を感じる場合がほとんどである。


我々は不安を伴うと、神経が過敏となり平常時より痛みを強く感じるようになる。したがって手術治療を行う際は、患部への局所麻酔剤注入前に静脈麻酔と呼ばれる静脈からの鎮静剤注入を行い、患者様の沈静化を図ることが肝心である。このように局所麻酔+鎮静剤の静脈投与の併用をバランス麻酔と呼ぶ。バランス麻酔法は美容外科医療で日常的に行う日帰り外来手術の際、全身麻酔なしでも全身麻酔下と同様の治療が成せる、非常に有用な麻酔法である。