GINZA CUVO

2012年2月アーカイブ

考察

目の下のたるみの原因とその治療の詳細

従来まで目の下のクマ(くま)、たるみ解消のための治療は、多くの症例で眉毛直下皮膚切開法が用いられていた。だが、目の下のクマ(くま)とたるみは、同じ原因で発症しているとは限らないので、その治療法はそれぞれの原因に応じて異なるべきである。(9)

一般的に目の下のたるみは、加齢に伴う下眼瞼支持組織の弛緩による下眼窩脂肪の前方脱出がその主たる原因とされる。したがってこの症状は下眼窩脂肪の量が多い北方モンゴロイド系の遺伝子を有した東洋人に発症しやすいと言われている。(1)

目の下のたるみ治療は、眼窩隔膜から前方に逸脱した大量の下眼窩脂肪を軽減させるための、いわゆる"脱脂法"が主体となる。脱脂法は下眼瞼を反転させて下眼瞼結膜から進入し、逸脱した脂肪を摘出する手技をいう。下眼窩脂肪は内側、中央、外側と3部位に皮膜を伴い房状に並んでいる。

下眼窩脂肪摘出はこれらの3部位の解剖学的位置関係を肉眼下で確実に把握し、各々から均等に脱出脂肪を必要量摘出することが肝心である。解剖学的位置関係を把握することなしに盲目的に行うと、不均等な脱脂による下眼瞼の凹みや、それに伴う皮膚表面のしわ発生の可能性が生じる。(10,11,12)

これまで我が国で主流であった眼窩隔膜後方アプローチで脱脂すると、下眼窩脂肪後部の除去となり、目の下のたるみの直接的原因である下眼窩脂肪前方膨隆部の軽減を正確に調節しずらい。したがって、より熟達した技術を要するものの、Fig-2の如く、眼窩隔膜前方アプローチにて下眼窩脂肪前方膨隆部を適切に除去することが、良好な結果を得るのに極めて重要である。

目の下のたるみ治療の症例 次に当クリニックで行われた経結膜的下眼瞼形成術の治療例を提示する。Fig. 7-a,bは61歳、男性で、数十年来、目の下のたるみに悩まされていた。この症例の場合、たるみ症状は右>左だが、典型的な目の下のたるみ症例である。治療直後の写真Fig. 7-c,dでは局所麻酔剤に含有した血管収縮剤( 10万分の1アドレナリン)の影響で下眼瞼皮膚の白色化を認めるが、通常の場合、この症状は数時間で消退する。明らかな内出血や大きな腫れはなく無難に手術がしたことが分かる。Fig. 7-mの如く、摘出された下眼瞼脂肪量は中等度であり、右=左であった。 治療翌日の写真Fig. 7-e,fを観察すると、右>左の治療後の下眼瞼部位の腫脹を認めた。また左下眼瞼外側目尻部位に軽度の内出血による紫斑を認めた。治療1週間後Fig. 7-g,hを観察すると、下眼瞼部位の腫脹は解消されたが、下眼瞼直下の眼輪筋の慢性的腫脹を認めた。この状態は通常の場合、治療後3〜4週間程度継続し、その間いわゆるTear trough部位が深くなるため、下眼瞼皮膚の凹みとして認識されることが多い。だがこの下眼瞼皮膚の凹み症状はあくまで一時的で、治療1ヶ月後の写真Fig. 7-i,jを観察するとわかるように、眼輪筋の慢性的腫脹が収束すると、目の下の凹みは自然に解消されたことがわかる。 この時期、下眼瞼皮膚に軽度ちりめん皺を認めるが、この症状はあくまで一時的であり、治療3ヶ月後の写真Fig. 7-k,lを見ると分かるように、ちりめん皺は経過とともに自然と解消去された。この時点での治療結果であるが、右下眼瞼に軽度たるみ残存によるTear troughを認めるものの、本人の主観的満足度が非常に高く、治療結果は良好として終了した。 治療前後の写真Fig. 7-a,bとFig. 7-k,lを比較すると明らかなように、目の下のたるみ症状ののみならず、上眼瞼の凹みや軽度眼瞼下垂傾向の改善が得られた。こういった上眼瞼症状の改善機序についてだが、下眼瞼脂肪の前方突出を改善した結果、加齢に伴う眼球上転傾向が修復された二次的作用が予想される。 従来まで、中高年層で目の下のたるみ症状が強い症例では、経結膜的下眼瞼形成術を行っても、皮膚自体の緩みがあるため、余剰皮膚を切開除去しなければ良好な治療結果がえられないとされていた。だがこの治療症例からも明らかなように、中高年層で目の下のたるみ症状が強い症例でも、適切な治療を行うと、皮膚切開なしに経結膜的下眼瞼形成術で十分良好な結果が得られることが実証された。それは下眼瞼皮膚を皮下組織から解離させることで、改変された下眼瞼構造に合わせて、下眼瞼皮膚自体が自然に収縮するためである。 Fig. 7(左から順番にa,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,l,m) Fig. 7-a,b 61 year old male. Preoperative front and enlarged view around the eye. Eye bag was prominent. Fig. 7-c,d Immediately after the operation. No internal bleeding and swelling was minimal. Fig. 7-e,f One day after the operation. Swelling of lower eyelid was remarkable. Fig. 7-g,h One week after the operation. Temporal depression of lower eyelid skin was recognized. This was caused by marked swelling of orbicularis oculi muscle. Fig. 7-i,j One month  after the operation. Depression of lower eyelid skin was improved. Fig. 7-k,l Three months after the operation. Chronic swelling of lower eyelid was completely eliminated. Excellent result was achieved. No skin care intervention was needed to the end. Fig. 7-m A large amount of lower orbital fat was extirpated. IMG_8575IMG_8582 IMG_8406 IMG_8408IMG_8606IMG_8607 IMG_8678IMG_8681 IMG_8860 IMG_8862 IMG_2558IMG_2559IMG_8403

目の下のたるみ治療について詳しく見る
目の下のくま治療について詳しく見る

結果

再診患者200名の主観的満足度はFig-3に示される如く、全体数の28% で大変満足、56% で満足、13%でおおむね良好、3%で不満足との結果が得られた。大変満足、満足、おおむね良好群で、治療結果に満足した理由を尋ねると、"長年劣等感となっていた目の下のクマ(くま)、たるみが大幅に解消した"とのことだった。満足程度の差異は、得られた結果が期待以上であれば大変満足、期待通りであれば満足、満足はしているものの期待以下であった場合、おおむね良好となっていた。不満足群は、治療後に何らかの不具合が生じた場合や、得られた結果が期待以下の場合であった。

Fig-3

fig-3

治療後一ヶ月後に来院した再診患者200名を調査した結果、治療後の合併症としてFig-4の如く、下眼瞼皮膚や眼球白膜への内出血(2%)、下眼瞼皮膚のしわ(8%)、へこみ(5%)、黒ずみ(色素沈着)(10%)が発生した。内出血は治療後7〜14日程度で解消された。しわ、へこみ、黒ずみは治療後2〜3ヶ月で自然回復する例がほとんどだった。だが慢性皮膚炎や喫煙習慣のある患者では、下眼瞼色素沈着は治療後、長期時間が経過してもそのまま残存していた。

Fig-4

complications

治療後下眼瞼に発生した凹みは、下眼瞼眼輪筋部の慢性腫脹が主な原因であり、一時的な症状であし、治療後2〜3ヶ月程度で自然に回復することがほとんどであった。だがFig-5のように、早期回復を求める患者14名に対して、治療1ヶ月後にヒアルロン酸を少量下眼瞼の凹んだ部位注入し、その症状を改善した。しかし、慢性腫脹が完全に消退する治療3ヶ月後以降、注入したヒアルロン酸は不必要となり、皮膚面に表出してくる症例があり、そういった場合、ヒアルロン酸分解酵素であるヒアルロニダーゼを用いて溶解させる必要があった。また治療3ヶ月程度が経過しても、いわゆる"nasojugal groove"(眼瞼内側から外側下方に伸びるハの字の溝)が残存した5例で、本人の希望により自己脂肪細胞を大腿部や腹部より採取し、"nasojugal groove"に注入して症状の改善を図ったところ、良好な結果が得られた。(8)

Fig-5

revision

次に、他院で行われた症例の再治療例について検討する。Fig- 6で示されるように6名で下眼瞼眉毛直下皮膚切開法が用いられていた。また7名で経結膜的下眼瞼形成術が行われていた。前者群では下眼瞼余剰皮膚は十分に除去されていたが、下眼瞼脂肪の前方脱出による膨隆症状や、治療の不具合によるしわが発生していた。後者では治療が行われたにもかかわらず、症状の残存を認めていた。これらのすべての症例に対して、当院では皮膚切開法を用いず、経結膜的下眼瞼形成術にて症状の改善を図り、良好な結果を得た。眼球や視力への機能的影響は全くなかった。また、皮膚切開法の際に発生する危険性のある下眼瞼外反は傷跡の残存も皆無であった。

Fig-6

Fig-6



目の下のたるみ治療について詳しくはコチラ

目の下のくま治療について詳しくはコチラ