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ハワイ・オアフ島の形成外科クリニック

国・地域により治療のニーズは異なるので、普段自分のクリニックで行っていない治療に触れるため、僕は定期的に様々な場所に出かけるようにしていて、今年2月には前回ブログで記載した如く韓国・ソウルに鼻形成手術見学に出かけた。

 

鼻以外の顔面形成外科治療は当クリニックで頻繁に行っているものの、体幹部位治療は少ないので今回は米国・ハワイの知人形成外科医のクリニックを訪れた。というのも美容外科治療を見学するにあたって、いきなり見ず知らずのクリニックを訪れる訳にはゆかず、やはり知人クリニックを訪れるのが見学承諾を得やすいからだ。

 

ハワイ・オアフ島市街地で長年開業するベテラン形成外科医・パスクワレ医師のクリニックでは乳房形成、腹部下半身脂肪吸引、そして下腹腹部が垂れ下がり、脂肪吸引のみでは解決出来ない症状を解決する腹部除脂術を専門に行っており、こういった日本では稀な症例を見学しに行った。

 

今回3日間のオアフ島滞在で見学したのは腹部除脂術、男性に生じた女性化乳房修正術、そして鼻側に生じた皮膚がん(基底細胞癌)手術だったが、どれも日本で遭遇する機会が希な症例だったため、大変興味深く見学させてもらった。

 

腹部除脂術(Tummy Tuck)

最初の症例となった腹部除脂術は、下写真の如く余った皮膚と皮下脂肪が下腹部に覆い被さるほど弛んでいる場合で、皮下脂肪を脂肪吸引で吸引するだけでは治療効果が乏しいため、皮膚・皮下組織を一塊にして切除する方法で、欧米人の肥満症例ではこの治療が必要になる場合が少なくない。一方日本人の場合はたとえ肥満に陥っても皮膚・皮下組織に弾力性がありため、欧米人に認められるような皮膚が下腹部で覆い被さることは少なく、脂肪吸引のみで事足りる場合が殆どである。

 

この手術のポイントは弛んだ皮膚・皮下組織を腹部筋肉の上で腹部上部レベルまで剥離し、余った皮膚を切除するが、その際当然お臍の位置が上方移動するので、新たなお臍が収まる箇所を上腹部皮膚に形成するところである。決して難しい手術ではないが、剥離範囲が広範囲に及ぶため全身麻酔で行う必要があるのと、術後も感染症等を起こさないよう、適切なケアをすることも肝心である。

IMG_8506.JPG.jpgのサムネイル画像

 

 

 

男性の女性化乳房修正術

次に行ったのが男性の女性化乳房修正術だが、下写真症例は30歳の米国人男性で、ご覧の通り体幹部は良く鍛えられているものの、乳房がやや女性のように膨らんでいる。その原因はこの男性がボディビルディング・トレーニングを行うにあたり、ステロイドホルモン用を多用し、そのホルモンの一部が女性ホルモンへと変化したため、女性化乳房が生じたというのがパスクワレ医師の見解だった。

 

治療は腋窩部から脂肪吸引を行った後乳輪部切開を行い、そこから脂肪吸引で除去しきれなかった余剰軟部組織を一塊にして切除したが、この男性の女性下乳房症例は意外にも多く、米国男性たちはこの症状を忌み嫌うため、男性の体幹部治療として症例数が最近特に増えているらしい。

 

日本にも肥満男性などに女性化乳房が発症しているケースは少なからずあるが、日本人男性の場合、体幹部への美意識が低かったり、そもそも自分の乳房が女性化していことに気づいていない、もしくは対処法があるとは知らず、そのまま放置している場合が少なくないようである。

 

だが女性化乳房は1度気にすると、何とかしたいと思うのが人情であったり、特に体を鍛えて男性らしくありたいと願う男性には耐えがたい症状なので、外科的手段を用いてでも解決したいと考える男性たちが近い将来日本でも増える可能性が高い。

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左鼻横に生じた皮膚がん(基底細胞癌)

最後に観察したのが49歳白人男性の左鼻横に生じた皮膚がん(基底細胞癌)だったが、その診察に僕も参加して驚いたのが皮膚がん所見がなかったこと、すなわち皮膚がんを示す皮膚病変が全く存在しなかったことだった。

 

この男性の鼻横の皮膚の色調や性状に全く変化なく、どのようにその癌を発見したのかが今ひとつ釈然としなかったが、最終診断はバイオプシーと呼ばれる同部位皮膚細胞採取とその細胞の顕微鏡診断による悪性度の有無で、その結果この男性のケースは皮膚がんと証明されたのだ。

 

手術は鼻翼横にある皮膚を直径5ミリ程度、すなわち直径30ミリ程度の皮膚がんより直径20ミリほど大幅な余裕をもって円形切除した。このような拡張皮膚切除を行うのは、皮膚がんが周囲組織への浸潤・転移するのを確実に回避するためであった。

 

そして左鼻翼横で大きく欠損した皮膚領域は、下図の私がこの手術見学中にメモしたスケッチの如く、ほうれい線下にV字切開を加え、腫瘍切除で欠損した部位にその皮弁を移動させた後、Y字型に縫い合わせる形成外科の代表的処置を行った。

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このV-Y advancementは形成外科領域で、皮膚欠損部を被覆する有茎皮弁移植法としては最も有名な方法だが、悪性皮膚腫瘍の少ない日本では遭遇する機会が少なく、こういった症例を見学出来るのがわざわざ米国まで足を運んだ理由である。

 

本見学のまとめ

今回の米国手術見学では

1腹部除脂術

2男性に生じた女性化乳房改善術

3鼻翼横に生じた基底細胞癌根治術

の3件の治療に立ち会った。

 

日本での日常診療では同様の治療に対処することが多く、ともすると形成外科・開業医としての仕事がマンネリ化しやすいと言われるが、今回の見学で普段遭遇することのない症例を経験し、大変良い刺激となったが、この貴重な経験を今後の診療に役立ててゆこうと思う。

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僕自身の開業経験から学んだことだが、開業医は新規開業当初から少なくとも5年間、借財、リース返済に追われる。借財があるとクリニックの安定経営の障壁となるため、開業医はそれを一刻も早く返済してしまいたいと思う。そうなると、どうしても売り上げ優先の診療に傾きざるを得ない。


だが日々の努力と辛抱を重ねているうちに、次第に返済が軽減し、最終的に無借金経営が可能となる。この時点でようやく、心底患者さん優先の治療のための準備が整う。したがって新規開業クリニックにとって、開業当初の5~6年の荒波を乗り越えることが、適正医療施設として合格ラインに達する必須条件といえるであろう。


つい最近まで、美容医療を実践する医師が少なく需要過多の時期は、一人の医師が様々な部位の治療をこなさざるを得なかった。だが美容医療の進歩とともに、対象となる治療技術は日を追うごとに細分化されている。それに伴い医師能力も、何を専門としているか、そしてこなした症例数によって大きな差が出るようになった。


僕の場合も同様で、勤務医時代は眼周囲治療同様、数多くの鼻症例を手がけていた。だが眼周囲治療を専門にして開業したので、当クリニックの顧客の約8割が眼周囲治療を求めてやってくるようになった。すなわち僕が自らの専門を選択したというより、ユーザーのニーズによって僕の専門が決まったといっても過言ではない。つまり、医師が患者さんを選択する時代は過去の話で、ユーザーが吟味を重ねて医師を選ぶ時代へと変わったのだ


美に対する我々の価値観は、時代の変遷とともにより洗練され、それに伴い美容医療のニーズも変化している。例えば、従来まで美容外科で一般的であったシリコン・インプラントを用いた豊胸や隆鼻術も、人工物への違和感を嫌い現在は激減した。それに代わって脂肪などの自家組織や、再生医療を用いた治療が主流になりつつある。


前回述べたように、美容医療は景気の停滞、人口減少、この医療の供給過多により、今後は生き残りをかけた、いわゆる"サバイバル"時代に突入するだろう。またインターネットをはじめとする情報産業の隆盛により、肥えたユーザーの目が効果的な治療を適切価格で提供する施設のみを選別するようになるだろう。


我々のコンプレックスを解消し、夢や生きる希望を与える美容医療は、激動の時代の後も必ず残るであろう。我々この医療に携わる者は、患者さんの笑顔を目標に、普通の感覚でこの医療を実践することを目指すべきでり、それが美容医療のあるべき姿と僕は信じている。この医療が目立つことなく、粛々と信頼と実績を重ね、社会に根を下ろすことを願ってやまない。


銀座CUVOクリニック公式サイト


P1000407リー医師の診療コンセプト

日本のクリニックは、一般的に待合室など患者さんがくつろぐスペースは小さく、クリニックに来るお客さんは治療のみを目的としており、目的を果てすとすぐにクリニックを去ってしまう。しかし、人間は感情を持ちあせた、大変に繊細な生物なので、本当はクリニックのような場所にも人間同士のコミュニケーションを求めている。そういった余裕がクリニック側にあると、安定した経営が成り立つのに貢献するのではないかと感じた。

リー医師のクリニックで唯一気になったのが、いわゆる”診察室”がないことだった。ではどのように診察をするのだろう?なんと彼は、治療室や待合室に出向いてはその場所で患者さんの診察をしていた。日本ではプライバシー尊重の優先順位が高いので、診察室以外でその都度診察するやり方は受け入れらないかもしれない。

だが、ここにもリー医師の診療コンセプトが現れている。つまり、医師-患者間に壁を作らず、良好なコミュニケーションを第一優先としているのだ。実際、患者さんは、まるで古くからの友人のように振る舞い、彼は患者さんの手をとりなが、一緒に治療室に向かうほど良好な信頼関係が築かれていた。医師-患者間の大きな壁を取り払う意味では、こういうやり方大変参考になった。

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韓国と日本の美意識の違い

最近、韓国でも経済状態が停滞し、クリニックの景気もかつてに比べると静かになったという。しかし、そこは漢南の有名クリニックだけあって、患者さんは次第に集まり、昼過ぎまでに6~7人の患者さんをこなしていた。午後からは目の上下たるみ取り、顔面脂肪注入、スレッドリフト(糸で引っ張るフェイスリフト)などの手術が3件ほど入り、午後8時近くまでクリニックは大盛況であった。

彼のクリニックで行われている治療内容も、僕のクリニックとほぼ同様であるが、韓国と日本で根本的に異なる点があるが、それは美意識の違いとでも言えばよいのだろうか。その違いを顔面治療を例に挙げて説明すると、日本では小顔治療、つまり、顔からボリュームを減らして、少しでも華奢に見える顔が綺麗とされる。だが韓国では鼻を高くすることはもちろん、脂肪や場合によってはゴアテックスなどの人工材料を用いて、頬や額などにボリューム感を持たせ、華奢よりもむしろ大作りな顔の方が好まれるのだ。

また、リー医師のクリニックでは無痛で治療を行うため、すべての患者さんは静脈麻酔下で無意識のうちに治療を終えていた。これもリー医師が心臓外科医として麻酔操作にたけているメリットを生かし、患者さん優位の治療を行う姿勢がうかがえた。

午後3時過ぎには本格的な手術を終え、昼食を食べにリー医師と外出した。江南地区は新しく開発された地域であるため、街が新しく主に若者たち中心の、東京で言えば、表参道のようなファッショナブルな街である。この地区での美容外科の数は数え切れないほどあるらしく、表通りにある大きなビルには必ず1,2件の美容系クリニックが入居しているほどだった。

P1000313学会に参加する本当の価値

日本ではこのような医師の集いがあっても、ややもすればお互いの腹の探り合いになりやすい。だが、韓国では先輩、後輩の主従関係が明確で、たとえ競合関係があろうともこういった集いではまるで休戦協定を結んだかのようにお互い仲良く交流を図っている。こういった人間関係の基盤がしっかりしているのは、韓国では医師といえども徴兵制という、国家のための忠誠心を誓い合う仲間意識があるからなのだろうか。

僕が午後11時過ぎに宴会場に到着するやいなや、祝杯が酌み交わされたが、その盛り上がり方は日本では出来ない貴重な経験となった。もちろん学会参加の目的は、美容医療の最新の知見を得えることだが、違う国の医師たちと友情を深めることが同様に大切だなのだ。知識や技術は教科書や手術手技ビデオ等から得られるが、人間は感情を持っているので、本当に大切なことは友情を基盤とした人間関係から得られることが少なくない。

翌日の学会に備え宴会は午前12時過ぎに終了した。翌朝8時半に起床し、学会場に向かうと、そこは多くの参加者で溢れていた。海外から招待されたのは米国から1人の医師と、日本から僕を含め2人だったので、我々以外の発表はすべて韓国語でなされた。お隣の国と言えども言葉の壁は厚く 学会で何が議論されているかは、スライドを見て想像する以外ない。

リー医師のクリニック

僕は自分の発表を無難にこなし、夕方6時に学会は盛況のうちに終了した。今回、僕が韓国を訪れたもう一つの目的は、韓国美容外科学会の将来を担うリー医師のクリニックを見学することであった。リー医師は韓国の南部光州市出身、40代後半の新進気鋭の美容外科医である。だが、光州でリー医師が学生だった頃、当時の朴大統領を暗殺した軍事政権と学生が対立し、暴動が勃発し、市民に多くの犠牲者が出た。

リー医師はその真っ直中で、韓国の悲劇の歴史を経験している。その後彼は心臓外科医として8年間の研鑽を積んだ後、美容外科医に転身した。現在はソウル、漢南の一等地で美容外科クリニックを開業して13年目のベテランである。親分肌のリー医師は情に深く、彼が韓国美容外科学会を統率していると言っても過言ではない。そんな影の実力者であるリー医師のクリニック見学は大変興味深かいものになった。

クリニック内の広さは50坪程度であったが、目を見張ったのは待合室の造りであった。なんとクリニック全体の4分の1程度のスペースを待合室としており、少なくとも10人以上がゆったりと時間を過ごせるようになっている。そこはまるで喫茶店のような空間で、しばしば訪れる患者さんたちは思い思いにお茶を飲んだり、友人たちと雑談をしていた。リー医師に直接その理由を尋ねた訳ではないが、それは患者さんをリラックスさせるための空間を惜しまない彼の演出なのだ。その結果、患者さんがリピーター化したり、紹介患者さんが増えたりと集客につながり、決してその空間が無駄に広いわけではないと察することが出来た。

P10003854月初旬、韓国美容外科学会での講演を頼まれ、ソウルに向かうことになった。土曜日の診療を終えた後、羽田発午後7時20分発ソウル行き便に搭乗するため、午後5時過ぎにクリニックを出発した。通常、国際線は2時間前に空港到着するべきだが、羽田空港発なので、一時間半前に到着すればよいと高を括った。だが、浜松町に到着しても誰も人がおらず、”おやっ”と思った。

事情を駅員さんに尋ねると、羽田空港国際線ターミナル新設工事に伴うモノレール線引き込み工事で、その日は全線不通とのこと。突如慌てたが、すかさず京浜急行線に乗り換え、駆け足で空港に向かった。空港に到着すると、すでに出発時刻1時間を切っていたが、搭乗にはなんとか間に合った。

韓国と日本には時差がないので、2時間余りのフライトを終え、午後9時過ぎに金浦空港に到着し、そのままタクシーでソウル新興地、江南に向かった。タクシーの運転手さんは僕が日本人とすぐに察して、流ちょうな日本語で活気よく話しかけてきた。一般的に言って、韓国人が日本人より元気があって気さくなのは、キムチなど健康的な食べ物と、もともと楽観的な韓国人の国民性なのだろうか。毎回、韓国を訪れるたびに感じる韓国人に対する僕の第一印象である。

土曜日の午後10時近くになっても、ソウル市街に向かうハンガン川沿いの3車線道路はいつものように大渋滞で、なかなか車が進まない。暇にまかせて周囲の車種を見ていると、ほとんど韓国製の車ばかりだ。ついこの間まで、車や電化製品で世界を席巻していた日本技術の時代は終焉を迎え、韓国や中国などの新興国製品がそれに変わろうとしている。東京の街並みにもかつてはソニーやパナソニックの広告が目白押しだったが、現在はサムソンやLGなど韓国企業の広告のほうをよく見かけるようになった。

第二次世界大戦後の高度経済成長時代から現在まで、日本は物作り経済を中心に世界の大量消費社会に支えられ、高度経済成長を遂げた。だが21世紀に入り、先進国の人々は、ほぼ欲しいものを手中にし、過去のような物質に対する執着が消えつつある。もちろん、発展途上国では未だに必要な生活必需品が多くあるだろうが、これらの供給はインド、中国、韓国などの新興国が日本に代わり行うようになった。

そんなことを考えながら、渋滞に巻き込まれた江南までのタクシー道中を過ごした。学会に参加する医師たちのと懇親会場にたどり着いたのは午後11時を過ぎていた。タクシーを降車すると、4月上旬といえどもソウルの夜は東京以上に冷え込んでいた。だが、宴会は土曜日夜に催されたせいか、大変盛況だった。

ご存じの通り、韓国美容外科の需要供給は日本のそれと比べものにならない。それは国民性の相違によると思われるが、韓国人はより、はっきりとした結果を求め、そのためには多少侵襲が大きくなろうともいとわない。それに比べて日本人は可能な限り低侵襲な治療、そして自然な結果を求める。僕が美容医療のためにしばしば韓国を訪れる理由は、大胆かつはっきりとした結果が得られる韓国の治療手技を知ることで、繊細かつ、自然な結果が得られる、より洗練された手技を体得することに他ならない。

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