2025年2月1日
後を絶たない米国銃犯罪-2
以前このシリーズでは米国で銃規制が一向に進まないのは何故か?について踏み込み、そこには米国ならでは事情、つまり広大な土地に暮らす人々が警察などに頼らずに犯罪・暴力から身を守る為の”自警”手段が必要で、特にカラダの小さい人や男性より体力的に劣る女性たちにこういった地域での銃武装が欠かせないこと、更にこの銃武装を支持するNRA(全米ライフル協会)が最強ロビー団体として政治サポートするので、政治家達もむやみやたらに銃規制強化を出来ない事情にも触れましたが、今回はそんな銃を好むと好まざるに関わらず許容される米国で最近起きた悲惨な事件について述べたいと思います。
この事件は2024年3月米国南部ミシシッピー州で、なんと14歳の少女が自らの母親を彼女の自宅で、この母が護身用にベッドマットレス下に隠していた拳銃を持ち出し、母の顔面に3発撃ち込んで殺害し、その後少女は母親の携帯電話で母のフリをして義理の父に連絡した後、今度は義理の父が自宅に戻ってくるのを待ち伏せし、彼が戻った際拳銃で撃ち、不幸中の幸いにもその弾丸は義理の父の肩を撃ち抜いたものの、命に別状は無かったという戦慄的な事件が起きたのです。。
当然少女は逮捕され昨年9月に裁判が開かれましたが、米国では本格的裁判とその前に行われる”司法取引”で被告(少女)に検察側が妥協・折衷案の提示されますが、本件でも懲役40年、しかも場合によっては(少女が品行方正に刑期を務めれば)早期仮釈放も付いた、ある意味好条件の司法取引が提示されたにも関わらず、この少女は裁判での真っ向勝負を挑み、つまり裁判で勝てば無罪、負けると有罪、しかも”仮釈放無しの無期懲役(生涯檻の中で暮らす)”となる多大なリスクを背負ったのです。
日本での未成年犯罪事件発生した場合、少なくとも名前は匿名、しかも大人と異なる法律で裁かれますが、上記の如く米国では”司法取引”の際は未成年事件としてそれなりに情状酌量された条件が提示されますが、もしそれを拒めば大人同様の法律で裁かれるので極めて厳しい判決を受けるに至る可能性が高く、結局裁判の結果、この少女は”仮釈放無しの無期懲役刑となり、仮に判決不服にて控訴審を望んでも何か新たな重大証拠でも出てきない限り判決を覆すのは無理なので、まだ始まったばかりの人生ですが、彼女は一生檻の中で暮すことが決定したのです。。
この少女は8歳ころからメンタル疾患を患い自傷行為を繰り返したり、幻覚・幻聴を認め投薬治療を受けていたことから、少女の弁護士は本殺人事件が統合失調症が原因で、無罪を訴えましたが、検察側は自宅内・セキュリティー・ビデオに映し出された少女の犯行前後の様子に一貫性があり、母親の携帯から義理の父に連絡したこと、母親殺害後にセキュリティー・ビデオに映らぬよう、そのビデオ・カメラを取り外す証拠隠滅を図ったことを理由に、彼女は正気のまま計画的殺人を行ったので有罪を求め、被告・検察双方の訴え十分に吟味した陪審員たちはこの少女を有罪とする評決に至ったようです。。
僕が陪審だったとしても、この少女を有罪にせざるを得ない事件だったとは思いますが、彼女が精神疾患を患っていたことに間違いなく、検察が訴えるような正気の沙汰の事件とは決して考えられず、彼女を生涯刑期に服させるよりも先に、彼女のメンタル疾患をしっかり治療して、もう一度彼女にチャンス(更生の機会)を与えるべきと判断しますが、米国では、被告が年齢(14歳)やメンタル疾患でも容赦無い厳罰が与えられることにこの国の厳しさを感じます。。
このシリーズでは米国銃犯罪の話題をし、その後半(今回)は銃を用いた未成年少女の殺人事件に焦点を当てましたが、最後に、もしこの少女の自宅で母親が拳銃を所持していなければこの犯罪は起きなかったのでは?と思うと、この少女も米国銃犯罪の犠牲者の1人だったとの見方も出来る訳で、実はこの少女の学業は目を見張るほど優秀だったらしいので、そういった才能ある若者が銃の存在にて、ティーンエイジャー特有のメンタル不安定、衝動的怒りが引き金となって、いとも簡単に銃にて人命を奪える環境下にあるのは米国の大きな不幸の一つと僕は考えます。。