目の下のクマ(くま)、たるみに対する結膜面アプローチによる下眼瞼形成術の治療成績-1

2011年12月17日

我々は老眼の発症をもって、老いを感じざる得なくなことが一般的である。老化現象として視力が衰えると同様に、外見上の老化も眼周囲に初発することが一般的である。東洋人の場合、寒さから眼球を保護するために、眼周囲に厚い脂肪組織が覆っていると報告されている(1)。眼周囲脂肪は加齢とともに、その容量や位置(ポジショニング)が変化するため、この現象により若年時代とは違った外見上の変化、すなわち老いの兆候が目元に出現し始める。

 

眼窩周囲脂肪は上眼瞼脂肪と下眼瞼脂肪から構成される。上眼瞼脂肪は加齢ともに縮小すると言われるが、下眼瞼脂肪は必ずしも加齢とともに萎縮せず、むしろ膨張する場合が多い。下眼瞼脂肪の膨隆は、いかにも下眼瞼皮膚が下垂したかの如く、典型的な外見上の老化兆候として認識され、この症状はいわゆる"目の下のたるみ"として客観的にも明らかとなる。

 

これらの原因は、高密度組織である眼球組織の荷重と、下眼瞼支持組織であるLockwood suspension ligament や下眼瞼皮膚、眼輪筋、眼窩隔膜等の加齢に伴う弛緩が原因とされる(2)。すなわちこれらの複合的要因により、下眼瞼脂肪がヘルニア状態となり、下眼瞼皮膚前部方向に逸脱することで目の下のたるみを形成し、この状態が不可逆的となる。

 

さらに東洋人の場合、下眼瞼組織構造の不具合によって、下眼瞼皮膚色素や影を強調させる、いわゆる"目の下のクマ(くま)"症状が発症することがある。目の下のクマ(くま)は必ずしも加齢に伴う下眼瞼脂肪の前方突出がその直接原因ではないため、比較的若年層から発症することが少なくない。この症状はLockwood suspension ligament 等の下眼瞼支持組織が皮膚を下垂位に固着させていることがその主な原因であるため、これらの支持組織を解離し、皮膚を挙上させることで、目の下のクマ(くま)症状を大幅に解消することが可能である。

 

当クリニックにおいて2007年4月1日から2008年3月31日までの1年間に、目の下のクマ(くま)、たるみに対して行った1044名(女性936名、男性108名、平均年齢、41.2歳、範囲19−75歳、標準偏差9.88) の下眼瞼形成術について、統計的分析を用いた上で、その治療成績を検証する。

 

key word: 下眼瞼脂肪 目の下のたるみ 目の下のクマ(くま)Lockwood suspension ligament 眼窩隔膜 elective surgery

 

はじめに:

外傷や疾病治療、疼痛緩和、そして救急処置を目的に行う一般医療の場合、時としてその治療は一刻を争うものであり、救命最優先にして必要な処置を選択せねばならない。例えば急性発症心筋梗塞にて手術しか救命の方法がない場合、直ちに開胸手技を行わねばならず、手術後に大きく残存する傷跡について論議する余地はない。だが美容外科治療は、こういった救命最優先とする一般医療と異なり、いわゆる"elective surgery(随意意志による手術)であるため、安全、確実、早期回復が保証されるなければならない。

 

従来、わが国における目の下のクマ(くま)、たるみ手術は、下眼瞼眉毛直下皮膚切開を用いて行うことが一般的であった。その理由は、これの症状の責任が下眼瞼脂肪や下眼瞼構造の不具合よりも、むしろ皮膚自体にあると認識されてきたからである。また下眼瞼形成術を行う際、皮膚切開アプローチの方が結膜面アプローチよりも手技的に容易なことも、皮膚切開プローチが従来まで主流であったもう一つの要因でもある(3,4,5)。

 

だが臨床の場で、目の下のクマ(くま)、たるみ治療を希望する患者に下眼瞼皮膚切開法を勧めても、大半の人が傷跡などの後遺症発生の可能性を危惧し、治療をためらうことが少なくない。その理由は先述の如く美容外科手術は救命を伴わない、いわゆる"elective surgery(随意意志による手術)であるため、患者たちは後遺症の発症する可能性のある手技を本能的に回避するからであろう。

 

 

 

当クリニックでは、原則的にすべての下眼瞼形成術に結膜面からのアプローチを行い、ほぼ良好な結果を得ることに成功した。またこの手法が認知されるにつれ、治療を求める顧客はFig-1の如く全国から当クリニックに訪れるようになった。

 

 

この事実は、当クリニックの皮膚切開法を用いない治療が普及するまで、下眼瞼皮膚切開法のみしか目の下の(クマ)、たるみを改善する手段がなく、治療をためらっていた患者さんたちがいかに多数いたかを示すことになった。以下にこの手法の結果について統計学的手法を含めた分析を行い、その有効性を示す。

 

Fig-1

論文fig-1

 

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