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新たに始まった美容医療・広告規制について

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我が国では西暦2,000年(ミレニアム)が幕を開けてから、美容医療が盛んに行われるようになり、次第にその社会的認知度が増し成熟期を迎え始めている。その成熟とともに多くの医師達がこの医療に参入し、過当競争による集客のための宣伝が激化し、社会問題化し始めている。そこで今回僕は美容医療にまつわる広告とその問題、そして今後の展望について見解を述べたいと思う。

先ず始めに国民皆保険で行われる一般医療は、患者側負担は3割、残りの医療費は税金でまかなわれるので、患者たちは利便性や評判の良いクリニックを聞きつけてそこを受診することが多い。そして一般医療の集客見込みは、クリニック所在地範囲内の人口や、その範囲内に競合他院が何店舗あるのかなど、いわゆる”診療圏調査”を行うと、ビジネスとして成立するかどうか開業前にほぼ予想がつくであろう。したがって一般医療系の開業は、クリニック認知度アップのための駅前看板や、簡単な新聞折り込み広告程度で十分といわれる。

 

一方、美容医療は自由診療下で行われるため治療費は全額患者負担となり、患者は医療を受けるというよりも、むしろ高級品等を購入する感覚に似ている。美容医療は一般医療のような診療圏調査はほぼ不可能であり、そのクリニックがビジネスとして成立するかどうかはいざ始めてみなければ分からないハイリスク・ビジネスでもある。

 

次に、医療ビジネスにおける宣伝・広告について分析すると、その手法は2種類に大別される。上述の如く一般医療がクリニック存在を周囲に知らしめ、クリニック価値(ブランド・イメージ)を高める宣伝方法はPR(Public Relation、広報活動)と呼ばる。一方、美容外科のように自由診療下で、クリニックに患者を呼び込むための具体的広告はSP(Sales Promotion、販売促進)と呼ばれる。

 

そして一般医療で用いられるPR広告は看板・紙面媒体を主に用いるが、美容医療で有用なSP広告は、ほぼネット媒体を用いると言ってよい。ネット媒体は美容医療のように守秘性の高いものとの相性が良く、その理由はこの医療に関心あるユーザーは、”検索サイト”にキーワードを入力することで、自分のニーズにマッチした情報をピンポイントで誰にも知られずに入手出来るからである。

美容医療・提供側からすると、ネット上に治療の興味をそそる情報を上手に提示すれば、即座に顧客誘導可能となり、この方法は紙媒体・マスコミ宣伝の如く、この医療に無関心な人にまで伝える非効率な宣伝よりも遥かに効率的である。そのため今や美容医療系のほとんど全てのクリニックが、こぞってネット宣伝に邁進するようになった。

 

ネット広告は医療提供者がホームページ・広告ページを作成し、その内容をユーザーたちはキーワード検索で閲覧するが、その内容は新聞・雑誌など不特定多数の人々に露出する紙面媒体と異なり、ネット検索する人のみが得られる情報なので、ネット広告は紙面媒体のような広告宣伝とはこれまで見なされてこなかった。

 

医療系・広告宣伝は厚生労働省によるガイドラインで規正されているが、上述の如くネット情報は広告宣伝と見なされなかったので、故意に顧客誘導するような情報も規正なしにネット上に放置されていた。そこには、業界ナンバーワン、芸能人御用達クリニック、永久保証などの誇大広告や、いわゆる”ビフォー・アフター”と呼ばれる治療前後の比較写真が縦横無尽に掲載されている。

 

故意に顧客誘導する不正な手法としては、治療前(ビフォー)写真を故意に老けた状態で撮影し、逆に治療後(アフター)写真は化粧・照明を巧みに用いて魅力的に撮影することで、ビフォー・アフターに極端な差異が出るようにしたり、さらに悪質な場合は治療後の写真をフォトショップと呼ばれる写真調整ソフトで改善してからネット掲載する例もあるという。

 

このような誇大・偽装広告にそそのかされ実際に治療に踏み切ったものの、得られた結果が広告に掲載されたものと大幅に差があってトラブルになったケースがある。さらに、広告掲載された格安料金に惹かれ、クリニックを訪れたものの、実際の治療費は麻酔代や薬代などが次々と加算(トッピング)され、広告掲載料金とは遙かに高額であったなどのトラブルが後を絶たない。

 

こういったトラブルやクレームは患者側から消費者生活センターに報告されるが、その件数が年々増加し、ここ最近厚生労働省が美容外科ホームページの広告指導に踏み切ったのである。厚生労働省の広告規制の詳細は、厚生労働省・ホームページに記載されているのでここでは割愛するが、上記に例の如く患者をその気にさせるキャッチコピー、誇大広告、修飾されたビフォー・アフター写真など、虚偽の広告ホームページ掲載を原則的に禁止するものである。

 

実は僕のクリニックも開業当初、ホームページの露出を意図的に上げるネット戦略を盛んに行い、その成果もあり開業当初から十分な集客が得られた結果、クリニック経営が早期に安定したので、正直ネット広告には大変感謝している。

 

僕が行ってきたネット広告戦略の経験を振り返えり、ネット広告を”焚き火”に例えて説明すれば、ネット広告は焚き火の炎(集客)のための着火剤であり、それは全く燃えていない状態(集客ゼロ)からメラメラと炎(集客)を上げるのに、とても効果的なSP(Sales Promotion、販売促進)である。

 

”焚き火”(集客)は一度火が付く(クリニックが認知される)と、あとは自然に燃え続ける(集客が継続される)ので、着火剤(SP広告)は必要ないはずで、あとはに”焚き火”(集客)に時折薪をくべ(PR広告す)ればよいだけだ。

 

勿論、”焚き火”(集客)の火の勢いを強くする(患者を増やす)にはさらに着火剤(SP広告)や薪(PR広告)をくべる必要があるが、そもそも医療は収益最優先に行うべきでなく、特に自由診療で行う美容外科医療では、もし広告せずに安定集客が得られたならば、それは大成功と謙虚に受け止め、収益アップよりも遥かに重要であるハイ・クオリティな医療提供に邁進すべきである。

 

近年の日本社会は少子高齢化に伴う急激な国民健康医療費の増加が財政を圧迫し続けているが、その対策として医療費の患者負担額アップのみならず、保険診療点数の軽減、すなわち医療提供側の収益減少を強いるようになった。その結果国民皆保険下で行われる一般医療に見切りをつけ、美容外科など自由診療に新たな活路を見出し、新規参入する医師達が年々増え続けているという。

 

勿論、そういった新規参入医師たちが、自ら開業したクリニックの認知度を短時間で高め、早期に軌道に乗せるにはネット広告が必要不可欠であろう。だが軌道に乗った後は、出来れば広告宣伝は控え目とし、誰しもが公平で適正な医療が受けられる健全な医療環境が形成できるよう努めるべきでる。

 

そしてこの医療に従事する1人1人の医師達が、そういった謙虚な態度で日々診療努力を継続することがこの業界全体の社会的評価を高め、それが巡り巡って患者も医師共々、皆が感謝と幸せに満ちあふれた健全医療を可能にするであろうと僕は強く信じている。

 

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