GINZA CUVO

2016年5月アーカイブ

医学部卒後あっという間に25年近くが経過し、すでに僕は医師として中堅からベテランの域に達していた。それを痛感したのは数年前出身大学の同窓会に出席した際、ついこないだまでお互い若い医学生だった同級生たちがすでに役職を得た経験豊富な医師となり、今や後進指導に当たる立場である姿を垣間見た時だった。

 

東京・銀座で開業した僕は最初こそこの地を”アゥエー”と感じたが、10年以上も診療を続けているうちに今やこの地を”ホーム”と思えるようになった。銀座は美容診療を行う医師たちには魅力溢れる場所らしく、現在も新規開業が後を絶たない。僕はそういった新規開業を傍観しながら、医師のキャリア確立について考えてみた。

 

医師のキャリア選択第一ステップとして、医学部卒後に以下の2通りの選択肢がある。

1.医学系大学院へ進学し基礎研究を目指す。

2.卒後直ちに臨床医学研修を行い臨床医を目指す。

 

1を選択すると臨床医ではなく基礎医学研究者としてのキャリア選択なので、その延長線上には医学系大学の教授職や、医学系研究所等での研究者としての地位が待っている。2を選択すると臨床研修後、自ら選択した専門分野で一人前の診療が出来るようになると、将来は大学病院を含めた基幹病院での勤務医か、もしくは独立開業医の道を選択することになるだろう。

 

僕を例に挙げるとそのキャリア確立は非典型的で、まず最初に1を選択し、その後2にコース変更した。その理由は僕が医学部卒後、いわゆる”モラトリアム”と呼ばれる学生時代のような責任のない立場継続を求め、社会人となるのを先延ばししようとした。すなわち学生生活の延長をもくろんだため、さほど基礎研究に興味があった訳でもないのに敢えて大学院へ進学したのだ。

 

その4年間の大学院生活で基礎研究を行い、曲がりなりにも医学博士号を獲得し、大学院卒業の際担当教授に頂いたコメントは”あなはた基礎研究には向いていません。これから臨床医を目指すべきでしょう。。”だった。僕自身”まさにその通り”だと確信したので大学院卒後、出遅れたものの臨床医の道を目指すべく上記2へ進路変更したのだ。

 

その後僕は整形外科・形成外科研修を8年間行った後、開業し現在に至っている。今振り返ると僕の医師キャリア確立は基礎研究から始め、その後臨床医学研修まで幅広く網羅したので、結果的に自らの適性をしっかりと確認出来たと思っている。僕の選択した経過は紆余曲折がありキャリア確立まで長い時間が必要だったが、現在の外科開業医の立場を天職だと感じているので結果的にこのキャリア確立法は正解だったと思っている。

 

古くからのことわざで”急がば回れ”とあるが、一般職種と違い決まった定年退職時期もなく、能力さえあればいつまでも働ける医師であれば、キャリア確立までのスピード(短時間)を最優先にする必要はさほどない。医師キャリア確立のプロセス(経過)はオセロゲームを例に挙げるとわかりやすいが、それはこのゲームの勝敗のつきかたの特徴にある。

 

オセロゲームはゲーム途中の相手の持ち石色数が多く、その経過で形勢不利に見えてもゲーム後半でゲーム盤の四つ角を確保すれば相手の石色を一気に自分の色に変えることが出来る。すなわち”急がば回れ”のことわざにあるように、このゲームでは勝利へのポイントをしっかり抑えさえる動きさえすれば、ゲーム中ずっと形勢不利に見えてもゲーム最終局面で一気に勝利へ導けるのである。

 

開業医は開業当初負債を抱えており、その返済のため収益優先で診療を行う傾向があり、それはオセロゲームにたとえるとゲーム開始時に出来るだけ自分の石色を増やそうとする誤った努力に似ている。そのような開業当初から儲け主義的なやり方をしていると、賢明なお客様たちは医療の原点から外れたその誤った方針を見事に見極めるので次第に客離れが進み、安定経営(成功)が遠のいてゆく。

 

逆にオセロゲームの如くゲーム開始(開業)時なかな持ち石の色(売り上げ)が少なくても、ゲーム盤の4つ角を抑えるように医療の原点、すなわちお客様のメリット(恩恵)最優先に着実にやってゆけば、勝利(開業の成功=安定経営)は後から必ずついてくるはずである。そんなことをこの春銀座で僕と同業で続く開業ラッシュを見ながらふと思った。。

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