GINZA CUVO

2015年4月アーカイブ

春のこの時期、僕はいつも今から10年前の開業当初の同時期をまるで昨日の事のように想い出す。桜やさまざまな花が咲き誇る新緑の暖かい日、僕がクリニックを開いた銀座には大勢の人たちが所狭しといたにもかかわらず、お客さんは誰一人訪れず、不安と共に幕開けた開業だった。

 

当時美容外科はほとんど専門化されておらず、どのクリニックもすべての治療に対応するのが常だった。そして銀座にはすでに有り余るほどの美容系クリニックが存在しており、僕のような新規参入組が太刀打ちしても勝算があるとはとても思えなかった。

 

実際、この業界の先輩医師に銀座開業を相談したところ、”それは自殺行為に近い”と否定的なコメントしか得られなかった。そのとき閃いたのは僕が銀座で生き残るには、他クリニックが行っていないニッチ(隙間)で勝負すること、すなわちそれは当時は誰も提唱していなかった目元専門クリニックの立ち上げだった。

 

だが当時ニッチ勝負をしたクリニック成功事例が見当たらず、それは一か八かの賭けでもあったが、成功確率としてはこの戦略で勝負するのが最も高いと判断して思い切って踏み出したのだ。

今振り返るとよくぞ思い切ったものだと我ながら感心しているが、それはその頃ITビジネスですでに成功していた友人の、”たとえ上手くいかなくても命を取られるわけではないのだから、チャレンジすべき”の一言が僕の背中を強く押した。

 

そして僕のクリニックも現在までやってこれたことから察すると、この戦略は的を得ていたと言って良いだろう。今回僕は開業当時の様子を簡単に振り返ってみたが、上記文章中には”勝負”、”戦略”、”勝ち目”、”一か八か”などの単語を頻用している。それは開業がまるで戦争の如く生きるか死ぬか(存続出来るか消滅するか)の状況に近かったからに他ならない。

 

先日クリニック労務・人事を任せている社会保険労務士と会食をした際、以上に述べた僕の開業当初の苦労話をした。するとこの労務士さん、僕が選択したのは”ランチェスターの法則”と呼ばれる

戦略だと説明してくれた。”ランチェスターの法則”とは1914年に英国のフレデリック・ランチェスターが唱えた戦闘・数理モデルで、現在はビジネス戦略に応用されているらしい。

 

その具体的内容は戦争やビジネスで弱者が有利に戦うに際、ニッチ(隙間)で勝負するしかない。すなわ弱者のとるべき戦略は差別化戦略で、敵より性能のよい武器(技術)を持ち、狭い戦場(専門化された分野)で、一対一で戦い、接近戦を行い(一人一人と向き合って治療を行い)、力を一点に集中させることらしい。

 

そして労務士さんは僕に向かって”先生が開業当初選んだのがまさにランチェスターの法則で、銀座での一人開業のビジネスモデルとして大変有効な戦略だったはずです”と。”ランチェスターの法則”のおかげで生き残れた僕の次の目標はクリニックの長期的安定維持だが、それはより確実で安全な医療を継続することで得られるはずだ。安全チェック機構のさらなる補強、そして医療レベルアップに欠かせない従業員教育の徹底も図ってゆこうと思う。

 

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