GINZA CUVO

2012年9月アーカイブ

美容医療のように治療情報がクローズ(秘密)になりがちな医療では、一般医療と異なり、いわゆる"口コミ"で情報が廻りにくい。そこで効率的な集客を図るのに、どのクリニックもこぞってインターネット広告に依存せざるを得ないのが先述したトラブル等の根源である。


また人気のある治療は、多数のクリニックが同なじ内容のインターネット広告に群がるので、必然的に広告競争が激化する。中には生き残るため、インターネットの匿名性を利用し、競合他社の誹謗中傷話をでっち上げたあげく、それを掲示板等に掲載し、集客の妨害をするような悪質な施設もあると聞く。


そういった不安を煽る内容を目にしたお客様は、何を信じて良いかわからなくなり、美容医療に不安を感じ始める。すると美容医療全体が否定され、マーケット(市場)が縮小する。その結果、誹謗中傷を行ったクリニックも、巡り巡って自分の首を絞めるはめに陥る。


僕は今から8年前、当時我が国でどの施設も専門的に行っていなかった、目の裏側からアプローチする下眼瞼形成術の価値を見出した。その理由は、当時勤務していた十仁病院でも下眼瞼のクマ(くま)、たるみ治療のニーズは高かったにもかかわらず、これらの症状を解決する皮膚切開法を勧めると、多くのお客様が治療を躊躇する姿を目の当たりにしたからだ。


そして治療の普及に努力を重ねた結果、予想通りこの治療を待っていたお客様たちが殺到し、一時は治療予約が数ヶ月先まですべて埋まるほど人気を博した。この状況を見た多くの他クリニックもこぞって同様の治療を開始した。こういったクリニックは、集客目的に治療料金を低く設定したり、治療方法を若干変えてみたりと、あの手この手で画策したようだが、どの施設にも一貫した主義主張は僕の知る限り見受けられない。

この8年間、僕自身、それなりに紆余曲折はあったものの、この治療の主幹が米国から学んだ手法であると一貫して信じてきた。そしてこの信念に基づき、多くの症例経験からこの手法に改変を加え、ある時この方法を東洋人向けに完成させたことを僕は確信した。それが事実であることの証として、今でもこの治療を求める多くのお客様たちにお越し頂いている。


僕が下眼瞼治療に情熱を注いできたのは、開業前にこの治療が世間で必要とされるだろうという"閃き"があった。開業してこの治療を行えば、多くの人たちのコンプレックス解消に役立てると思ったからだ。最後に僕が大変残念に思えるのは、そういった"閃きや情熱"もなく、世間の人気治療を真似する施設が沢山あることだ。そういったクリニックの医療行為は所詮、"二番煎じ"に過ぎず、お金儲け優先の診療と見なされても仕方がないであろう。


先日、手術を終えて一息つきながら何気なくメールを見ていると、一通のメールが僕宛に届いていた。それは次のような内容だった。この患者さんは以前から目の下のクマ(くま)に悩んでいた。そこでインターネット検索をして見つけた都内にある某クリニックを受診した。


そしてこの某クリニックで下眼瞼への脂肪注入治療を受けた。治療直後から目の下が腫れぼったく、不自然な目つきになったが、担当医師からしばらく様子を見て欲しいと言われ症状が落ち着くのを待っていた。


それから数ヶ月が経過し症状は治療直後よりは改善したが、彼女のご主人や友人たちから目つきが変わったと指摘された。彼女はこの治療を受けたことが周囲に知られてしまうのでは不安になり、出来ることならすぐにでも僕に元に戻して欲しいとの相談だった。


治療を行った医師の見解は"注入した脂肪はどうすることも出来ないので様子を見るしかない"とのことだった。僕は彼女に"今しばらく様子を見てどうしても気に入らないのであれば、外科的に除去するしか方法はない"と返信したところ、彼女から"安易に治療を受けた自分が愚かだった"と治療を後悔する悲痛な様子の返答があった。


この患者さんは、インターネット広告に掲載された治療前後の症例写真が目に止まり、クリニックを受診し、クリニック・スタッフや医師のいわれるがままに治療を行った結果、思わぬ結果を招いた典型的なケースである。


症例写真などが満載されたインターネット広告は、一見信憑性が高いように見えるが、そこには落とし穴がある。何故なら、治療後写真はあくまで平面(2次元)なので、凹凸が目立ちにくく、実際(3次元)の状態よりも良く見えるからだ。さらにフォトショップ等の写真修正ソフトを用いれば、治療後の写真を修正して実際より良く見せることすら、やろうと思えばいくらでも簡単に出来るのが、現在のコンピューター・テクノロジーなのだ。


このようにインターネットは現実のように見えても現実とは若干異なる、いわゆる"仮想現実(Virtual)"の世界であることを我々は認識しなければいけない。そこに掲載された情報は、正しく見えても手を加えられたものの可能性もあるし、そういった不正は何ら検閲を受けることもないので、堂々と正しいふりをしている。


すなわちインターネットは、でたらめな情報と正しい情報が入り交じった、いわゆる"玉石混淆"の情報手段なのだ。したがって、インターネット広告を盲信することは非常に危険であり、ユーザーはこれをあくまで情報収集のための一つの道具程度と再認識すべきである。


僕に助けを求めた今回のトラブルもインターネット広告を盲信したがために発生したケースだが、こういったトラブルは我々がインターネット盲信を止めない限り、後を絶たないであろう。では何故美容医療でインターネットに依存した広告が用いられるのか次回検討する。

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