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現代医療の矛盾-1

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IMG_0984僕が通常(保険)医療を離れ、自由診療を開始して10年が経過した。10年前の日本では、人口に占める老人の割合、そして国民医療費は現在ほど大きくなかった。だが、時代の変遷とともにこういった指数は次第に増加したため、現在我が国は多大な財政赤字を抱え込むこととなった。

当時、その穴埋めに行われた健康保険負担アップは1割負担から3割負担へとすぐに引き上げられた。この経験を通して僕は、国家予算における医療費の占める割合が激高している現実を知り、このまま健康保険制度の枠組みの中で医療を行うことに危惧を感じた。それと同時に、国民健康保険を用いることなく、自己負担で行う美容医療などの自由診療へ次第に興味を持つようになった。

外科研修を終了した今から10年前、僕は美容外科の老舗、十仁病院の門を叩き、それ以後僕は自由診療主体の診療を展開している。当時、自由診療の世界に足を踏み入れるのは希で、周囲からはアウトロー(無法者)のように思われたので、僕は人目を忍んでこの世界に飛び込んだのを鮮明に覚えている。だが、何故そんな逆境を踏み越えてまで僕はそうしたのか、いくつかの決定的理由があるので、今回はその点について述べたい。

1,患者数の減少:外科研修初期の頃、僕は手術症例の多い個人病院を選択した。個人病院で勤務する上で重要なのは、なんと言っても患者数の確保だった。だが、先述したように国家医療費激増の中、どんなに人気のある医師でも、患者の負担額が増えるにつれ、患者数が減少してゆく現実を見た。つまり、患者数確保に関して、医師の能力以上に国家政策の影響力が強いのでは、自分の仕事の舵取りがままならないことを意味する。それに比べると、自由診療では医師の能力がそのまま患者数に比例するので、その方がやり甲斐があると僕は思った。

2.病気があってこそ成立する医療ビジネス:保健医療に携わっていたころ、僕は薬剤会社さんたちと会食に出かけた。そこで言われた次の一言は今でも忘れない。それは「先生、なんとか風邪患者さんを増やしてくれませんか。このままでは風邪薬の売り上げが目標に達しないのです。」の一言だった。

この一言は現代医療の矛盾点を見事に示している。本来、医療は病気を減らし、我々が健康に生きるために存在するはずだ。だが実際は医療には製薬や医療機器などの収益を得ることを目的としたビジネスが密接に絡んでいる。このように国民が病気に罹患することで収益の上がるビジネスがつきまとう限り、患者さんの利益を最優先とした本当の医療を追求するのは難しいと思った。

現状健康保険制度下では検査項目を増やせば増やすほど、病院、検査会社などの関連ビジネスが儲かる仕組みになっている。例えば五十肩と呼ばれる老化性肩関節炎があるが、これは経験豊富な整形外科医だと、診察のみで十中八九その診断はつく。しかし診察のみの保険点数は低いため、収益が上がらないので、病院側はたとえ診断に不必要なことがわかっていても、血液検査、肩関節造影、MRIなど病院の収益に結びつく検査を行わざるを得ない。

だが最終的にたどりつく診断結果は、結局五十肩というのがほとんどの場合なのだ。このように非効率な医療体制では、今後我が国の医療費は上昇する一方で、我々の貴重な税金から捻出されている。これ以上財政赤字が深刻な状態になれば、明るい将来を脅かすことになりかねず、僕は医師として無意味な医療費の増加に加担しかねないことに疑問を感じはじめていた。

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