GINZA CUVO

2011年5月アーカイブ

[caption id="attachment_437" align="aligncenter" width="491" caption="中国海南島、植物園にて"]中国海南島、植物園にて[/caption] 随分前、僕は北海道のある街で研修医をしていた。その頃、年齢が一回り以上離れた看護学生たちが病院に住み込んで働いていた。彼ら、彼女たちは高校卒業後、准看護師資格を取得するため、朝晩病院に勤務しながら、日中学校で勉強していた。普通であれば勉強そっちのけで恋や遊びに夢中になる高校卒業後間もない若者たちにとって、仕事をしながら勉強するのはとても大変なことだった。

そんな彼ら、彼女たちの学校に、時々整形外科の講義をしに僕はでかけていた。その中の学生に人一倍お転婆な女子学生がいた。彼女は授業中も学校の後、遊びに行くためのお化粧をしているか、さもなければ徹夜で遊んだ疲れのせいか、講義中も居眠りしているかどちらかだった。

真面目に授業を聞く学生よりも、こういったお転婆な学生がより印象に残るのもので、この学生さんの将来がどうなるのか、僕は人ごとながら心配だった。この学生さん、高校でもほとんど勉強していなかったようで、教科書を読ませてもその中の漢字すらまとめに読めなかった。この学生さんは僕の勤務していた病院に住み込みで働いていたが、夜も門限までに戻らず、すぐに病院でも問題児に成り果てた。どうなることかと思いきや、やはり学校で進級できず、落第してしまった。落第がショックだったのか、准看護師になるこをあきらめて結局学校を辞めてしまった。

彼女は典型的な落ちこぼれケースで、一般社会はこういった学生には救いの手を伸ばさず、落第者の烙印を貼ってしまう。だからこのような経歴の人間がまともな就職しようとしても、ほとんど不可能に近い。ではこの女子学生さんは一生社会の落伍者として負け犬の人生を暮らさなければいけないのだろうか?

彼女が病院も学校も辞めてしばらくしてから、風の噂で彼女はいわゆる”夜のお水の仕事”を始めたことを知った。当時の彼女のお酒の飲みっぷりやそのノリからその世界では成功するだろうと想像したが、案の定、彼女はすぐに頭角を現し、いわゆる”ママさん”にまで上り詰めたらしい。

僕が10年前に上京して以来、北海道の仕事仲間たちとの連絡は次第に途絶え、その後彼女がどうなったかは全く知らなかった。だが彼女の学生仲間の一人が最近になって僕に連絡をしてきたので、あの時のおてんば学生さんがその後どうなったかを尋ねた。予想では夜の世界で活躍しているだろうと思った。だが予想と反して、お水の世界からすぐに足を洗って結婚し、一児の母となりながら再度準看護学校に入り直し、准看護師になった。その後彼女はさらに上を目指し、数年前に正看護学校に入学し、この春見事正看護師になったらしい。

漢字も読めなかったはずの彼女は自力で立ち直ったからたいしたものだが、一般的には20代そこそこの経歴で”だめ人間”のレッテルを貼られたが故に、伸び悩んでしまった人間も少なくないはずだ。このように世間は無限の可能性を持つ人間の芽をいとも簡単に摘んでしまう。

我々成長した人間は若者の芽を摘むのではなく、育てる努力を惜しまないことが全うな社会のあり方だと思う。 若い時から出来の良い、いわゆる”お利口さん”を見つけることに躍起しても、そんな人間がいるはずがない。たとえいたとしてもそれは見せかけで、意外に根性がなかったりするものだ。だから僕のクリニックでは学歴不問で、ただガッツのある人間を採用するようにしている。通常の診療のみならず、将来の日本を担う若者たちを育てることも僕に与えられた使命だと思っている。

IMG_0206毎春ソウルで行われる韓国美容外科学会に参加した。大震災の影響で日本から参加する医師は僕を含めて二名たらずだった。僕自身も参加は控えようと思ったが、親しくしている韓国美容外科仲間からの強い勧誘で参加することにした。僕は”目の下のクマ(くま)・たるみ”に対して行う下眼瞼形成術のポイントについて述べたが、立ち見が出るほど盛況な学会場での発表に緊張を隠せなかった。

学会参加の本当の意味は隣国の医師たちと交流を深めること。今回は遠くカザフスタンから若手医師が参加していた。カザフスタンは中国北西内陸部に位置し、かつてはソビエト連邦に所属していたが、現在は人口1500万人ほどの独立国である。カスピ海で得られるチョウザメのキャビア生産地としても有名である。

カザフスタンの美容外科は脂肪吸引や乳房縮小など、体部手術が一般的らしい。この医師はなにやら柄の長いスプーンのような器具を持ち歩いていたので、それが何かを尋ねると、下肢のすねにインプラントを挿入するための皮下剥離器具とのことだった。ロシア系白人たちはすねが細く見劣りがするらしく、すねを太く見せるためのシリコンインプラントを挿入する手術が頻繁に行われるらしい。日本でほとんど行われない下肢に対する美容治療だが、民族や国が異なると治療のニーズも大幅に変わる。

学会は1日のみですべての発表を終了し、夜には食事会が催された。ここからは学会二部とも言える医師たちの交流の場となる。学会では我が国で起きた大震災とその後の原発の話題が出た。ここソウルの電力源も原発が中心らしいが、地盤の安定しているこの土地にはほとんど地震がないらしい。したがって原発への地震対策は全くされておらず、万が一地震が来たとすると、この街も壊滅しかねないとのことだった。今回の大震災により、誰しもが甘く見ていた原発の危険性を再確認することとなった。

IMG_0172ソウル滞在は二泊三日と短期間だったが、僕が多大に影響を受けるのが食習慣の違いである。韓国では依然肉食中心の食習慣が強く、どこで何を食べようと、必ず牛肉や豚肉が次々に出てくる。だが肉食には飽和脂肪酸や、LDLと呼ばれる悪玉コレステロールが多く、これらの食材を過多に摂取すると、いわゆる”メタボリックシンドローム”に陥いりかねない。なんとかキムチやサラダを多く食べて中和するよう心がけているが、楽しい宴会の席で肉食を完全拒否するわけにもゆかず、当惑してしまう。実際こういった食材を普段から積極的に食べている韓国人医師たちは肥満に陥っている場合が少なくない。

最後にまとめになるが、他国に比べて安全と過信していた我が国だが、今回の大震災を通じて原発放射能汚染のように、我々の命を脅かす危険が常に存在していることを知ることになった。これまでのように中国人や韓国人たちとの関係を敬遠してい場合ではない。今こそ 隣国の人々と助け合ういながら明るい将来を目指す時が来ていると思った。

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