GINZA CUVO

2010年7月アーカイブ

"孤高のメス"

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100714_1739~0002街をぶらぶらしていると映画、"孤高のメス"の看板が見えた。テレビのない生活から半年以上経過し、最初こそやや寂しい感じがした。だが最近は逆に余計な雑音の少ない快適な生活をしていたが、このタイトルを見たとき、久しぶりに映画を見ようと思った。

映画と言えば高額な制作費をかけ、エンターテイメント要素の強いハリウッド映画のイメージがあまりにも強く、日本映画はそれに比べて精彩を欠き、これまで足を運ぶことはほとんどなかった。2時間程だったが、臨場感があふれる中身の濃い映画で十分に楽しめた。映画のストーリーは、"医師として一番必要なことは患者さんを救うこと"を再確認できるものだった。

学生気分の抜けないまま医師になった僕の場合、臨床医とならず大学院での研究生活を送っていた。だが学生時代、研究者となる教育を受けたわけではなく、しばらくの間どのように研究すべきが方針が立たず、ただただ途方にくれたことが記憶に新しい。

同僚の研究医たちはプライドがとても高く、"医師は科学者だから研究をしなければだめだ。もし研究が出来なければ、しょうがないから臨床医にでもなればよい。"と言われた。つまり、まるで研究医が臨床医よりも優れているような考え方を信じ込まされ、研究が出来ない僕は常に劣等感にさいなまれた。

この映画の主人公の外科医は教授を目指したりする野望がなく、一臨床医として患者の命を救う使命を貫いていた。そもそも医師は患者の命を救うという大前提の元に教育を受けるが、その後お金や名声欲などの邪念に誘惑されることが少なくない。

そんな邪念にまみれると、映画の中でもあったように医師同士の足の引っ張り合いのような事態が起こりうる。それは男の嫉妬による嫌がらせだが、僕も美容外科医になりたての頃、そういったネガティブな影響を受けた経験があり、男の嫉妬は男女間の嫉妬よりたちが悪いと正直思った。

映画のクライマックスは脳死患者取り扱いに関する医師倫理を問うデリケートな話題だった。だが主人公は自分の医師生命を失いかねない治療でもひるむことなくチャレンジし、その治療を成功に導いた。有資格者である医師はともすると保身を優先的に仕事を行おうとする。だが自分の人生をかけるくらいの勇気を示してこそ、かけがえのない治療をなし得ることをこの映画は教えてくれた。

有能な外科医である主人公は、望めば教授になることもさほど困難ではなかったはずだ。映画のエンディングは主人公がどこかの街の病院で手術をしているシーンでフェイドアウトする。名誉や権力への野望は所詮自分のエゴでしかなくそれほど重要ではない。 患者さんから"ありがとう"と感謝されることにこそ、医師として本当の価値がある。そんなことを感じさせてくれる大変見応えのある映画だった。


銀座CUVOクリニックオフィシャルサイト

P1000410年に一度中国で行われる解剖学実習に参加した。実習地は毎年変わるかが、今年は桂林で行われた。 香港近辺の広州で飛行機を乗り継ぎ、約8時間程の長旅となった。 桂林はベトナムとの国境を接した中国南部、広西チワン族自治区内の人口500万人の都市である。この街を訪れた5月初旬はすでに真夏のような暑さだった。

臨床医となった後に解剖学実習に参加するのは以下の理由による。医師は医学生時代に人体解剖実習を行うが、この時点では外科手術を想定おらず、あくまで人体構造把握が目的に行う。そのため人体構造を暗記するのがやっとであった。だが、臨床医となり外科手術をしていると、手術アプローチの点からもう一度解剖を行い、神経、血管走行などを再確認したいと感じるようになった。

P1000469解剖実習前日には観光を行い、桂林に来た誰しもが経験するといわれる川下りに行った。 この土地は今から3億年以上前海底にあり、長い年月を経て石灰が堆積した。この石灰層が次第に隆起しカルスト台地となり、この台地は二酸化炭素を含む雨水で浸食された。その結果、鍾乳洞や釣り鐘型の山々など、桂林の水墨画で有名な風光明媚な情景を作りだしたのだ。

翌日の実習は桂林医科大学解剖学教室で行われた。午前中の実習を終え、一息つくため解剖学教室のある大学2階からバルコニーに出て辺りを見回すと、そこにはのどかな田園風景が一面に広がっていた。小鳥や虫たちが木々の間を賑やか飛び交う中、農夫たちがゆっくりと農作業をしていた。この光景はずっと昔から今も変わらず続いているに違いない。この雄大な自然の中で暮らす桂林の人々は穏やかで、ここにいると時間がゆっくりと流れていP1000472るように感じた。日頃緊張を強いられる我々美容外科医は、気持ちを新たに出来るこのような機会をしばしば持つことが必要かもしれない。

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