GINZA CUVO

2010年2月アーカイブ

勤務医時代、治療を担当したことのあるファッション・モデルさんから僕のクリニックを受診したいと連絡が入った。当時20歳そこそこだった彼女も今は20代後半となった。彼女がどのように変化したのかと思い、再会するのを楽しみにした。


実際に再会してみると、彼女の容姿は当時のままか、むしろさらに磨きがかかり、約7年間の時間の経過を感じさせなかった。当時彼女は大学生で、アルバイト程度にモデルをしていたが、現在はプロ・モデルとして活躍している。この仕事で生計を立てるには美しい容姿を維持する必要があり、そのために彼女は日々努力をしているのだろうと思った。


ファッション・モデルの仕事は華やかで楽しそうに見えるが、実際そうではない。まず、この仕事は景気の動向に左右されやすいので、仕事が安定して入るとは限らない。最近の景気後退に伴い、仕事は現象傾向にあるとのこと。そうなると超一流モデルならともかく、それ以外のモデルたちはオーディションでライバルたちと競い合い、勝ち残った者だけが仕事を得るといった仕組みだ。


仕事は早朝や夜遅くの誰もいないところで行われる。ジャケットでも寒い2月末、六本木や表参道の片隅で、モデルさんが素肌を出しながらの、春夏用ワンピース撮影に出くわしたことがある。このモデルさんは笑顔で撮影に応じていたものの、さぞかし寒かっただろう。逆に、真夏の酷暑時に秋冬用の服装で撮影することもある。この仕事は想像以上に過酷だが、そんな厳しい環境にもめげす、プロ・モデルとしての仕事を得たのだから、よく頑張ったものだと思う。


ファッション・モデルと言えば、背の高い外人モデルさんたちを想像する。だが、外国人モデルたちのニーズはこのところ激減しているらしい。米国経済の破綻を景気に、それまで西欧文化かぶれしていた我々の目が覚めた。その結果、我々日本人がどんなに西欧人に憧れたところで、彼ら彼女たちのようになれないことに気づいたのだ。


そもそも西欧人たちが絶対的に美しいかと言えば必ずしもそうではなく、東洋美の価値がここにきて再確認され始めている。単に外見的に見栄えの良いものが評価される時代は終焉を迎えつつある。そこにスピリチュアル(内面的)なものが加味されていなければ、すぐに飽きてしまうことに我々は気がつき始めたのだ。


だから、一般人の手に届きそうな彼女のような東洋人モデルさんにとってこの世の中の流れは追い風らしく、西欧人モデルさんの仕事に取って変わり、雑誌やテレビコマーシャルに引っ張りだこという。この知人のモデルさんの顔にはしわひとつない。どこかでボトックスなどのスキンケア治療を受けているのかと疑ってしまうほどだ。


だが、彼女の顔の動きをよく観察すると、顔にしわの寄りにくい表情しかしていないことに気がついた。彼女の顔にしわがないのは、ボトックス治療によるものではなく、日頃の彼女の顔にしわを寄せないようにする訓練の賜物なのだ。一見、華やかそうなモデルさんのお仕事も、実は生半可なものではない。どんな仕事にもそれなりの苦労があり、成功するには絶え間ない努力が必要であることを彼女の姿に垣間見た。


前クリニックは銀座中央通りの7丁目に位置していた。この場所は銀座の中でもいわゆる"目抜き通り"で、きらびやかなブランドショップが軒を連ねていた。毎週末は歩行者天国が催され、多くの観光客や買い物客でにぎわっていた。この通りに面するモンブランビルの7階で5年近く診療をしていたが、その合間に街行く人々をよく見下ろしていたものだ。


数年前、一時的に景気が上向いたときなどは、新たなブランドショップがオープンして長蛇の列を作ったり、おおぜいの中国人の団体観光客がバスでやってきたりした。最近は景気が後退しているが、銀座中心部の優れた点は、逆に景気が悪くなっても安定した活気を失わなないことだろう。


銀座目抜き通りは人並みが多いので、名前を売るためのブランドショップにとって、この場所に店を出すことは大変価値がある。5年前、僕が開業に踏み切ったときも、クリニックのブランドイメージを高めることが大切であると考え、思い切ってこの場所に出店した。


昨年末、モンブランビルとの契約が切れる際、僕は契約更新か、それとも新天地へ移転すべきか熟考した。そこで次のような結論を出した。美容外科はブランド品のように多くの人々に認知される必要はなく、プライバシーを第一優先に行うクローズドビジネスである。だから、銀座目抜き通りにクリニックを構えることが第一優先とならず、移転すべきであると。


新クリニックは銀座中央通りからやや昭和通り側に入った銀座1丁目に位置する。この場所はどちらかというと銀座の外れで、以前のようなきらびやかさはないが、落ち着きを感じさせる。それはこの土地が京橋や宝町など、東京でも伝統的な街並みに含まれるからなのだろうか。


また、前クリニックはビル7階だったが、今度は地上階に位置しているため、街の気配を感じながら診療を行えるのが意外にも新鮮だ。診療合間に散歩に出かけると、この辺りにはじんまりとしたレストランやバー、セレクトショップなどが散在しているがどのお店も一度入ってみたいと思う個性を放っている。これらのお店が古くから固定客を集め、こつこつ営業を続けているのだろうことは容易に想像がつく。


そもそも美容医療に派手な宣伝やパフォーマンスは必要ない。たとえそうった宣伝で一時的に人気を集めても、本当の成功はつかんだとは言えない。本当の成功とは、競争の激しい業界の中で、景気や一時の流行に左右されることなく、自分の仕事に共感していただける顧客を獲得し、安定経営を維持することなのだ。僕のクリニックも銀座の裏通りに並ぶ老舗に仲間入りをさせていただけるよう、良い仕事を長く続けたいと思った。


銀座CUVOクリニック公式サイト


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