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ある夜の出来事-3

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DOA (Dead On Arrival)


これは夢ではなく現実に起こっていることだった。僕は頭の中で次のように推測した。市街地からパトカーが出動した。音は遠ざかって言ったから、何かが市街地の外で起こったのだ。その後しばらくしてから救急車が出動した。警察と救急隊の出動が同時にある場合、交通事故など何らかの事故が発生したことを意味する。

僕の気持ちは緊張感で張り巡らされた。布団をめくり、寝間着代わりに着ていた手術着の紐をしっかりと結んだ。30分ほどすると、救急車のサイレンは次第に大きくなり、病院のすぐそばま近づいた。

ほどなくパトカー、救急車はサイレンの音を止まり、救急外来玄関に到着し、窓からは回転する救急車の赤い警告灯の光が差し込んでくる。僕は覚悟を決めて、救急病棟に向かった。僕は当直室のある4階から階段を急いで下りた。救急車の赤い警告灯。4年前救急当直を不安な気持ちで初めて当直した夜も、救急車のサイレンとこの赤い警告灯で夜中に飛び起きた。そのとき運ばれてきたのは頭を切った患者さんだったが、当時の僕はその程度の患者さんの処置でも緊張で手が震えていた。 

すでに救急医療に従事して4年、僕はどのような患者さんが来ても対処する出来るようになっていたから、不安はなかった。パトカーの出動から、交通事故の患者さんが運ばれてくることを予想して救急室に入った。特に外科を中心に研修していたので、外傷患者の対応は得意としていたのだ。

顔なじみの救急隊員がドアの外の冷たい空気とともに慌てた様子で救急室に入ってきた。僕はこの救急隊員に「交通事故ですか?」と尋ねた。彼の答えは「海に落ちた溺水の患者さんです!」と息を切らしながら答えた。

”溺水”それは人が水に溺れることを意味する。人は肺から酸素呼吸をして生命活動を維持する。だから、水に溺れ、3~4分程度無呼吸状態に陥ると死に至ることが少なくない。この患者さんは担架の上に乗せられていたが、すでにぐったりしていて、仮死状態に陥っていると判断した。

救急医療では”DOA”(Dead On Arrival)をしばしば経験する。”DOA”とは救急外来に患者さ到着した時点で、瞳孔散大、心肺停止、脈拍(-)の状態、つまり死の3大兆候が確認できる状態を言う。

事故などが原因で死に至る場合、医師が死の認定をし、死亡診断書を作成する義務がある。だから、たとえ明らかな”DOA”状態であっても、患者さんたちは死の認定をするために救急外来に担ぎ込まれてくることも少なくなかった。

溺水患者を救急外来で担当することも僕にとっては初めてではなかった。道東では珍しいほど暑いある夏の休日の午後、僕はいつものように救急当直をしていると、汗にまみれた救急隊員が一人の患者さんを運んできた。海水浴をしていた40代の男性が海に潜っている最中に溺れたのだ。明らかな”DOA”であったが、心肺蘇生を試みた。気管内挿管による人工呼吸器装着と心臓マッサージをしばらく試みたが、心電図上の波形は平らなまま時間は過ぎ去った。僕は蘇生をあきらめたが、この蘇生の終了時を死亡時刻と認定した。

この患者さんは病院に運び込まれるかなり前にすでに亡くなっていたはずだ。だが、救急外来では患者さんがすでに亡くなっていたとしても、しばらく蘇生を試みた後、医師確認のもとで死を認定することが習慣となっていた。

今回の溺水患者さんも”DOA”であることを予想した。だが、心電図をつけると、その波形はかなり弱っているものの、心臓がかすかに動いてることが確認できた。”蘇生できるかもしれない!”僕の鼓動は高鳴った。

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コメント(4)

なかなか複雑なものがありますネェ。。
私には当然このような経験はありませんが
すでにDOAの患者を医師が確認して
初めて死の認定がされる・・・・
救急隊員も複雑でしょう。。
わずかにでも蘇生のチャンスがあれば鼓動が高まりますよね
医師ですからね
さすが!
ここからがドクターの腕のみせどころでしょう!
その後はいかに!?

この経験は僕にとって、医療とは何かを考えさせらる貴重な体験となりました。まだまだ話は続きます。楽しみにしていてください。

こんにちは、先生のブログ楽しみに拝見しています。
 救急医療は、かなりの緊張があると思います。 しかし、少しの可能性に掛けて冷静に対応してくれるDrは最高ですよ。
 患者様の立場でも その家族の対場でも冷静に対応してくるれると安心でき、信頼できると思います。
  
少しの可能性に掛けてほしい。何とか助けてほしい。
  
それが患者様 家族の気持ちだと思います。
 
続きが気になります。

私のブログを読んでいただき、誠にありがとうございます。
この話はまだ先がありますから楽しみにしていてください。

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