再生医療の応用
現在脚光を浴びている新しい医学に表-6の如く再生医療がある。再生治療とは疾患による機能不全や、老化で衰えた体内組織を何らかの手段で再生し、失った体内組織機能を取り戻す医療である。当クリニックで行う目の下のくま(クマ)、たるみ解消の経結膜的下眼瞼形成術も再生医療原理を用いた治療である。この治療では低出力レーザーを用いて皮下組織に侵入し皮下剥離を行う。この操作により皮下部では、いわゆる”創傷治癒機構”が迅速に作動する。
すなわち、治癒に関与するマクロファージなどの炎症細胞が皮下部位に集結し、グロースファクター(成長因子)を放出する。グロースファクター(成長因子)は剥離された皮下を修復しようと結合組織を再生させる。この結語組織は健常組織よりも強固に皮膚-皮下結合組織を固着させる。この グロースファクター(成長因子)の皮下組織修復作用により、目の下のくま(クマ)、たるみは改善された状態でほぼ永久的に維持される。つまりこの治療では皮下へのレーザー照射刺激で グロースファクター(成長因子) 放出を促し、その作用により永続的な改善効果が得られるため、原理的には再生医療の一つと言える。
数年前から美容外科領域で頻繁に使用されている再生医療の一つがPRP(Platelet Rich Plasma、多血小板血漿)療法である。血液内血小板には グロースファクター( 成長因子)が多く存在する。この血小板内 グロースファクター( 成長因子)を抽出し、老化によって生じたしわ等に注入することで、症状の改善を図ろうとするのがPRP療法である。
幹細胞には皮膚線維組織や脂肪組織に存在する体性幹細胞や、受精卵から作られる胚性幹細胞(ES細胞)がある。最近、美容外科領域で応用され始めたのが体性幹細胞を用いた治療である。 体性幹細胞はすべての体細胞に分化する能力を保持している。この体性幹細胞を脂肪組織等から培養してその数を大幅(約5,000万個)に増やし、体内に戻すと、これらの幹細胞は病気で機能不全に陥ったり、老化で衰えた組織を再生する可能性がある。この治療はごく最近応用されたばかりの最新治療であるが、すでに治験レベルで腎不全や免疫力低下症などに有効な結果が出始めている。美容領域では体性幹細胞を老化で弾力性を失った皮膚に注入して皮膚の若返りを図ったり、治療後の回復を早めるため、フェイスリフトなどの治療部位にあらかじめ注入しておくなどの臨床応用が期待される。
表-6
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再生医療の種類 |
作用機序 |
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下眼瞼形成術 |
レーザー照射によるグロースファクター(成長因子) 放出 |
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PRP(多血小板血漿)治療 |
血漿内成長因子の抽出とその注入 |
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体性幹細胞治療 |
脂肪や線維組織内の体性幹細胞を採取、培養とその注入 |
まとめ
一般外科領域では疼痛緩和、救命のための手術治療を行う。その際、大きな皮膚切開痕を残す手術であっても致し方ないとされていた。だが皮膚切開アプローチによる治療では傷跡のみならず、回復過程が遷延され、社会生活に多大な支障を来す。そのため今日の外科医療では、低侵襲、早期回復へ向けてた新たな治療法が日々開発され、発展している。
このように一般外科領域でも可能な限り皮膚切開をせずに、内視鏡や腹腔鏡を用いた治療が優先的に行われる。ましてや救命や疼痛除去などと違って緊急性を要しない美容外科手術の場合、皮膚切開を用いる手術が第一選択として選択されるべきではない。顔面領域で優先的に用いられるべきなのは眼瞼結膜、鼻粘膜、口腔粘膜からの進入アプローチである。上眼瞼やフェイスリフトなど皮膚切開を伴うアプローチでも、重瞼ラインや耳横の皮膚線条を用いることで、可能な限り傷跡を目立たせない配慮が必要である。多忙な現代人が美容外科手術を望む場合、ダウンタイムが短く自然な仕上がりが得られる治療であることが必須条件になりつつある。
また美容外科手術の了解事項として、本格的手術を行う場合、一部位一度の手術であれば妥当とされる。つまり同じ箇所に何度もメスを入れるべきではなく、このコンセンサスを遵守した治療であれば、この医療が一般社会に広く浸透する可能性が高い。
どれほど確立された美容外科手術であっても治療結果の個体差や、満足度の差異が存在する限り、すべての患者さんが常に満足するとは限らない。まず最初に医師ー患者間の信頼関係をしっかりと築くべきである。いかに熟練した外科医が行ったとしても、まるで”魔法使いが魔法を使って治療する”のとは異なること、すべての症例で得られる結果が常に完璧とはならない医療行為の現実的限界を認識した上で治療を行うべきである。
確実な信頼関係が構築されていると、たとえ初回治療で不満足な点があったとしても、追加治療等でさらに良好な結果を得ることが可能であり、最終的には満足のゆく治療を行うことが可能となる。逆に信頼関係を持たずに治療を行ったとすれば、治療上の些細な問題点も大問題と誇張されかねない。したがって患者との信頼関係が築かれない場合は、勇気を持って治療を断ることもトラブルのない診療を行う上で非常に重要である。
自由診療として高額治療費が必要な美容外科領域では、治療に伴ういわゆる”クレーム”を可能な限り最小限に食い止めることがクリニックの安定維持、しいてはこの業界全体の社会的認知度、及び信用度を確保する上で大変重要である。 この医療に携わる医師全員が私利私欲を優先にするのではなく、 美容外科医療が成長、発展してくよう切磋琢磨に努力せねばならない。
Posted on | 5月 12, 2011 | No Comments
治療に関する今後の課題
これまで述べてきたように、目の下のくま(クマ)、たるみの治療は70年以上の歴史があり、その手法もさまざまであった。我が国にもこれらの治療は50年以上前に導入され、その中でもつい最近まで皮膚切開法が主流であった。七年前より筆者は患者さんたちが皮膚切開法をためらうケースがあまりに多いことを知り、皮膚切開法に変わる経結膜面からアプローチする治療を開始した。
当初はいわゆる下眼瞼脂肪の”脱脂”を主体に行っていた。下眼瞼脂肪が膨隆、逸脱する典型的な目の下のたるみ症例は、この”脱脂”のみで良好な結果が得られた。だが典型的な目の下のたるみではなく、いわゆる”くま(クマ)”の解決を望む症例が増えるにつれ、”脱脂”のみでは対応出来ず、くま(クマ)の原因である下眼瞼構造自体の改変を行う必要に迫られた。
前述の如く欧米諸国では前隔壁アプローチが一般的である。我が国では後隔壁アプローチが一般的であり、筆者も当初は後隔壁アプローチを学んだ。だが後隔壁アプローチでは”脱脂”は可能だが、目の下のくま(クマ)症例のように下眼瞼構造の改変必要な場合、後隔壁アプローチでは対応不可能である。そこで筆者は米国で前隔壁アプローチを学び、我が国では目の下のたるみと同様に症例数の多い目の下のくま(クマ)解消のための方法を開発した。
目の下のくま(クマ)、たるみ治療は今でも多くの施設で皮膚切開法が用いられている。経結膜的アプローチによる治療のコンセンサスは現時点においても一般的に確立されたとはいえず、この治療の価値が認められ、普及するには今しばらく時間が必要であろう。しかし他外科領域でも皮膚切開を用いない、もしくは最小切開法が一般的となった時代の流れから察するに、経結膜的アプローチが主流となる時もそう遠くはないであろう。
治療の将来像
経結膜的下眼瞼形成術は、通常メス、電池メス、高周波(ラジオ波)メスや炭酸ガスレーザーを用いて行われている。どのような器機を用いても治療可能だが、粘膜や結合組織へ進入する際、可能な限り低侵襲であるほうが瘢痕形成が少なく、腫れの回復が早くなるので高周波(ラジオ波)メスや炭酸ガスレーザーを優先的に用いるべきである。
高周波(ラジオ波)メスや炭酸ガスレーザーの優れた点は開創と止血を同時に行える点で、止血に必要な時間が大幅に短縮される。外科手術では治療時間の短縮に比例して治療回復時間が短くなるため、手術後早期社会復帰を切望する現代人にとって治療時間の短縮は大変重要な要素である。
当クリニックでは低出力高周波(ラジオ波)メスを用いて治療を行っているが、 治療直後の腫れは最小限だが、 治療翌日数日間下眼瞼腫脹が発生する。だがその程度も社会生活にさほど支障を来さない程度で収束することが一般的である。 ただし高血圧、糖尿病、ヘビースモーカーなど、健康上の不具合が存在する場合は通常より腫れが長引く可能性があるので、そういった患者さんにはその旨伝えておいた方が無難であろう。今後さらに低侵襲なレーザー機器の開発が待たれるが、現状でも十分良好な結果が得られているので、患者さんにとってかなり満足度の高い治療といえるであろう。
Posted on | 4月 22, 2011 | No Comments
下眼瞼形成術に関する後遺症及び合併症について
視力、視野、眼球運動 :2005年からこの治療開始し、過去6年間の現在まで約6000例の治療を行った。眼周囲治療で最も懸念される視力や視野などの眼球機能、及び眼球運動障害等は一例もなかった。但し、治療時に用いる局所麻酔が外眼筋にも作用するため、治療直後から一時的な複視がすべての症例で必発するが、局所麻酔の影響が消失する2~3時間で必ず回復する。過去に治療後数日が経過してから眼球上転傾向を訴える症例が数例あったが、診察上で客観的な眼球上転は認めず、経過観察している最中にその訴えは解消された。この症状は局所麻酔の外眼筋への作用と思われるが、確実に解消されるので特記する必要はない。
内出血、治療後出血:いわゆる”内出血”が起こるとすれば、下眼窩脂肪へ伸びる末梢動静脈断面から発生すると考えられる。だが熟練した外科医がこういった血管を綿密に止血凝固させると原則的に内出血は発生しない。治療後数時間が経過し局所麻酔が解消されると、この薬剤に含まれる血管収縮剤(エピネフリン1%)の効果が消失し、収縮していた微小血管が拡張し始めるため、出血傾向のある方や高血圧の方ではこれらの血管から微少出血が起こることがある。しかしこの出血は緩徐に起こるので、皮膚表面に出現するのは赤みを帯びた着色程度なことが一般的である。
また治療7~10日程度経過した頃、下眼瞼レーザー照射部位から一時的な出血を認めることがある。これは粘膜再生過程における微弱な新生血管が目をこすったりなどの機械的圧力や血圧上昇などによって、出血を引き起こすと考えられる。だがこの出血もあくまで一時的なもので、一度きりの出血で収束することがほとんどである。
色素沈着傾向:治療後の下眼瞼の色素沈着は治療後数日経過し、下眼瞼皮膚の腫脹が解消される頃より一時的に出現することがある。特に肝斑体質や皮膚組織が菲薄している症例ではその傾向が通常より現れやすい。だが治療後1~2ヶ月程度経過すると、治療による炎症が解消され、一時的な色素沈着傾向は必ず解消される。
しわ:下眼瞼形成術の一つであるいわゆる”脱脂”治療のみを過剰に行うと、しわが発生することがある。それは”脱脂”のみでは表皮レベルでアンバランスが発生して、しわの原因となるからである。そこで当クリニックで行う独自の下眼瞼形成術では”脱脂”のみでなく、皮膚と皮下組織を完全剥離し、その後で最小限度の脱脂を行うことで、皮膚のアンバランス化を回避するので、新たなしわは発生しない。また既存のしわは残存することもあるが、理論的には下眼瞼構造がシンプル化されるので、治療後には既存のしわも減少するはずである。
へこみ:過剰な”脱脂”のみを無配慮に行うと、へこみの発生する可能性が高くなる。そこで当クリニックでは皮膚の挙上操作を重点的に行い、脱脂する脂肪量を最小限とする下眼瞼形成術を行うようにし、へこみが発生しないことを優先的に治療するようにしている。だが一時的なへこみは必ずしも回避出来るとは限らない。その理由は治療後に発生する下眼瞼直下眼輪筋の腫脹により、実際には凹みがないにもかかわらず、凹みが誇張されることがある。この眼輪筋部の腫脹は通常1ヶ月程度で解消されるが、糖尿病や高血圧などの基礎疾患、喫煙習慣や回復が遅延する体質を有している場合などは、完全に腫れが解消されるまで3~4ヶ月程度かかることもある。こういった一時的な凹みを早期に解決する場合は下眼瞼皮膚下に少量にヒアルロン酸注入を行うと大変有効である。ヒアルロン酸は下眼瞼直下に注入すると6~12ヶ月程度残存するため、一度の注入で解決することがほとんどである。希に下眼瞼の腫脹が完全に解消された後、不必要となったヒアルロン酸が膨隆して見えることがあるが、その際はヒアルロン酸分解酵素で不必要となったヒアルロン酸を分解することが可能である。
ドライアイ:経結膜的アプローチを行う際、下眼瞼結膜面にレーザーで焼灼しながら下眼窩隔壁へと進入する。下眼瞼結膜には粘膜以外の組織が存在しないため、適切な治療を行う限り機能的な問題が生じない極めて安全な進入アプローチである。但し、高出力レーザー機器を用いると、粘膜組織再生に時間を要するため、一時的なドライアイを訴える症例が過去に存在した。2008年以降、低出力レーザーを用いて治療を行うようになってから、一時的なものでもドライアイを訴えるケースは一例も存在していない。以上下眼瞼形成術に伴う後遺症や合併症の可能性を表-5にまとめた。
表-5
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視力、視野、眼球運動 |
治療後2~3時間、複視の必発 |
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内出血、治療後出血 |
微少内出血の可能性(1~2%) |
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色素沈着傾向 |
肝斑体質の症例で一時的に強調されることあり |
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しわ |
脱脂のみの治療で+の可能性あり |
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へこみ |
脱脂のみの治療で+の可能性あり |
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ドライアイ |
低出力レーザーであればー |
Posted on | 4月 19, 2011 | No Comments
目の下のくま、たるみ治療に伴う危険性(リスク)の比較
皮膚切開法:目の下のくま、たるみ治療のアプローチは図-5の下眼瞼縦断面図、赤と緑矢印の如く、いずれにせよ下眼瞼支持組織部位となる。ここにはさまざまな組織が存在し、従来まで一般的に行われていた皮膚切開法では皮膚切開を用いたアプローチをする。そのため表-4のように大小の差こそあれ、何らかの傷跡を残すことになる。
さらに皮膚切開法では皮膚のみならず眼輪筋と呼ばれる筋肉や、図-5に示された眼輪筋内の末梢血管や顔面神経(運動神経)末梢枝に何らかの損傷を与える。そのため下眼瞼閉眼に重要な役割を果たす眼輪筋機能が衰え、 下眼瞼外反(いわゆる”あかんべー”)の可能性が生じることが皮膚傷跡よりもむしろ重大な問題となる。
何故なら、下眼瞼外反(いわゆる”あかんべー”)が生じると、外見上の醜悪のみならず、ドライアイの誘発など、眼機能の問題を伴うことになりかねない。また下眼瞼外反修正には外側から瞼板引き上げなど二次手術が必要となり、患者さんの負担が増すことになる。
そのため、こういった危険性を伴う皮膚切開法は、皮膚自体のたるみが目の下のしわやたるみの直接的原因となっている特殊な場合を除いて行うべきではないであろう。
脱脂法:脱脂法は図-5の緑矢印の如く下眼瞼結膜面から小切開を加え、後隔壁(Retro-septal)アプローチにて下眼瞼脂肪を核出する方法である。しかしこの方法では前述の如く、皮膚弾力性が十分な比較的若年層の目の下のたるみのみが適応であり、過剰脂肪よりも下眼瞼構造の問題が原因である目の下のくまの適応はない。目の下のくま症例に無理な脱脂を行うと表-4のように窪みや凹みを誘発しかねない。
また中高年層以降の目の下のたるみ症例で脱脂のみを行うと、皮膚のアンバランスが生じ予想外のしわや凹みが発生する可能性がある。したがって脱脂のみを行う場合は適応症例を選択することが重要である。
図-5

当クリニックで行う経結膜下眼瞼形成術:これは上記に記載した2方法の危険性(リスク)を回避した当クリニックで独自に開発した方法である。治療の詳細は前述したが、この治療は”脱脂”のみでなく、皮膚を皮下組織を完全に剥離した上で最小限の脂肪摘出を行うものである。そのため、脂肪過剰除去による凹みの危険性が回避されるのみでなく、皮下から剥離された皮膚が自動的に挙上するため、皮膚のたるみも皮膚切開、切除することなく改善される画期的な方法である。
また皮膚のアンバランスによるしわが発生することがないことや、前年代層の目の下のたるみに適応があるのみでなく、いわゆる下眼瞼構造の不具合により目の下の色素や影が目立ついわゆる”目の下のくま”にも適応がある。
治療は多くの症例数を経験した熟練した外科医の腕が必要となるが、適切な治療を行う限り、良好な結果が得られ続ける極めて優れた治療法である。
表-4
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治療法 |
危険性(リスク) |
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皮膚切開法 |
傷跡、下眼瞼外反(いわゆる”あかんべー”)の可能性 |
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いわゆる”脱脂”法 |
凹み、しわの可能性 |
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当クリニックで行う経結膜下眼瞼形成術 |
適切な治療を行う限りリスクなし |
Posted on | 4月 13, 2011 | No Comments
経結膜的アプローチによるいわゆる”脱脂法”と当クリニックの”下眼瞼形成術”の相違点
本邦でこれまで行われていた経結膜アプローチによる目の下のくま(クマ)、たるみ治療(下眼瞼形成術)は、下眼瞼眼窩脂肪を脱出させるいわゆる”脱脂法”が主流であった。この方法の優れた点は表-3の如く手技が比較的簡単であることと、皮膚手術痕を残さないことである。
この方法が優れたアプローチであるにもかかわらず、広がりをみせなかったのは表-2で述べたように、脱脂法の際に用いる後隔壁アプローチでは、眼窩余剰眼窩脂肪を脱出させのみなので、年齢層が若く脂肪量が多い症例のみに治療適応が限られていたからである。
当クリニックで行う目の下のくま(クマ)、たるみ治療は、いわゆる”脱脂法”とは異なり、前隔壁アプローチを用いて図-4の如く、皮膚自体の挙上を阻害するLockwood’s ligamentやWang Wei ligamentの処置を行い、皮膚を皮下組織から解離する。
図-4

この操作を行うことで、元々収縮能力を有する皮膚が自由になり、眼窩下部の皮膚が瞼板両側に靱帯で強靱に結合された眼窩上部に向かって挙上することになる。したがって表-3の如く、若年層の目の下のたるみのみならず、下眼瞼構造上不具合による皮膚の下垂が原因で目の下の色素や影が目立つ、いわゆる”目の下のくま(クマ)”や、”脱脂法”のみでは不可能であった皮膚自体のたるみの挙上が必要な中高年層までその治療が適応が広がった。
だがLockwood’s ligamentやWang Wei ligamentの解離操作は個々の症例でその程度が異なるため、良好な結果を得るには多くの症例を経験し、いわゆる”勘所”を得る必要がある。このことは経結膜的下眼瞼形成術により目の下のくま(クマ)、たるみに悩む方々の幅広い症状に対して常に良好な結果を得るのは容易ではないことを意味する。したがってこの技術を習得するには多くの症例経験と、個々の治療成績の分析といったこの治療へのあくなき熱意がことのほか重要である。
表-3
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方法 |
メリット |
デメリット |
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いわゆる”脱脂法” |
後隔壁アプローチによる眼窩脂肪脱出 |
手技が容易 |
若年層、脂肪量が多い場合のみ
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当クリニックで行う系結膜的下眼瞼形成術 |
前隔壁アプローチによる眼窩脂肪先端部位からの最小限除去
皮下における皮膚支持組織解離による皮膚挙上操作
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目の下のくま(クマ)、たるみ両方に対応可能
皮膚自体の挙上により幅広い年齢層への適応あり |
手技取得が困難 |
Posted on | 3月 22, 2011 | No Comments