GINZA CUVO

目の下のクマ(くま)、たるみの最近のブログ記事

症例:59歳 男性

経過:

従来より下眼瞼(目の下)のたるみ、最近になって上眼瞼のたるみ(上眼瞼下垂症状)が気になっていた。こういった知識がない本人は綿密なインターネット検索の結果当クリニックの存在を知り、症状改善の可能性を求めて来院した。

診察:

症状(写真-1)を上部から観察すると、上眼瞼陥没、軽度の眼瞼下垂症、中等度の下眼瞼たるみ症状を認める。上眼瞼下垂症の診断は、眼球動向をやや上眼瞼を覆う状態から軽度眼瞼下垂症と診断した。その症状はやや右>左である。

次に下眼瞼症状を観察すると、典型的な下眼窩脂肪突出による目の下のたるみ(buggy eyelids)が存在すし、症状は右<左である。このbaggy eyelidsによって下眼瞼皮膚色素が強調され、いわゆる目の下のクマ(くま)も目立つ状態である。

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写真-1(治療前)

治療後評価:

上眼瞼下垂症状は下眼窩脂肪膨隆(buggy eyelids)症状がその一因として考えられること、また本人の希望により、最初に下眼瞼症状(目の下のたるみ)改善のための経結膜的下眼瞼形成術から行った。

治療7日後の写真-2を観察すると治療後の腫れはほぼ解消されたものの、左目周囲に軽度内出血が残存している。下眼窩治療は下眼窩内側〜外側まで包括的に行うので、このように内出血が下眼窩内側から外側、さらに上眼瞼まで波及することがある。通常この内出血は治療後10日程度で解消される。

摘出された下眼窩余剰脂肪(写真-3)を観察するとその量は右<左で症状と矛盾せず、下眼窩膨隆症状は適切に処置されたことがわかる。

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写真-2(治療7日後)

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写真-3(下眼窩摘出脂肪)

写真-4の如く下眼瞼治療後1年6ヶ月が経過、症状固定(最終治療結果)に至り、治療前に比べて目の下のたるみ、クマ(くま)症状は大幅に改善された。右下眼瞼に軽度たるみ症状が残存するが、その原因は前回治療において下眼瞼凹み等予防を最優先に治療を行ったため下眼窩脂肪が軽度残存したことによる。だが患者はこの症状はあまり気にしていないため、このまま様子をみることとした。

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写真-4(下眼瞼治療1年6ヶ月後及び上眼瞼下垂治療前)

今回の治療は以前から存在した両上眼瞼下垂症を対象とした。1年6か月前の下眼瞼治療以前(写真-1)と比較すると、治療後の現在(写真-4)、ある程度上眼瞼下垂症状が改善されている。その理由は上眼瞼下垂の一因が下眼瞼構造の不具合なので、下眼瞼治療によりその不具合が解消された結果、上眼瞼下垂症状がある程度解消された。

上眼瞼下垂症に対する治療は上眼瞼挙筋短縮術を行った。この手術は上眼瞼二重線に切開を加えた後、眼輪筋に平行切開・侵入し上眼窩隔壁に到達する。さらに上眼窩隔壁内に切開侵入し、眼瞼挙筋を同定する。次に弛緩した眼瞼挙筋遠位端と上眼瞼腱板を短縮縫合し、眼瞼下垂改善を確認する。その際、眼瞼下垂の一因である余剰皮膚及び上眼窩脂肪を適切に除去することも大切である。最後に上眼瞼皮膚縫合を行い治療を終了する。

上記治療7日後(写真-5)を見ると両眼窩周囲の内出血、左目では上眼瞼二重幅の著しい腫脹を認めている。上眼瞼から摘出された余剰皮膚と脂肪(写真-6)を確認するとその量は右>左で症状と矛盾していない。

眼瞼下垂治療(眼瞼挙筋前転術)が適切に行われた初期サイン(兆候)は両上眼瞼陥没症状の解消だが、本症例でもすでにその初期サイン(兆候)認められた。

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写真-5(上眼瞼下垂症治療7日後)

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写真-6(上眼瞼から摘出された余剰皮膚と脂肪)

両上眼瞼下垂症治療後1か月が経過し、眼瞼下垂症状は良好に解消され、患者満足度もこの時点で非常に高いものとなった。(写真-7)

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写真-7(上眼瞼下垂治療1ヶ月後)

だが治療4ヶ月後、本人は左目の開眼が右目に比べてやや劣ることが気になり、左目再治療を強く望んだので左目上眼瞼下垂再治療を行うこととした。(写真-8)

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写真-8(上眼瞼下垂治療4ヶ月後)

1度目に比べ治療侵襲が軽微なため、抜糸時(治療8日後)でもその腫れは少ない。(写真-9)

初期治療にてほぼ自然な結果が得られていたため、今回の再治療では眼瞼挙筋前転量も控えめとし、左上眼瞼のみが過剰矯正に陥らないことを最優先として治療を行った。

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写真-9(上眼瞼下垂再治療後8日後)

再治療後7ヶ月経過時点での写真を確認すると、今回の再治療では左眼瞼挙筋前転量も軽微であったため、得られた治療結果も比較的軽度であった。(写真-10)

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写真-10(上眼瞼下垂再治療7ヶ月後)

だがこの患者の場合、左上眼瞼下垂症状へのこだわりが大変強く、もしさらなる改善が望めるのであれば、最後にもう一度左上眼瞼の治療を希望した。このような症例の場合、治療を拒絶するのも一案であるが、患者の治療への理解、認知・良識も問題なく、医師との信頼関係は十分にあったので、今回の治療を最後と確約した上で左上眼瞼下垂再々治療を行った。

治療は余剰皮膚切除を中心に行い、眼瞼挙筋前転は確認程度とし、ほとんど行わなかった。(写真-11、写真-12)

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写真-11(上眼瞼下垂再々治療7日後)

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写真-12(上眼瞼下垂再々治療時の余剰皮膚)

最終的に左上眼瞼は3度治療を行ったため、左二重幅は治療1ヶ月が経過しても慢性的腫脹が継続している。(写真-13)

だが本人はすでに複数回治療を行った経験から遷延する経過に熟知しているせいか、不安等を感じることなく現状にすでに満足していた。このように上眼瞼下垂治療は大変デリケートな治療であり、必ずしも1度の治療で解決するとは限らない。患者ー医師信頼関係を構築した上で、過矯正を確実に予防するため、今回の如く必要であれば再治療することを念頭に置くべきであろう。

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写真-13(上眼瞼下垂再々治療1ヶ月後)

現在私は眼窩形成外科のテキストブックを作成中である。目の下のたるみ治療を希望される方の参考にその内容の一部を抜粋する。
下記抜粋は目の下のたるみ手術の術中連続写真に解説を加えたものである。

目の下のたるみ治療について

1. 7-0黒ナイロンで右下眼瞼瞼板下端粘膜に糸をかけ、同部位を反転させる。上眼瞼眉毛が長い場合や、いわゆる"エクステンション(睫毛)"をしている場合は手技の邪魔になるため3Mテープで"エクステンション(睫毛)"を上反転固定し、術野を確保する。27~30ゲージ針にて下眼瞼皮下に3~6mlの局所麻酔(1%キシロカイン、アドレナリン10万倍)を注入する。



2.右下眼瞼下端(Fornix、円蓋部)に7-0黒ナイロンをかけ、術野を最大限に確保する。



3.同部位に高周波数(ラジオ波)電極針(エレマン社製)で進入する。下眼瞼瞼板を筋鉤(Retractor)で把持しながら綿棒で隔膜(Septum)を下に圧排し、前隔壁を下位に残しながら展開する(隔壁前アプローチ)。



4.隔壁直下の下眼窩脂肪内側部と中央部をピンセットで把持しながら広げ、その範囲と過剰脂肪量を予測する。



5.隔壁を切除すると余剰下眼窩脂肪が自然に逸脱する。この自然に逸脱した下眼窩余剰脂肪が目の下のたるみ(Baggy eyelid)の原因である。



6.下眼窩脂肪内側部位をピンセットで把持しながらが上方に引き出しながら、切除範囲を同定する。


7.同定された余剰下眼窩脂肪をペアン鉗子にて把持する。把持方向は下眼窩脂肪に対して確実に垂直であることに留意する。垂直に把持出来れば、左右均等に除去出来るので、凹み等などこの治療に伴うトラブルを回避出来る。

8.ペアン鉗子で把持した余剰下眼窩脂肪内側部と中央部を鑷子で切除する。


9.バイポーラー鉗子にて切除部位を確実に焼灼、止血する。

10.切除された右下眼窩脂肪内側、中央部の一部。


11.同様に下眼窩脂肪外側部を同定した上で上方に引き出し、ペアン鉗子にて把持し、切除する。

12.下眼窩脂肪外側部の切除後、再び内側部を展開し、左右上下のバランスを考慮しながら、余剰部位を少量ずつ丁寧に除去(トリミング)する。


13.トリミング終了後筋鉤で下眼窩を左右尾側方向に展開すると、余剰下眼窩脂肪が切除され平坦化されている。余剰下眼窩脂肪除去は同脂肪位置が下眼窩縁(Arcus Marginalis)と同じ高さになるよう調節すると、立位で下眼窩直下の頬骨面と同位置となり凹みが確実に回避される。


14.下眼窩外側深部は眼窩底から下眼窩脂肪に侵入する動静脈があり、下眼窩脂肪を引き出す際に裂傷を来たし、治療後に予想外の内出血を伴うことがある。治療を終える前に綿棒等で残存下眼窩脂肪を下方に圧排しながら、眼窩底部から下眼窩脂肪に侵入する動静脈からの出血の有無を確認する。出血がある場合はバイポーラー鉗子にて確実に止血する。


15.摘出された余剰下眼窩脂肪内側、中央、外側部。


16.治療終了前に下眼瞼粘膜進入部位毛細血管断端部をバイポーラー鉗子で止血する。



17.治療直後の反転していた下眼瞼を戻し、外表面を確認する。下眼瞼睫毛直下の眼輪筋部がやや膨隆しているが、これは局所麻酔薬による腫れによるもので、この膨隆は比較的すみやかに解消される。眼窩内皮膚表面は、局所麻酔薬に含まれた血管収縮剤の効果で皮膚毛細血管が収縮し白味を帯びている。この白色変化は治療後1~2時間程度で局所麻酔薬の効果の消退とともに回復する。また皮膚表面につけられた青色マーカーは、下眼窩脂肪内側・中央境界部と外側部のおおよその位置を示すものである。下眼窩脂肪内側・中央境界部は眼裂の中央とほぼ一致する。



前方アプローチ法と後方アプローチ法の違い

目の下のクマ(くま)、たるみは図-2の如く、下眼窩脂肪の前方突出が主な原因であることがほとんどです。したがって症状改善を図るには、下眼窩脂肪の前方突出部位を出来るだけ正確に軽減除去する必要があります。

図-2

さらに図-3を見ると、前方アプローチ法と後方アプローチ法の進入経路が異なることが分かります。ここで重要なのは、前方アプローチ法では図-4の下眼窩脂肪内に示した矢印の如く、下眼窩脂肪前方部位からの脂肪除去が可能なことです。

図-3

図-4

前方アプローチ法では、目の下のクマ(くま)、たるみの直接的原因である下眼窩脂肪前方突出部位を、肉眼同定した上で正確に除去することが可能です。それに比べて後方アプローチ法では、図-5の如く下眼窩脂肪後方部位からしか脂肪除去できません。

図-5

しかし目の下のクマ(くま)、たるみの直接的原因は、あくまで下眼窩脂肪の前方突出部位です。つまり後方アプローチ法では、下眼窩脂肪を除去する際、後方部位を除去して間接的に前方突出量を軽減させるのみなので、前方アプローチ法に比べて不正確な結果となりがちです。(表-2)

表-2

皮膚を切らない下眼瞼治療のアプローチ法

メリット

デメリット

前方アプローチ

確実、正確な脂肪摘出量

手技がやや困難

後方アプローチ

不確実な脂肪摘出量

手技が容易

また下眼瞼皮膚・皮下構造は繊細で薄いため、不適切な下眼窩脂肪除去を行うと、その悪影響は下眼瞼の凹みやしわの増加として反映されます。したがって、目の下のクマ(くま)、たるみに対する下眼瞼形成術では、前方アプローチ法によって下眼窩脂肪をその前方部位より出来るだけ慎重かつ精密に除去・調節することが、良好で安全な結果を得るための絶対条件となります。

表-3如く本邦では経結膜的下眼瞼形成術の際、後方アプローチ法を用いてきた経緯があります。その証拠に本法の代表的美容外科教科書には前方アプローチ法よりも後方アプローチ法が推奨されています。その主な理由は、後方アプローチ法が前方アプローチ法よりも比較的容易に下眼窩脂肪に到達できるのと、下眼窩脂肪隔壁を損傷せずに治療可能であるためと記載されています。

表-3

皮膚を切らない下眼瞼治療のアプローチ法

使用国

前方アプローチ

米国、ヨーロッパ、韓国の一部

後方アプローチ

日本

しかしこの見解は、あくまで若年層の目の下のたるみ治療の適応である脱脂法に対するものであって、それ以外の年齢層の目の下のクマ(くま)、たるみ治療については必ずしも正しい見解ではありません。例えば下眼窩脂肪隔壁の損傷についてですが、目の下のクマ(くま)、たるみ症例では下眼窩隔壁が弛緩しており、少なからず下眼窩脂肪が前方突出しています。

目の下のクマ(くま)、たるみ治療を前方アプローチ法を用いて行う際、すでに弛緩した下眼窩隔壁の機能はほとんどなくこれを切除・除去します。またこの治療では、今後下眼窩脂肪が前方突出することがないよう、下眼窩脂肪も同時に適切に除去します。すなわち下眼窩隔壁自体を除去するので、下眼窩脂肪隔壁を損傷せずに治療可能である後方アプローチ法を用いる意味はほとんどありません。

また前方アプローチ法を用いて行った際、除去した下眼窩隔壁部位には治療後強固な結合組織が増生されます。この結合組織が下眼窩隔壁の代わりとなり、残存下眼窩脂肪を支持するので、下眼窩隔壁を切除・除去しても全く問題はありません。

上記の如く私は目の下のクマ(くま)、たるみ治療において、早期から前方アプローチ法を導入し、試行錯誤しながらさまざまな症例に取り組んできた結果、このアプローチの優位性を確信しました。そして前方アプローチ法を用いて正確な脂肪除去・調整を行えたことが、これまでこの治療において当院が抜きん出ていた主な理由です。


目の下のくま治療

目の下のたるみ治療

真っ先に僕か考えたのは、老若男女を問わず、この症状に悩むすべての人達に皮膚切開を用いない目の下のクマ(くま)、たるみ治療を行うことでした。表-1の如く、比較的若年層の患者さんには以前から示されていたように、"脱脂治療"のみでも良好な効果が得られることが再確認されました。


しかし中高年層以降の目の下のたるみや、若年層世代の目の下のクマ(くま)には"脱脂治療"のみの効果は限定的でした。そして、"脱脂治療"のみでより明らかな結果を得ようと過剰に脱脂すると、目の下に凹みや陰影を形成したり、目の下表面皮膚のアンバランスが原因でしわが増加するなどの副作用が出現する恐れがありました。


表-1



"脱脂治療"の適応

若年層の目の下のたるみ

若年層の目の下のクマ(くま)

×

中高年層以降の目の下のたるみ

中高年層以降の目の下のクマ(くま)

×



したがって、若年層の目の下のたるみ治療以外で脱脂を行うのは、極力控え目に脱脂するしかありませんでした。当然得られる治療結果も限定的で、満足度も決して高いものとは言えませんでした。


以上に述べた点が、当時行われていた皮膚を切らない目の下のクマ(くま)、たるみ治療(脱脂)の限界でありジレンマだったのです。だからといって、再び皮膚切開法に立ち戻る訳にもいきませんでした。それは時代がダウンタイム(回復期間)が短く、自然な結果の得られる治療法以外は受け入れなくなっていたからです。


2005年、僕が皮膚を切らない目の下のクマ(くま)、たるみ治療を推奨し、急激な人気を獲得しました。そして僕のクリニックが、この治療でいわゆる"ブレイク"状態になったのを見た競合他院は、2006年あたりから同様の治療をおもむろに開始しました。


それもそのはず2007年の最繁忙期には、僕のクリニックにはこの治療を求めるお客様がなんと4ヶ月待ちの状態にまで膨れ上がりました。しかしどの施設が行う治療も、僕が当時行っていた脱脂法を越えるものはなく、その治療適応範囲はやはり限定的でした。


しかし"脱脂法"のみを行っていたにもかかわらず、当院が競合他院より人気があったのは明白な理由があります。それは当院で行う脱脂法は、下眼窩脂肪を前方位置から少しずつ除去してゆく"前方アプローチ法"を初期から導入したことです。僕は開業前の2003年、この前方アプローチを米国で学び、それ以来すべての症例で"前方アプローチ法"を用いています。


しかし、僕が2002年に当時勤務していた十仁病院で学んだ"脱脂法"は"前方アプローチ法"ではなく、下眼窩脂肪を後方から取り出す"後方アプローチ法"でした。そして僕が開業してしばらく時間が経過してから気がついたのですが、日本の多くの施設で"後方アプローチ法"が用いられていたのです。


今から10年余り前、美容外科医療の世界では国際交流が今ほど盛んではなく、我が国独自に"後方アプローチ法"が下眼窩脂の脱脂法として継承されたのが原因と考えられます。その証拠に当時僕が本邦学会で下眼瞼脱脂法の治療アプローチについて論じたとき、"前方アプローチ法"の存在を知らない医師たちが多く、理解を示したのはヨーロッパで美容医療の経験がある医師たちのみでした。


では次回、下眼瞼脱脂法を行う際、何故"前方アプローチ法""後方アプローチ法"よりも優れた方法でなのかを述べたいと思います。


目の下のたるみ治療について

目の下のくま治療について

2.ポルトガル・リスボンのリベロ医師からいただいた貴重なヒント

そこで私は、皮膚切開法に変わる目の下のクマ(くま)、たるみ改善のための良い方法がないか、教科書を読んだり論文や文献検索を行いましたが、それに変わる新法を容易に見つけることは出来ませんでした。これ以上、机に向かっていても埒があかないと判断し、それ以来教科書を読むのを止め、その代わりに海外で行われる学会に積極的に参加するようにしました。

美容外科医療を開始してから3年目の秋、私は中国・上海で行われた国際美容外科学会に参加しました。そこには世界で活躍する著名な美容外科医たちが結集し、彼らは大変興味深い内容の発表を行いました。私は世界で活躍する美容外科医療の姿をこの学会を通して垣間見、大変良い刺激を受けました。

その中でもポルトガル・リスボンで開業するリベロ医師の発表に大変注目しました。何故ならこの医師は、下眼瞼部皮膚に小さな穴を空け、そこから余剰脂肪を除去する新しい目の下のたるみ治療法を行っていたからです。私はリベロ医師の発表終了直後彼に駆け寄り、この新しい治療法が東洋人に対しても同様の効果があるかどうかを尋ねました。

この医師は私に、"もしこの治療法に興味があれば、リスボンにいらっしゃい。"と言いまいした。私はこの新法に、従来まで日本で行われていた皮膚切開法を打開する良いアイデアが隠れているのではとひらめきました。そこで当時勤務していた十仁病院・梅澤院長に、ポルトガルでの短期美容外科研修を懇願したのです。

梅澤院長には私のこの願いを快諾して頂き、その後すぐに約10日間のポルトガルでの美容外科研修に旅立ちました。リスボン市街にあるリベロ医師の美容外科クリニックでは、西洋人の中高年層女性に起こりやすい肥満改善のための脂肪吸引、そして乳房肥大に対する乳房縮小手術が主に行われていました。

ポルトガル・リスボン、Dr. リベロ・クリニックでの手術風景

(ポルトガル・リスボン、Dr.Ribeloクリニックでの手術研修、2002年9月)

私の関心があった目の下のクマ(くま)、たるみ治療も時折行われており、ある日リベロ医師の行うこの新法を眼前で見学する機会がついに訪れました。患者さんは40台後半のポルトガル人女性で、手術は下の写真の如く、先ず始めに下睫毛から8~10㎜下の中央部に約5㎜程度の小切開を加えます。この小切開は下眼瞼皮膚直下の眼輪筋と眼窩脂肪を包む眼窩隔膜を貫き、下眼窩脂肪に到達する深さでした。下眼瞼を指で圧迫しながら、この切開口から上下左右から均等に余剰脂肪を抜き取ります。小切開口は縫合することなく、絆創膏を貼り手術を終了しました。

私はこの新法についてリベロ医師にいくつかの質問を投げかけました。

一つ目は皮膚に空けた傷跡が治療後に残らないのか。

二つ目は脂肪を抜去した後余剰皮膚がしわにならないのか。

三つ目は東洋人にも適応があるのかどうかでした。

この質問に対してリベロ医師は、西洋人の場合、5ミリ程度の下眼瞼の傷跡は痕跡なく治癒するとのことでした。また脂肪抜去後の皮膚の緩みについてですが、皮膚には弾力性があるため、ある程度の脂肪除去を行っても皮膚は緩むことなく収縮するとのことでした。そして東洋人への適応ですが、東洋人の場合皮膚が厚く皮膚の傷跡回復が西洋人ほど良くないことを考慮すると、その適応は高くないと言いました

(Dr.Ribeloと彼のクリニック・オフィスにて 2002年9月)

しかし上段太文字文章にあるように、皮膚には弾力性があり多少の眼窩脂肪を除去してもしわ等が発生する心配がないこと、そして東洋人の皮膚は厚く弾力性に富んでいるので、さらにその効果は強いとのアドバイスを受け、私は皮膚切開なしの目の裏側から行う目の下のクマ(くま)、たるみ治療こそ東洋人に良い適応があるのではとひらめきました。そして日本に戻った私は、皮膚切開なしのこの治療法について猛然と勉強を開始しました。

銀座CUVOクリニックの目の下のくま治療

銀座CUVOクリニックの目の下のたるみ治療

いわゆる"脱脂法"から始まった目の下のクマ(くま)、たるみ治療法の進歩・発展について

1.いわゆる"脱脂法"から始まった目の下のたるみ治療

先述の如く、私のクリニックの開業2年前に十仁病院渋谷分院で開始した目の下のたるみ治療は開業直前までに数百症例を越え、技術的にもある程度安定したので、いよいよこの方法を前面に打ち出して開業することになりました。

しかし当時私が行っていた方法は、いわゆる"脱脂法"と呼ばれるものでした。"脱脂法"とは、目の下のたるみの主な原因である下眼窩脂肪を目の裏側(下眼瞼結膜面側)から除去するものです。この治療を積極的に行っている最中、私はクリニック・ホームページを同時に立ち上げ、下眼瞼治療に関する記載を短期間のうちに精力的に行いました。

現在のホームページの基盤は、その頃記載した"脱脂法"に関する内容からほぼ成立してるせいか、現在でも私の下眼瞼治療は"脱脂"のみを行っていると誤解しているお客様も少なくありません。しかし実際は、症例数を重ねるにつれ年々治療方針・技術は改善し、開業当初行っていた"脱脂法"から大きく改変され、進歩・発展しました。

当初私の行った下眼瞼治療が何故"脱脂法"のみだったのかをここでご説明いたします。私のクリニック開業以前、世間では下眼瞼治療には皮膚切開法が一般的だったことは前述の通りです。しかし実は、当時から皮膚切開をせずに目の裏側から治療する"脱脂法"は日本に存在し、その技術を持つ医師たちは各々の施設で密やかにこの治療を試みていたのです。

開業前、私が勤務していた十仁病院・新橋本院にもこの技術を持つ医師がいましたが、当時この方法("脱脂法")の適応は極めて限定されていました。その適応とは比較的若年層(30歳代前半以下)で、目の下の膨らみが顕著な症例のみでした。

つまり、40歳代以降の目の下のたるみ症例にはこの治療法の適応がなく、すべて皮膚切開法が行われていたのです。また、若年層(10歳代後半以降)の目の下のクマ(くま)は、"脱脂法"も皮膚切開法のいずれでも解決出来ずに手をこまねいていました。

次に"脱脂法"の適応が限定されていた理由をここで説明いたします。"脱脂法"とは目の下の膨らみやたるみの直接的原因である下眼窩脂肪のみを抜去する方法です。比較的若年層症例では皮膚に十分な弾力性があるので、脂肪抜去のみを行っても、皮膚弾力性が抜去された脂肪による影響を相殺するため、図-1で示されたように治療後に皮膚が凸凹したり、新たなしわが発生することはほぼありません。

図-1

しかし中高年層(40歳代以降)以降では、皮膚弾力性がやや低下しているのみでなく、長年存在した下眼窩脂肪によるしわが形成されているケースもあり、"脱脂"のみを行うと皮膚の不整像やしわがかえって目立つ可能性があるのです。(図−2)そのため中高年層以降では、その当時"脱脂法"適応はないとされてきたのです。

私も開業以前は、先輩医師たちから上記説明を聞いてなるほどと思い、40歳代以降の目の下のたるみ症例には皮膚切開法を勧めていました。しかし皮膚切開法を勧たお客様の大半は、"皮膚切開をするくらいだったら、今のままで結構。"と治療を拒否する方々が後を絶たず、何とか皮膚切開法に変わる良い方法がないものかと、常にジレンマに陥っていました。

目の下のたるみ治療について詳しくはこちら

目の下のくま治療について詳しくはこちら

はじめに


当クリニックは2005年3月に開業し、2013年2月現在まで営業を続けて参りました。この約8年間、私は主に顔面の抗加齢(アンチエイジング)外科治療を専門に行ってきました。その中でも特筆すべきは、目の下のクマ(くま)、たるみ治療の症例数が群を抜いて多く、この8年間に7,000症例近くをすでに手がけたことです。


実は私が開業する以前、多くの方々が目の下の悩みを抱えていたにもかかわらず、当時皮膚切開法以外にこの問題を解決する方法がなかったため、こういった人たちは治療に踏み切れず手をこまねいていたのです。


そのため私が開業し、皮膚切開を用いずに目の裏側から治療を行う方法を提唱したところ、こういったお客様たちが大挙して私のクリニックにこの治療を求めてやってきたのです。勿論私は、美容外科医として体幹部などそれ以外の部位の治療も行います。


しかし当時の社会的ニーズ(需要)は、私に皮膚切開を用いない目の下のクマ(くま)、たるみ治療を求めました。その結果、私一人で短期間に集中してこれだけ多くの症例をこなすことになったのです。すなわち、私がこの治療のプロを目指したというよりむしろ、当時の社会的ニーズが私をこの治療のプロとして育て上げたと言っても過言ではありません。


医療は時代とともに進歩します。私の治療技術も多くの症例数をこなすにつれ、バージョン・アップ(進歩)し続けました。それから8年もの歳月が経過し、私はついにこの治療が完成した、つまり最高レベルの技術(バージョン・コンプリート)に達したことを確信しました。


後ほど記載しますが、この8年間、この治療が進歩してゆく中いくばくかの紆余曲折、困難な時期もありましたが、結論から申し上げますと私が開業当初から行っていた初期方針自体、根本的に正しかったと今に至って安堵しております。


そもそもこの目の下のクマ(くま)、たるみ改善のための治療は、私が突拍子もなく始めたのではありません。この治療は今から80年以上前、ヨーロッパを中心に始まった治療です。その詳細は私のこのブログを参照ください。


そして私の治療に一番近いプロトタイプ(原型)は、フランス・パリで開業していたフルニエ医師が今から50年前開発した方法なのです。この医師の卓越した技術は海を越え、米国に渡りました。


私は開業前から下眼瞼症状に悩む方々に、皮膚切開に変わる治療法を模索しておりました。それは当時、目の下の悩みを抱えるほとんどのお客様たちが下眼瞼皮膚切開法を恐れ、治療を躊躇する姿を目の当たりにしたからです。


そこで私は海外(ヨーロッパ、米国、韓国)に渡り、一流の美容外科医の手術見学をしながら、さらにその方法を模索し続けました。そしてある日、韓国・ソウルで米国人医師が行ったライブ・サージェリー(実況手術)の第一助手に抜擢され、眼前でこのフルニエ医師の手術法を目の当たりにしたのです!


私は固唾をのみながらこの手術の助手を務め、心の中で"これぞ自分が探し求めていたもの!"と閃き、胸を躍らせたことを昨日のことのように覚えています。早速日本に戻った私は、この方法の導入を試みました。


私がこの技術を習得しかけていたある日、当時勤務していた十仁病院渋谷分院に、目の下のたるみ治療を希望する一人のお客様がやってきました。そのお客様は治療を受けた直後から、1週間ほど旅行に出かけ、その間に回復することを期待していたのです。


無難に治療をこなし、彼女が1週間後に戻ってくると、目の下のたるみが改善されその結果に満足していただきました。当時私と一緒に十仁病院渋谷分院勤務していた看護師は、この治療の回復過程や結果を見て、次のように私にコメントしたのです。


"久保先生、この方法は素晴らしいですね。この方法を熟達して世間に広めたら、多くの人々が救われると思いますよ。"と。私はこのコメントを聞いた後、この方法をしっかり勉強しながら自分のクリニックを開業し、多くの人たちの悩みを救えたらと現実的に考え始めたのです。


これまでおおざっぱに私が目の下のクマ(くま)、たるみ治療を専門的に行うに至った背景を述べました。次回から、私が開業に至るまでの経歴をさらに述べ、この治療法がどのように成熟していったか、そしてこの治療を受ける方々が、事前に知っておくべき事項を述べてゆきたいと思います。


目の下のたるみ治療概要

目の下のくま治療概要

考察-2:

次に目の下のくま(クマ)、たるみ症状に伴う眼瞼下垂症の発生機序を検討する。これらの症例では下眼窩脂肪がFig-6に示される弛緩した眼窩隔壁から前方突出し、Fig-7の如く眼窩下縁と眼輪筋の間に嵌頓していた。嵌頓した下眼窩脂肪組織は眼球と連結しているため、眼球を前方に引き出す力学的作用をもたらす。この前方引き出し作用が、間接的に眼球を上転させるため、間接的に上眼瞼組織は後方に引き込まれて上眼瞼は陥没傾向となる。また眼球上転運動により、相対的に上眼瞼が下がり、眼瞼下垂症をもたらす(Fig-8)

Fig-6

Fig-7

Fig-8

目の下のくま(クマ)、たるみと、これらに併発した眼瞼下垂症状を解消するには適切な下眼瞼形成術を行う必要がある。特に、眼瞼下垂症状を引き起こす原因を解消するためのポイントを含めて解説するが、経結膜的下眼腱形成術はFig-9如く、眼窩隔壁前方アプローチより進入する。次に眼窩隔壁を内側から外側まで丁寧に露出させ、その全体像を正確に把握する。

Fig-9

この弛緩した眼窩隔壁の下方には黄色調の下眼窩脂肪が出現する。下眼窩脂肪の位置関係を正確に確認するには、その色調を確認することが肝心である。内側眼窩脂肪は白っぽく、中央眼窩脂肪は内側眼窩脂肪より黄色っぽい色調を伴うことから容易に確認される(Fig-10)。

Fig-10

さらに、中央眼窩脂肪の外側には外側眼窩脂肪が存在するが、この眼窩脂肪は下眼窩組織を横走するLockwood suspension ligamentにより眼窩深部に収納されてる。したがって、外側眼窩脂肪を眼窩隔壁面から肉眼で確認することは不可能である。

しかし、中高年層の中でも特に男性症例で、この外側眼窩脂肪が非常に発達し、特徴的な顔貌を呈している場合がある。こういった症例の特徴的な目の下のくま(クマ)、たるみ症状を解消するには、この外側眼窩脂肪を適切に除去することが不可欠であるため、下眼窩における部位同定が極めて重要になる。

銀座CUVOクリニックの目の下のたるみ治療

銀座CUVOクリニックの目の下のくま治療

考察-1:

従来まで眼窩美容・形成外科手術はFig-5の如く、上眼瞼症状と下眼瞼症状に応じて区別されていた。

Fig-5


上眼瞼症状

手術

一重瞼

重瞼術(埋没法、切開法)

内・外眼角襞

内・外眼角形成術

眼瞼下垂症

眼瞼挙筋前転術

上眼瞼の皺

除皺術

Buggy eyelids

脱脂術

上眼瞼陥没症

脂肪注入術

睫毛内反症

切開法による重瞼術



下眼瞼症状

手術

Buggy eyelids

脱脂術

下眼瞼の皺

除皺術

睫毛内反症

下眼瞼睫毛下切開反転法


また、その治療法も症状に応じて個別に対応することが一般的であった。老化性眼瞼下垂症を例に挙げると、その原因は加齢による眼瞼挙筋の弛緩や、上眼瞼皮膚弛緩が原因として、眼瞼挙筋前転、短縮術や上眼瞼除皺術を行って、症状改善を図ることが一般的であった。


だが目の下のくま(クマ)、たるみ症状に併発した眼瞼下垂症の検証から分かるように、その原因の一部は下眼瞼構造の不具合にあることが示された。もし眼瞼下垂症の原因の一部が下眼瞼構造にあるにもかかわらず、それを無視して挙筋前転、短縮術や上眼瞼除皺術のみで症状の改善を図っても、その効果は限定的となりかねない。


治療効果を得るため、挙筋前転、短縮術の程度を大きくしたり、上眼瞼除皺幅を過度に増大させると、いわゆる"驚いたような目つき(Startle Look)"となりかねない。したがって、眼瞼下垂症状が軽度であり下眼瞼症状を伴う症例では、眼瞼下垂症改善の上眼瞼手術よりも優先的に、下眼瞼構造の不具合を解消する下眼瞼形成術を行うべきである。


実際、当クリニックではこの方針に基づいて治療を行った結果、下眼瞼症状のみならず、軽度眼瞼下垂症状が改善した。また過剰眼窩脂肪は、加齢に伴う眼窩脂肪の前方突出により眼瞼下垂症の誘発要因となりかねない。そこで眼瞼下垂症状が悪化する前に、予防的に下眼腱形成術を行う価値が高い。


目の下のくま治療について

目の下のたるみ治療について