GINZA CUVO

2011年12月アーカイブ

我々は老眼の発症をもって、老いを感じざる得なくなことが一般的である。老化現象として視力が衰えると同様に、外見上の老化も眼周囲に初発することが一般的である。東洋人の場合、寒さから眼球を保護するために、眼周囲に厚い脂肪組織が覆っていると報告されている(1)。眼周囲脂肪は加齢とともに、その容量や位置(ポジショニング)が変化するため、この現象により若年時代とは違った外見上の変化、すなわち老いの兆候が目元に出現し始める。

眼窩周囲脂肪は上眼瞼脂肪と下眼瞼脂肪から構成される。上眼瞼脂肪は加齢ともに縮小すると言われるが、下眼瞼脂肪は必ずしも加齢とともに萎縮せず、むしろ膨張する場合が多い。下眼瞼脂肪の膨隆は、いかにも下眼瞼皮膚が下垂したかの如く、典型的な外見上の老化兆候として認識され、この症状はいわゆる"目の下のたるみ"として客観的にも明らかとなる。

これらの原因は、高密度組織である眼球組織の荷重と、下眼瞼支持組織であるLockwood suspension ligament や下眼瞼皮膚、眼輪筋、眼窩隔膜等の加齢に伴う弛緩が原因とされる(2)。すなわちこれらの複合的要因により、下眼瞼脂肪がヘルニア状態となり、下眼瞼皮膚前部方向に逸脱することで目の下のたるみを形成し、この状態が不可逆的となる。

さらに東洋人の場合、下眼瞼組織構造の不具合によって、下眼瞼皮膚色素や影を強調させる、いわゆる"目の下のクマ(くま)"症状が発症することがある。目の下のクマ(くま)は必ずしも加齢に伴う下眼瞼脂肪の前方突出がその直接原因ではないため、比較的若年層から発症することが少なくない。この症状はLockwood suspension ligament 等の下眼瞼支持組織が皮膚を下垂位に固着させていることがその主な原因であるため、これらの支持組織を解離し、皮膚を挙上させることで、目の下のクマ(くま)症状を大幅に解消することが可能である。

当クリニックにおいて2007年4月1日から2008年3月31日までの1年間に、目の下のクマ(くま)、たるみに対して行った1044名(女性936名、男性108名、平均年齢、41.2歳、範囲19−75歳、標準偏差9.88) の下眼瞼形成術について、統計的分析を用いた上で、その治療成績を検証する。

key word: 下眼瞼脂肪 目の下のたるみ 目の下のクマ(くま)Lockwood suspension ligament 眼窩隔膜 elective surgery

はじめに:

外傷や疾病治療、疼痛緩和、そして救急処置を目的に行う一般医療の場合、時としてその治療は一刻を争うものであり、救命最優先にして必要な処置を選択せねばならない。例えば急性発症心筋梗塞にて手術しか救命の方法がない場合、直ちに開胸手技を行わねばならず、手術後に大きく残存する傷跡について論議する余地はない。だが美容外科治療は、こういった救命最優先とする一般医療と異なり、いわゆる"elective surgery(随意意志による手術)であるため、安全、確実、早期回復が保証されるなければならない。

従来、わが国における目の下のクマ(くま)、たるみ手術は、下眼瞼眉毛直下皮膚切開を用いて行うことが一般的であった。その理由は、これの症状の責任が下眼瞼脂肪や下眼瞼構造の不具合よりも、むしろ皮膚自体にあると認識されてきたからである。また下眼瞼形成術を行う際、皮膚切開アプローチの方が結膜面アプローチよりも手技的に容易なことも、皮膚切開プローチが従来まで主流であったもう一つの要因でもある(3,4,5)。

だが臨床の場で、目の下のクマ(くま)、たるみ治療を希望する患者に下眼瞼皮膚切開法を勧めても、大半の人が傷跡などの後遺症発生の可能性を危惧し、治療をためらうことが少なくない。その理由は先述の如く美容外科手術は救命を伴わない、いわゆる"elective surgery(随意意志による手術)であるため、患者たちは後遺症の発症する可能性のある手技を本能的に回避するからであろう。

当クリニックでは、原則的にすべての下眼瞼形成術に結膜面からのアプローチを行い、ほぼ良好な結果を得ることに成功した。またこの手法が認知されるにつれ、治療を求める顧客はFig-1の如く全国から当クリニックに訪れるようになった。

この事実は、当クリニックの皮膚切開法を用いない治療が普及するまで、下眼瞼皮膚切開法のみしか目の下の(クマ)、たるみを改善する手段がなく、治療をためらっていた患者さんたちがいかに多数いたかを示すことになった。以下にこの手法の結果について統計学的手法を含めた分析を行い、その有効性を示す。

Fig-1

論文fig-1

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Q:皮膚を切らない目の下のクマ(くま)、たるみ治療(経結膜的下眼瞼形成術)を行うと、目の下にしわが出来るので、皮膚切開をすべきとか、下眼瞼に脂肪注入を行ったほうが良いと他院で言われたのですが、それは本当ですか?

A:他院でのその意見は必ずしも正しくありません。

当クリニックでは過去7年間で6500例近くの下眼瞼形成術を行いましたが、皮膚切開法を用いたり、脂肪注入した例は、その中の1%以下に過ぎません。 クリニックによって、皮膚を切らない目の下のクマ(くま)、たるみ治療に、必ず脂肪注入や脂肪移動をさせたりするようですが、そういった処置が必要な症例はまれですから、必ずしも同時に行う必要はありません。 そういった処置は万が一必要な場合のみに、治療からの完全な回復を待った上で、行うべきでしょう。すなわち、少なくとも治療後6ヶ月程度経過した上で、そのような処置が必要か判断すべきであり、早急な追加治療は避けるべきです。 何故なら、人体には再生能力があり、下眼瞼皮下組織に行ったレーザー治療の治癒再生反応は皮下深部から始まり、時間経過とともに皮膚浅層へと伝播してゆきます。 この再生反応は治療後10ヶ月程度継続し、最終的に表皮再生までなされます。従って、その最終結果が得られた上で、必要な場合のみ次のステップを検討するのが賢明です。 下写真で、その再生過程を検証します。 61歳男性の典型的な目の下のたるみ症例です。 (治療前) IMG_8583 下写真は治療1ヶ月後の状態ですが、この時点では目の下に小じわ等が認められます。 (治療1ヶ月後) IMG_8864 治療約10ヶ月後の写真ですが、下眼瞼の処置は何をしなくとも、自然治癒(再生)過程で、治療1ヶ月後に存在した小じわ等が解消されていることがわかります。 (治療10ヶ月後) IMG_2560 上記症例の最終結果を見ると、完璧な結果とは言えません。さらなる改善を求めるとすれば、ヒアルロン酸や脂肪注入などを行うと良いかもしれません。しかし、本人はこれ以上の改善を必ずしも要求しておらず、年相応の結果が得られたことに十分満足しています。 IMG_2557 この男性の場合、治療前は目の下のたるみが他の顔面部位よりもきわだって老化を感じさせていましたが、この症状を解消することにより、顔全体が平均化しました。したがって、これ以上目の下の状態を改善する優先順位が低くなりました。 今後、さらなる顔全体のアンチエイジング(若返り)を望むのであれば、下眼瞼よりも額のしわや頬のしみ、頬のたるみ改善の方がその効果は高いでしょう。 次は38歳女性の症例です。 (治療前) IMG_9750 治療1ヶ月後、目の下のクマ(くま)(クマ)は改善していますが、しわは依然、残存しています。 (治療1ヶ月後) IMG_0891 治療3ヶ月後、自然治癒(再生)過程で、何の処置をしなくともしわ等は消失しています。 (治療3ヶ月後) IMG_1492 この症例をよく観察すると、治療後目の下のクマ(くま)、たるみがのみではなく、上眼瞼のくぼみや目の開きも改善されたことがわかります。下眼瞼は眼瞼全体の土台となるので、この部位の不具合を解消すると、眼周囲のバランスが適切となり、美容的価値のみならず、眼瞼下垂症の予防など機能的効果が得られます。

目の下のたるみ治療について
目の下のくま治療について