GINZA CUVO

2010年2月アーカイブ

終了時パーティー

実習が無事終了後バスで大連市内に戻ると、秋が深まりつつあるこの時期、夕刻6時頃、すでに辺りは真っ暗となっていた。ホテルに戻るとすぐに食事会場に向かった。短期集中型のセミナーの後、皆一斉に緊張感から解放されたのか、会場はとても賑やかな雰囲気となった。講師陣が今回のセミナーについての感想を述べた後、皆で祝杯を交わした。美味しい中華料理をいただきながら、参加した医師たちと親睦を深めた。 普段は競争相手となりがちな美容外科医だが、ひとたび国境を越えると 一緒にセミナーを経験した仲間たちのことは同士と思えた。 言葉は通じなくても 心は十分に通じ合えた気がする。隣国医師たちとこのような交流を保ちながら、仲良くしてゆくことが、アジア全体の美容医療分野の発展にもっと重要であるとも感じた。このような機会があるときは再会する約束を港交わした

後、セミナーは成功とともに終了した。

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おわりに

中国や韓国ではちょくちょく行われている解剖学実習セミナーだが、私が美容外科に従事してから、日本独自でこのような企画されたことは私の知る範囲で覚えがない。外科として向上するにはどのような姿勢が必要なのだろうか。例えば新しい治療手技を習得しようとする場合、真っ先に行うべき事はその手技を何らかの形で見学することであろう。次に、その手技のイメージが湧き、シュミレーションを行えるようになれば、自分でその手技を行うべきであろう。しかし、慣れない手技に対しては慎重にならざるを得ず、結果は良くて控えめで、必ずしも満足の行くものではないだろう。その結果を満足のゆくレベルまで向上させるには文献や教科書を読み、次の手術の機会にこれらの欠点を改善してゆくというのが技術向上への王道であろう。だが、その向上過程を画期的に早めるのが、今回のような献体を用いた解剖実習で、生体では決して挑戦できない大胆な剥離や展開を行い、どこまでが安全で、どこから先が危険であるかをしっかりと知ることと感じた。このような経験から得た確固たる自信をよりどころに実症例をこなしてゆくことで、外科医として飛躍的な向上がもたらされるであろう。

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解剖学実習の実際

翌日、宿泊先ホテルからセミナーに参加する医師たちと一緒に、バスでセミナーの行われるホッフェン社に向かった。1時間ほど走ると旅順に着き、海を見渡す丘陵地が見えてきたが、その丘陵地こそが日露戦争で有名な203高地であった。会場に着いてしばらくすると、すぐに私の名前が担当者から呼ばれた。顔面領域の解剖視野は大変に狭く、その様子を詳細に観察するには第一助手として手術に参加するしかない。だが、今回のように100名近くの受講者がいる場合、直接解剖を観察することは不可能なので、術者の手技をビデオカメラで撮影し、その様子を大画面上で実況中継するのが一般的である。こういった講演方法をライブサージェリーと言うが、今回は解剖献体を用いてライブサージェリー方式で講演を行うことになっていた。私には上下眼瞼の解剖のライブサージェリーが割り当てられていた。

こういった経験をあまりしたことのない私は、中国人医師たちに先にライブサージェリーを行っていただき、その要領を真似して行うつもりでいた。しかし、昨日と同様、海外招待医師の私が一番最初に行う予定となっていた。 与えられた情報は、"持ち時間30分、臨床に役立つ解剖を実技で示すこと"のみであった。中国側サイドが私たち海外医師に敬意を表していただくのは大変ありがたかったが、要領の全くわからない私は、一瞬たじろいだ。

プレゼンテーションは受講者のいる大講堂の隣の小部屋で行われた。小部屋のドアを閉めると、隣室で大勢の受講者を意識せず、私は落ち着きを取り戻した。私の頭上には一台のビデオカメラがまわっているが、それ以外は静寂そのもので、いつもの手術と同様に集中力を高めて解剖に望むことが出来た。いくらフレッシュカデバーといえども、普段の治療症例に比べると、弾力性に乏しく、その解剖学的位置関係を同定するのはやや困難であったものの、丁寧に剥離操作を加えることで、ほぼすべての組織を判別することが可能であった。

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だが、ここで昨日と同様、大きな障壁となったのが言葉の問題であった。ライブサージェリーでは解剖手技を行うと同時に、受講者に解説をする必要がある。手技を行いながら、自分のペースで解説を出来れば問題なかったのだが、手技中に私が述べたことを、隣にいる通訳者が通訳を行うが、そのタイミングを合わせるのは昨日の講義以上に困難であった。外科医であれば誰でも理解していただけるはずだが、一度執刀開始となった後に、周囲からの干渉で手技を寸断されると、調子が狂い始めかねない。手術はリズムや流れが非常に大切で、術者が気持ちよく円滑に治療を行えることが、手術結果の如何に大きく関わるのだ。したがって、このようなライブサージェリーの際は、言葉の壁がある場合でも手術の流れが損なわれないよう、逐次通訳ではなく、少なくとも同時通訳でお願いしたいものである。

このような障壁をなんとか乗り越え、私は30分の持ち時間内に臨床美容外科に必要な上下眼瞼の解剖手技を終えた。私の後は中国教授陣たちがフェイスリフトに必要な解剖、鼻部の解剖、上眼瞼の解剖等を次々とこなしていった。自分の発表を終えた私は、彼らの解剖手技を目の前で観察させていただき、大変参考になった。時折、大講堂の様子をうかがいに行ってみたが、昨日の講義以上に皆真剣な面持ちで大画面上の解剖手技に集中していた。

昼食後は医学生さながらの顔面解剖実習の開始となった。4〜6人が各々のグループとなり、昨日、今日と講師陣が与えたアドバイスを参考に一斉に解剖を開始した。個人的に私は、これまで比較的症例の少ない鼻部の解剖に興味があったので、早速日本人グループに与えられた献体で鼻の解体を始めた。鼻部はご存じの通り、鼻骨下部では軟骨組織が複雑に重なりあっているため、美容的に治療を行う際には、その構造に熟知していなければならない。特に東洋人の場合、この軟骨組織の発達が悪いので、実際の手術中に容易にその構造を判別できるとは限らないので、こういう機会に3次元的イメージを構築しておく必要があるのだ。また低侵襲治療を望む日本人患者の場合、鼻部治療は鼻部内側粘膜から進入するクローズ法を望む場合がほとんどで、鼻部の皮膚を外側から切開して進入するオープン法を用いることはあまり多くない。しかし、軟骨組織を判別しつつ、確実な治療を行うにはオープン法が明らかに有利であるから、私はこの献体を用いてオープン法を行い、成果を得た。

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さらに、私の友人である米国人のpasquale医師に、上下眼瞼切開法と同時に行う中顔面リフト法を献体を用いてデモンストレーションしていただいた。この手法はSOOF(Sub-Orbicularis Oculi Fat )と呼ばれる眼輪筋下部脂肪組織にかけた太めの非吸収糸を、この糸を外眼角靱帯(lateral canthal tendon)の下をくぐらせた後眼窩上縁外側部に打ち込んだチタンスクリューに引っかけ、中顔面を引き上げるという日本では一般的でない方法によるものだった。また、広頚筋弛緩による筋肉の膨隆(muscle band)に対する広頚筋縫縮術もついでにデモンストレーションしていただいた。西洋人に比較的起こりやすいと言われる広頚筋の膨隆症状だが、日本での症例数はさほど多くない。頤部下に3cmほどの横切開を加え、両広頚筋を前後面で剥離し、広頚筋内側部の縫縮までの展開に要した時間はものの五分、さすがこのような症例が多い米国でたくさんの手技をこなしていることを証明する見事な手さばきであった。他の100名ほどの医師たちも同様、普段の臨床事例での疑問点を解決しようと、午後いっぱい、くたくたになるまで解剖を行った。


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